EndlessSeventeen


so happy(リドル視点)

僕と は今日ホグズミート村に来ていた。
クリスマス休暇中なので生徒の姿はなく、ホグズミート村の住人達や一般客の姿がちらほらと見える程度。凍えそうな寒空のしたで白いと息を吐き出しながら と2人で歩いていた。

今日は僕の誕生日だからと が先生に許可を取って連れ出してくれたのだ。
折角の誕生日なのだから、部屋にこもっていないで遊びに行こう、と。

「寒いね」
「うん」

寒いねと呟いた は鼻の頭を少しだけ赤くして微笑んだ。僕にとってはその微笑みは春なんだけど、外の気温は如何せん真冬でぶるりと震える。
コートやマフラーをしていても、身が縮こまるような寒さだ。

「どこか店に入ろう。それで行くところを決めよう」
「そうだね」

近くのカフェに入り、僕たちはやっとぐるぐる巻きにしていたマフラーも重たいコートも脱いで身軽になった。ほっと息を吐いて指先を暖めて、温かい飲み物を 注文した。

そういえば、 が厚着しているのを見るのは初めてだ。
彼は滅多に外に出ないからいつも薄着で出歩いていて、少し外にでるとしても、あまり上着を着ない。
黒いコートとネイビーブルーの手袋と白いマフラーをぼんやりと見つめていると、 は僕の名前を呼んで首を傾げていた。

「どうしたの、じっと見つめて」

何かおかしなことでもあったのかと眉をひそめる に、僕は素直に思っていることを伝えた。

「厚着してるの、初めてみたなって」
「まあ、外には滅多に出ないからね」
「ちょっと出るときでさえコートなんて着ないじゃない」
「重いのは嫌い」

さらりと零れてきた髪の毛を耳に引っ掛けて、 は僕の向こうを見つめてくすりと笑った。その時に丁度飲み物が運ばれてきて、この話は終わった。

重いのは嫌い。その言葉が少しだけ胸に引っかかった。どこまでも自由で何にもとらわれることの無い は、きっと枷が嫌いなのだ。動きづらくて、面倒くさくて、手間がかかるから。
僕はきっと彼の枷の一部だ。
もしかしたら枷にすら慣れていないかもしれないんだけど、と複雑な思いを抱いた。邪魔にはなりたくないけど、なんとも思われないのだとしたらそれはとても 悲しいことだ。


それから僕たちは少しだけ店を回って歩いた。悪戯専門店や、魔法道具専門店、書店や雑貨屋などを見てまわる。何も買わなかったけど、 がとなりで一緒に見てくれているのがとても嬉しくて、楽しかった。

「何か買ってあげるのに」
「ううん、この間クリスマスプレゼントまでもらったんだもの、いいんだ」
「クリスマスプレゼントはお互いにあげあったじゃない」

からはピアスをもらって僕は毎日つけている。今日も耳に の眸を同じ色した宝石がきらりと光っていた。今まで生きていた中で最高のクリスマスプレゼント。ちなみに僕がクリスマスに にプレゼントしたのは懐中時計で、よく転寝をして放っとけば何時間でも眠り続ける を起こすものだ。
食事の時間や、気温、 の具合などを考慮して起こしてくれる。

「2つもらって1つしかあげてないんだから、何かあげたいのに」
「でも、僕はあまり欲しいものは無いんだ」

それに、 にはいつも幸せな時間をもらっている。

君がいれば、僕は毎日が神様からのプレゼントだ。

しいて、言うならこの時間が欲しい。 が傍にいるこの時間を閉じ込めて永遠にループさせたい。
ぴたりと足を止めた僕に気付いて も足を止めた。学校に帰るこの道が、長く長くなればいいのに。



正面から抱きつくようにしな垂れかかる。 のコートに額をとんと乗せて、白い吐息をゆっくりと吐き出した。コートの中に手を入れて を抱きしめると、 は両手をポケットに入れたままコートで包み込むように僕を抱きしめ返した。

「冷えちゃうよ?」
「あったかい」
「そりゃ、コートの中だもんね」

頭の上の唇がもそもそと動いて、温かい吐息が地肌を這った。
ぴったりと密着して、 の温かさを少しだけもらう。

「このまま、ずっといられたらいいのに・・・」

小さく小さく呟いた僕の一番の願い。 は何も言わない。

「あ、雪だ」
「?」

顔だけ上げると、 も上を向いていた。
空は灰色で、白くて冷たい雪がふわりふわりと降って来た。きれい、そう思って と空を見上げていたらふいに がこっちを向いた。

「ずっと、いられたらいいのにね」

がそう呟いて、僕の米神にちゅっとキスを落とした。


一瞬だけ見えた表情は、優しさの中に寂しそうな悲しそうなビターなものがほんのちょっとだけ混じった綺麗な笑顔だった。
唇が離れた後は体も離れて、僕たちは雪で凍えないよう足早にホグワーツへ帰った。

君が居て、僕が居て、世界があって。

僕は今、幸せです。

2011-12-31