harujion

ハルジオン

01 もう一度、笑ってみてよ

 また、と別れて戦地へむかったはずだった。
 いつも三人で行動するが、さすがに固まっているわけにはいかなくて。フレッドとには背を向けた。そして戦う事にいそしんだ。事態が少しばかり落ちついた時、ふと顧みると荒れ果てた学校が目に入る。家族や顔見知りの姿はなくて、急激に不安になった。
 戦っていると、自分の命すら忘れかける。もちろん、反射的に防御はするのだが、目の前の敵を倒さなければならないという意志が勝るのだ。そしてようやく現実に戻って来た時には家族や友人の身の安全を考えて心臓が逸り、今更傷が痛み始めた。

「お———……い、」
 多くの遺体が寝転ぶ広間を足早に歩く。
 薄暗い所だったが、赤毛の集団を見つけて、ほっとした。しかし瞬時に、彼ら家族が誰かを囲っていることを理解した。
 ここは、多くの『遺体』が横たえられている。
「嘘だろ……」
 項垂れるフレッドの後ろから、横たわるを見て立ち尽くした。
 ぱきり、と何かが折れる音がした。誰にも聞こえていないだろう、誰にも見えていないだろう、 ジョージだけが感じたこころが欠ける音だ。もしかしたらフレッドも感じていたかもしれないが、きっとそれはの死を知った時に聞いている筈だ。
 傷口はひりひりと熱を持っていたし、煙を吸ったり、疲れていたから頭がずきずきと痛む。走り回っていたから心臓だっておかしな動きをしていた。
(……いたい……)
 胸が締め付けられて恐ろしい程に痛む。
 ドクン、と飛び出してしまいそうなくらい一度だけ動いた心臓は耳鳴りがするくらい荒々しく胸の中で暴れていた。
 シャツをぎゅっと掴んで胸に力を込めてもそれが落ち着く事はなく、ジョージはフレッドの隣に膝をつく。崩れ落ちるのとも似ていた。
 そろりとに触れてみたが、まだ生きているみたいに柔らかい。傷まみれの顔だったけれど、致命傷は見当たらない。多分、魔法で死んだのだろう。
 涙が出るまでに、時間がかかった。
 それほど、信じられなかったし、頭が混乱していた。
 起きるんじゃないか、これは夢なんじゃないか、むしろ自分が死んでいるんじゃないか。全て違うと理解してからまた頭を働かせて、何度も何度も、自分を傷つけるようにの死を頭の中で連呼した。そうじゃないと、自分が死んでしまう気がした。
が…しんだ……」
 嗚咽よりも先に、現実を言葉にして零した。それから涙が零れての手の傍に落ちたけれど、涙に気づいて彼が目を覚ますなんてことはなくて、ジョージは気づいてもらえるよう、今度は手の上に落とす。
「おい、……
 はやっぱり気づかない。
 ゆるゆると手を動かしての手に零れた涙を馴染ませても、薄い肉と骨の感触があるだけで力が入ることはない。
……」
 顔を覗き込みながら、もう一度呼びかけた。
 また、と別れる前に珍しく触れてくれた唇は端が切れていて、かさついている。
 あの時そっと笑った顔は、うっすらと瞳を開けたまま固まっていた。
 もう彼は笑わない。




03 もう一度、歩いてみよう

 フレッドを庇おうと前に出たを、フレッドが鷲掴み、後ろに倒した。二人して地面に転び、他の攻撃が当たった壁から瓦礫が降ってきたが傍に居たパーシーが二人に覆い被さってくれた為に、大した傷はつかなかった。
「馬鹿!何やってるんだよ!!」
「あ、」
「後にしろフレッド!二人とも、立てるか!?」
 きょとんとしたは、一番遠くに居たハリーと目が合った。
「大丈夫!?」
「うん」
 パーシーとフレッドが顔を覗き込んでる向こうで、ハリーはがなんとか返事をしたのを見てまた臨戦体勢をとった。

