R.
「LってなんでLなの」「……なんですか」
データを映し出すモニタから視線を外さず、Lは隣の松田に一応聞き返す。
彼は根から平凡で、平和で、浅い男だということは初日から分かっているので話に付き合うだけ無駄かもしれない。けれど彼は意外な所で意外な展開や結果をもたらすことも多く、無視できるほどLの想像の範疇に居る人物でもなかった。
「左って意味?」
「……Rは松田さんですね」
ちょうど右隣に居た松田をちらりと見ると、眉を顰めてから笑った。
「Lの右腕みたい、俺では役不足かな」
「そうですね……松田さんはしいていうなら小指の爪くらいです」
「酷い。歯の隙間に詰まった食べ物をひっかくくらいの役割……」
「そう考えると小指の爪って大事ですね」
「嬉しい」
そういえば松田は三日程徹夜をしていた気がする。
Lはそのことを思い出したが、かといって松田が徹夜続きで頭がおかしくなっているとは思わず、健常な時でも彼はこういう風に返しくるのだろうと思った。
「そもそもライトくんがいた」
「ライトくんもLですし、私の右腕はワタリです」
「そういえば」
ところでLは左と言う意味ではないと言いそびれているのだが、どうせ松田も本気で信じているわけではないだろうから言わなくても良いか口を噤んだ。
外出した際、雨に降られてしまった2人はどうするか
「あ、雨」外にいたLは、松田の言葉に空を見上げる。
その時丁度、頬に雨粒がぽとりと落ちた。
「傘持ってないやー俺」
「私もです」
「知ってる……」
Lは何も持たずに外出しているので、松田は呆れた顔をした。
そして彼はLの腕を引いて屋根のある方へ足早に進む。
雨は次第に強くなり、雨音があたりを包み込んだ。
「すぐ止むかな」
「どうでしょう」
軒下で身体についた雨粒を払い落としながら、困った顔で空を見ていた松田は、急にLの方を向いて肩や腕を叩く。他人の服の繊維に微かについた雫まで払ってくれるようだ。
じっと観察していると、髪の毛についた雫がキラキラと輝いていた。
「傘買ってきます?」
「濡れたくないです」
「俺が買って来るってば」
そこで待っててと言われて、Lは雨の中消えていく彼の背中にお願いしますと声を掛けた。
しばらくして、松田は透明のビニル傘を一本だけさして戻って来た。
「……なんで一本だけなんですか」
「ああ、一旦車戻ってそこ停めて来たんですぐだし、一本でいいかなって」
「……」
Lは黙って松田の傘の中に入る。
彼のスーツはすでにそこそこ濡れていたので、傘を自分の方に傾けられてもいまさら罪悪感等わかなかった。
車のドアを開けて、Lが車に乗り込むまで傘を傾けていた彼はやがて運転席に乗り込み車を発進させた。
後部座席から、松田の濡れた髪の毛にぶら下がる雫が肩に落ちるのを見た。
すでにそこは濡れていたので痕はできなかった。
彼は時々、驚くほど人に優しい。
世界を分かつ溝
Lは痛みと苦しさに溺れながら、醜い男の顔を眺めた。心臓が止まり、脳が、身体が、命が、機能を停止させて行くのを理解する。夜神ライトはキラだった。そんなことを思いながら今にも死んでいくところだ。
もう何も感じない。
けれど手が伸びて来た。己の注意を引くように指の腹が顔を撫でる。薄暗い視界は、かろうじて腕の主をとらえる。
え、る、と唇が動いたように見えた。
音は聞こえないが、容易く、脳が彼の声を作る。もうほとんど機能していない頭だから、脳ではなく魂がそう感じているのかもしれない。
本当に一瞬のことだった。
Lは、松田の声を聞いた。
松田の指の温もりを感じた。
自分の身体を支える男でも、勝利を確信する顔でも、悔恨でもなく、ただ彼が自分の事を呼んだ───それが最期だった。
end.
誕生日全然関係ないけど、Lと松田の小話。
Rは主人公のデフォルト名にもかけてますが、名前変換してる人は気にしないでください。してない人はRayとLightにBLみを感じてくれても良いかなって思います。FBIはRayeです、大丈夫。
Lと主人公の外出は大学に行く一回しか書いてないんですが、それ以外にもあったと言う事でお願いします。
さいご、何も感じないと言いながらしっかり松田を感じていく。夢小説だから。
これ意外と全部BLじゃないか??と私は思っている。
Oct. 2016