EndlessSeventeen


かみさまおねがい (リドル視点)

「今日は七月七日だよね」と僕に聞いた は「じゃあ七夕の日だ」と教えてくれた。

「たな、ばた?」
「そう、たなばた」

聞き慣れない言葉に首をかしげると、 は「お星様のお話だよ」と言って僕の髪の毛を梳くと七夕の話をしてくれる。
目を細めて の話しに耳を傾けた。
ゆっくり、優しくしゃべる の声が寂しげで、話の内容も少しさみしかった。


「一年に、一度だけ?」

二人でベッドに寝転がって、星座の本を眺めていて、僕は を見上げた。

「うん、一年に一度だけしか会えない」



さみしそうな眸が、頷いた。
悲しい。
もし僕が一年に一度しか会えないなら、もう明日は がいないということだ。
そしたらまた一年またなくちゃいけないなんて、嫌だ。





「俺は、一年だけ……」

「え?」

開いた窓の外を見上げて呟いた の言葉を聞き返すと、なんでもないと笑う。




「君は一年だけ一緒に居られるのと一年に一度会えるの……どちらがいい?」

むくり、と体を起こして、 は壁にもたれかかった。
見おろす眸はよどみ何も映していない。その眸の目の前には僕がいるというのに、どこも見ていない。
の投げ出された細くて白い手を恐る恐る握って、 に顔を近づける。

眸に僕の姿を映し出されて、ほっと安心した。





「どっちも嫌だ…… とずっといる」


の胸に頭を擦りよせ、存在を確かめるように触る。あったかくて少し堅くて、良いにおいがする。 は確かに僕の目の前に居る。吐息も心音も聞こえる。





「そうだね……変なこと、聞いたな」





の頬が僕の頬にすりよせられる。滑らかで柔らかい。



僕が の頬にキスをすると、一瞬吃驚して、ふっと笑みを浮かべた。




何故 があんなことを聞いたのかわからなかった。




けれど、 の十八歳の が何処にもいないとわかったとき、その質問の意味をほんの少しだけ理解した。

はあの時、願を紙に書いて竹につるすと叶えてくれる、と教えてくれた。
七夕の季節になると、あの頃の僕が星に願った言葉を思い出す。
(神様お願い、ずっと傍にいさせてください)

2010-07-07