 ヴォルデモートが失脚する様を、ぼんやりと見守ったは功労者のハリーを囲む食卓でもそうだった。フレッドとジョージにしこたま怒られたときも、ジニーに泣かれたときも、遠い目をしていた。
、ちょっと良いかい」
「———うん」
 そんな終始ぼんやりしていたに声を掛けたのはハリーだった。
 家族はそんなハリーを見て、何の用があるのかわからなかった。ハリーはいまのいままで、と仲良くしている様子はなかったのだ。もちろん、仲が悪いわけではないのだが。
 元々静かだったが、異常な程無気力になっているを、ハリーが戻せるとは思えない。けれど、は目と目を合わせて頷いた。
 フレッドとジョージはその様子を見て目を丸めたし、ロンはヨーグルトを食べている所でスプーンを落とし、ジニーはその音でを凝視していた目をそちらに向けた。

 フレッドとジョージの間から抜けて立ち上がったは、ゆっくりとハリーに歩み寄り一緒にリビングを出る。
「見たよ、記憶」
 庭に出て小さな声でハリーが言うと、はぎこちなく息を吐いて、言葉をつむぐ。
「身勝手だったろう」
「まあ……知ってたならもっと、教えてほしい事もあった。でも、の為に動いても良い筈だから」
「俺は俺のために動いてなんかいなかったよ」
「フレッドのため?」
「フレッドと、ジョージの為———と言いたい所だけど、多分そうじゃない」
 は瞳を細めてハリーを見た。
「どうしたらいいか、わからなかったんだ」
「———うん」
「俺にとっては物語で、でも現実だった」
 ハリーはゆっくりと零れて来る耳触りの良い声を聞く。
「庇うのは、結局、考えなしでも出来るんだ」
「そうかな」
「俺は最後まで、迷ってたよ。でも勝手に身体が動いた、それで満足だった。でも、———生き残ってしまった」
「良いことじゃないの?」
「わからない、それも」
 掌を緩く開いて覗き込む。そこに何かがあるのかとハリーは覗き込むが、何もない。
「僕もよくわからないけど———は喜ぶべきだ」
 ハリーの言葉に、は顔を上げる。
 眼鏡の奥で、緑色の瞳は微笑んだ。
「フレッドもジョージもも生きてるんだから、幸福じゃない?」
「—————そっかぁ」
 柔らかく笑ったはそのままぼろぼろと涙を零し始める。
 大人びた青年は、子供みたいな顔をしていた。


03 もう一度、探して

 ビルには沢山の弟が居た。そのうちで一番手のかかる子供はやっぱり末の弟なのだが、その末の弟を最も困らせる双子も厄介である。
 フレッドとジョージは双子ならではの息のあったコンビネーションで様々な悪戯をする。騒ぎを起こす。事態を悪化させる。多分、母に怒られる回数が一番多いのは二人だろう。ただし変に賢いので説教を免れる事も多い。
 主にロンを生け贄にして母がそっちに手をかけている隙に逃げてしまうのだ。その度に、仕方なくビルが二人を捕まえる。
 うげ、と言いながら顔を歪めるそろいの顔を見て、ビルは説教をするためにわざと笑った。

 息が合うだけじゃない双子には共通する相棒が一人居た。初めてその存在を知ったのはいつだったか、夕食がグラタンの時だった。
 今まで何度も食卓に出ていたのだが、二人は目を輝かせて、顔を見合わせる。
「大好物だ!」
 そろいの声で言って、拳を合わせた。
「あら、あなたたちローストビーフとヨークシャー・プディングより好きなものが出来たの?」
「いいや?俺達の好物じゃない」
「彼のさ」
「彼?新しい友達が出来たのか?なんて名前なんだい」
 母に続いて父が問う。兄弟達も最初は普通にきいていた。二人がまた声を揃えて名前は知らない、会った事もない、と言い出すまでは。
「なにそれ」
 ジニーは双子の意味深な発言に、顔を歪めた。ふざけている、もしくはからかわれている、と思っているのかもしれない。
 逆にパーシーはまったく取り合う気も起きないようで、静かに食事を続けていた。
「友達じゃなくて、兄弟なんだよあいつは」
「俺達の間にいるんだ」
「いないじゃん」
 ロンが思い切り首を傾げた。
 それから話を聞いてみると、夢の中で、彼らの間にはもう一人居てそれが双子の相棒らしい。双子、というよりも、三つ子なのだそうだ。
 両親とビルを始めとする上の兄たちは子供の空想と受け止めたし、弟妹たちは戯言と片付ける。
 しかし日常生活のほんの些細なところで、彼の話は出てくるようになった。
 たとえば学校の宿題が大変で、二人で分けあってやっている時。……ほんとうは一人で全部やるべきなのだが、ビルは一度咎めるだけだった。
「ああ!三人ならもっと負担が減るのに」
「いいや、あいつはきっと手伝ってくれないぞ」
「たしかにな、一人でやるだけでも気が遠くなるのに、意味が分からない」
「変な所真面目で厳しいんだよな」
 共通する部屋で笑いながらする話をビルは聞いていた。
「なあ、その彼はどんなヤツなんだ?」
 ビルは興味を持って、宿題中の双子に声をかける。めんどうくさがり、時々優しい、昼寝が好き、よく本を読む、と口々に出て来る空想の『弟』の情報を頭に入れた。
「あいつはビルの長い髪の毛が結構好きだった」
「俺?長いかな」
「前は長かったんだよ」
 前、というのがよくわからないがビルは自分の後頭部を撫でる。
 長髪のスタイルに偏見はないし、むしろ良いなとも思うがビルはまだそうしようとは思えないでいた。
「あと寝る前に騒いでると、パースのベッドに潜り込むんだ。あっちは静かだから、朝まで帰って来ない」
「俺達が迎えに行くとパースに怒られるんだよなあ」
「へえ」
 パーシーが一緒に寝てやるのか、とビルは少し驚きながら考える。
 どうやら双子の空想では、ビルもパーシーも今より歳が上のようだ。しかし、その歳になっても『弟』と寝てやるパーシーは少し意外だった。
 宿題をする手をとめて、『三つ子』が学校では悪戯仕掛人をやっていることや魔法使いの一家であるというまさに夢のような話を、ビルは楽しく聞いていた。

 それから暫くした日曜日の朝、いつまでも双子が起きて部屋から出て来ないので確認に行くと、二人揃って泣いていた。
 聞くと、『弟』は死んでしまったらしい。ビルは話に聞いていただけだが、まだ見ぬ『弟』の死に少しだけショックを受ける。それでも、実際に夢に見ていた双子程ではない。二人の後頭部を手で覆い、顔を腹におしつけて泣かせてやった。
「いいか、フレッド、ジョージ、それは夢の中の話だ」
「知ってるさ!でもあいつは夢の中にしかいない!」
「もう会えない……!寝ても覚めても、あいつに会えないんだ」
 ぎゃんぎゃん泣いてる二人の、ぐしゃぐしゃになった顔を見て思う。
(本当に、家族なんだ———三人は)
「たしかに夢ではそれで終わりなんだろうな。でも、じゃあ彼に会えるかもしれないぞ」
「どういうこと?」
 同時に呟き、鼻水を垂らしたままぽかんと見上げて来た。
「二人して同じ夢を見るんだからきっと意味があるんだ。同じ世界に生まれてきていて、いつか会えるかもしれない。なんだったら探してみろ。お前達ならきっと見つけられるさ」
 ビルもそう願った。フレッドとジョージの兄弟ならば、『彼』はビルの弟だ。
 パーシーが同じベッドに寝かせてやる、きっと可愛い奴に違いないと期待に胸を膨らませていた。

(そうだ、髪の毛伸ばしてみるか)
 どうやら『弟』はビルの長髪を期待しているようだから、この髪の毛につられて来るかもしれない。
ーーーそれは、『弟』っぽいなとなんとなく思う同級生に出会う少し前の話である。




04 もう一度、会いたいから

 はぱちぱちと瞬きを繰り返す。はて、自分は死んだ筈だった。
 二度目の家族はあたたかく、兄弟は思いのほか自分の大切なものになった。『双子』の片方が死ぬと分かっていたから、なんとか出来ないかと迷いに迷った末に助けたいと思うようになって、けれどどうしようもなくその時が来てしまった。自分が代わりに死ねば良いのだと思っていたが、多分他にも道はあったのだろう。一番恐ろしく、リスクの高い方法をとったのはひとえに、臆病だったからにちがいない。だからこそ、やはりその瞬間も恐ろしく、迷いがあった。身体が勝手に動いてくれなければどうしようもなかった。
 自分の手を確認してみると幼い身体に戻っていて、死んだのだろうと察する。前は赤ん坊のころから自我があったけれど今回はそうではないのだ。
 思い出そうとしてみたら今の家族は思い描ける。両親と三人暮らしの家庭で、魔法とは無縁の生活をしている。
やっぱり自分はちゃんと死ねた。———そう思ったら、ほっとした。

 それから数年、普通の生活を送っていた。
 魔法の無い生活はちょっとつまらなくもあったけれど、平和な証拠だと思った。
 けれどはある日「シリウス・ブラック」の話題を聞いてしまう。父に問いかければ、が小さなころに掴まった犯罪者だったが逃げ出したのだと説明される。青ざめるを、母は心配そうに見るが、なんとか平静を取り戻して部屋に逃げこんだ。
 誕生日に買ってもらったノートパソコンで、インターネット検索をかける。
 ハリー・ポッターシリーズの作品がないことは知っていたが、シリウス・ブラックが実在する人物だとは知らなかったのだ。
 西暦が遡っていることなど、現代からハリー・ポッターの世界へやってきた時に味わっているので気にもとめていなかった。
(同じ世界に———戻って来た……?)
 シリウス・ブラック脱獄のニュースはやはり容易く出て来た。
 愕然としながらモニタを眺め、やがて自動的にモニタの光が消えてしまってそこに自分の固まった顔がうつるまで、ずっとそうしていた。

 は家族に内緒でロンドン駅にやってきた。本当は新学期初日だったのだけど、サボりというやつだ。
 9と3/4番線に繋がる柱は知っている。
 マグル避けの魔法がかけられているのか、実際に人が飛び込んで行く様子は一切見えない。
 が触っても、固い感触がした。
「そこでなにやってるんだ?」
「何か見えたのかい?」
 ぽんと肩を叩いたのは、の目的の人物だった。
 好奇心旺盛な彼らならこうも簡単に声を掛けて来るのも、ありえなくはないと思う。
 そばかすのたくさんある、そっくりな二つの顔と、赤い髪の毛をした双子にはそっと微笑む。
「何も、見えなかったよ」
「へえ、じゃあ迷子?」
「ううん……ただ、ここから別の世界に繋がっている気がしただけ」
「そりゃ面白い!」
 二人は、に屈託なく笑う。
 マグルだということは分かっているだろう。けれど魔法界に気づき始めているということを察して面白がっているのだと見て取れた。
「一緒に飛び込んでみるか?これも何かの縁だ、俺達も付き合ってやるよ」
「お誘いありがとう」
 フレッドとジョージに、自分の記憶があるなど最初から期待はしていなかった。
 けれどあまりに楽しそうに話しかけて来るから嬉しくて、悲しいと思った。同時に、少しだけ満足感を得る。
 不思議と気持ちが凪いで行くのだ。
「でも俺は行けないや」
「そう?そりゃ残念」
 ろくな話をすることなく、じゃあお元気でと別れた。
 駅から遠ざかる足取りは軽く、は少し晴れ晴れとしていた。彼らがこれから先死ぬかどうかなど、定かではない。人は皆いつか死に、未来の事などわからない。そしてにはどうしようもないことなのだ。
 前は同じ世界を生きていて、未来を知っていると感じ、それでもぎりぎりまで分からず結局勝手に身体が動くのに任せた。
 だからは今回も身を任せた。
 今のフレッドとジョージは別世界の人で、家族というわけでもない。引き止める理由も、すべも分からないはなにをする事も無くただ会って、話をして、別れた。
 それでも、満足だった。はもう一度、彼らに会えただけで良かったのだ。




05 もう一度、伝えるよ

 とフレッドとジョージは三つ子で、基本的には三人で居る事が多い。
 いや、嘘だ。は一人でふらふらどこかへ行くし、フレッドとジョージも好き勝手に動き回るので一緒に居ない事の方が多い。けれどフレッドとジョージはを見つけると一目散に駆け寄る習性を持ち合わせているので、やっぱり三人で居る。
 今日を見つけたとき、フレッドは一人だった。
 中庭の木陰で本を読んでいるを、三階の窓のところから見つけた。そして友達に荷物を任せてすぐにに会いに行く。
 木漏れ日が落ちる彼の頬に、フレッドの影がさした。それでも本を読む視線を外さない。
「なぁに」
 けれどじいっと見下ろしていたフレッドに、は問う。フレッドは嬉しくなって、にんまりと笑いながら傍に寝転んで長い前髪の隙間にあるの瞳を眺めた。相変わらず視線が交差することはないが、いつもの事なので全く寂しくはない。本を読み終わったら一度くらいはこっちを見るだろうし、自分の力で視線を奪う方がやりがいがあるってものだ。
「なんでもない」
「そう」
 は黙々と本を読み進めた。ページを捲る手は意外と早いので、本当に読めているのか不思議だけど、パーシーも大概本を読むのが早いためおそらく読めているのだと思う。
 フレッドは仰向けになったまま、ぼんやりと景色を眺めるのと同じような感じでの姿も眺めていた。
「ここで眠ったら風邪ひくよ」
「大丈夫、が居るから」
「意味わかんない」
 暫くして本を閉じたの手が、フレッドの前髪を払いのけるようにいじくる。
 が風邪をひかないなら、それより丈夫な自分がひくはずがないというのは容易くはじき出せる答えなのだが、は本当に意味がわからないと言いたげに視線をそらした。
「暇なの?」
「うん?そうだな、暇だ。だから、俺と遊ぼう」
「嫌だなあ」
 は母親に家事を言いつけられた時みたいに呟いた。実際母親に家事を言いつけられても淡々とこなすのだが。
「本は読み終わったんだろ?」
「残念なことにね」
「じゃあも暇だな?」
「次の本を読むって手もあると思わない?」
 伸ばしていた足を抱えるの横に、起き上がったフレッドは同じ木の幹に寄りかかって座る。
「だーめーだ」
 軽く、に体重をかける。
「おーもーい。……フレッドは何して遊びたいの」
の好きな事で良いぜ、あ、昼寝はナシだ、勿体ない」
 ここ数年付き合いが良くなって来たに期待の眼差しを向ける。
 体を押し返して来たので、フレッドの腕にはぺったりとくっついていた。
「うーん、じゃあジョージを探す競争でもする?先に見つけた方が勝ちね」
「お前さては、ジョージのことが大好きだな?ずるいぞ」
 柔らかい髪の毛を掻き混ぜると不愉快そうに身体は離れる。
「フレッドもジョージも、大差ないけど」
「じゃあ俺の事も大好きなんだな?」
 フレッドがにんまりと笑うと、はほんのわずかに微笑みイエスと頷いた。
 否定されないことが嬉しくて、この答えを引き出せた自分を内心で褒めた。
 ならば、やはりジョージにも聞かせてやらなければとも思う。
 三つ子の間で、幸福の一人占めと二人占めは良くないのだ。
「よし、そのゲームしようぜ。でもルールは追加する!ジョージを先に見つけてラブユーって言ったほうが勝ちだ」
「えぇ……」
「負けた方はジョージにラブソングを聞かせること」
「うわ」
 さすがに歌いたくはないらしいは思い切り顔を歪めた。このくらいならを操作できるのだとフレッドはほくそ笑む。
 付き合いが悪いときだったら、ゲームに参加しないことはおろか、罰ゲームも完全無視だがここ数年のは違う。
 絶対勝つ……と言って立ち上がったに続いてフレッドも立つ。今晩聞かせるラブソングのおさらいは、ひとまずジョージを見つけてからだ。




あとがき
半年前くらいに書いてたやつを今しれっと乗せます。ハリポタブーム再来?に乗ったわけでは……あるかもしれないけれども……。
本編や続く転生のときの主人公とはまたちょっと違った感じになっていると思います。多分。
Nov.2016