harujion

Last Memento

Matt

の射撃訓練について行った事がある。俺はゲームでのシューティングしかしたことなかったけど、は本物のライフルを使って撃っていた。その時弾の入ってないライフルを構えさせてもらった。拳銃とかは触ったこともあるけど、ライフルはそれよりも大きくて重いし、緊張した。
こんなのを撃って的に当ててるなんて、格好良いな、って。
Lになったら、こんな風にが補佐をしてくれるんだと思うと、胸がわくわくした。

がこの施設に来たばかりのころは、よく身体にのしかかったり、負んぶしてもらったことがあったけど、五年もするとすっかりは俺たちを抱っこしてくれなくなった。まあ仕方ないけど。
でも俺は今でも、寝転がってるにのしかかってゲームのクリアできないステージを頼むことがある。ソファは以前より窮屈だった。
昔はメロと三人でぎゅうぎゅう詰めになってたもんだけど、今ではさすがにそれがつらくて、メロも向いから眺めてる。
ニアはのお腹に寝そべることがなくなった。俺もあれはやってみたかったけど、さすがに重たいと拒否をされてるので試した事はない。他の、もっと小さい子供達は時々の膝の上で一緒に本を読んだりしているから、ふいに懐かしさと羨ましさに襲われる。
でもメロとニアよりも俺はにのしかかってると思う。あの二人はちょっと捻くれてるから、に素直に甘えられなくなっちゃったんだろうな。成績はいいけど馬鹿だなあ。は自分から来ることがないから、こっちから行かないと駄目なんだぜ。


ある日、ロジャーが俺たち全員を教室に集めた。ノートパソコンを広げた。パソコンのモニタにはLのロゴ。ニアとメロ以外はこぞってそのパソコンの前に集まった。
俺も嬉しくてLの画面が見える辺りに行った。

ふと、の姿がないことに気づいた。だっていずれLの補佐をするんだから、きっと会いたい筈だろう。いや、顔は見えないけど。
は?」
俺が尋ねると、ロジャーは困ったように笑う。きっとどっかで寝てるんだろうな。
呼んで来ようかなと思った時には教室に入って来た。昼寝どころじゃなくて、マジで寝てたみたいな格好で、裸足にスリッパだ。
そんな起き抜けの姿をカメラの向こうのLに見られていることも、気にしてないみたいだ。ちらりとこっちを一瞥して、こてんと首を傾げてる。
「なにこれ?」
「Lだよ!質問に答えてくれるから、も何か聞いてみたら?」
リンダが嬉しそうにに教えた。
「えー、聞くっていっても……あーお元気ですか?」
『ええ。あなたは?』
「俺も元気です」
とLは、たったそれだけのやり取りしかしなかった。
でも、例え常套句といえどLが質問をしたのは、にだけだった。

はLに会った事があるとはいわなかったけど、彼だけは俺たちとはまた違った所を目指していて特別だったから、知り合いだったのかもしれない。

それから数日後のことだった。
深夜だったか夜明けだったかは覚えていないけど、に撫でられて俺は目を覚ました。月明かりを仄かにうけた、夜色をしたはなんだかとても綺麗で、寂しかった。
「マット、起こしてごめん」
「どーしたんだよお、
目を擦ろうとする腕を、は柔らかく制して握った。なんだか珍しいな、と思っての手を握り返す。
「元気でねマット」
が俺の額にキスをして、米神から頬を撫でた。俺はすごく幸せな気分でへらへら笑いながら眠った。
随分昔、の唇にキスをしたことがある。ファーストキスは昼に食べたミートスパゲティの味だ。レモン味じゃないし、あとで怒られて拳骨までくらったけど、俺はファーストキスがなのが嬉しかった。だから、この夢もとても幸せだった。

次の日、目が覚めたら、はどこにもいなかった。
あれは夢じゃなくて事実だったんだ。本当にキスしてくれたのは嬉しいけど、内緒で出て行くのは卑怯だと思った。

はLの所に行ったらしい。もう十五歳だし、の役目を思えば当然のことだった。羨ましいとさえ思う。でも、それよりももっと、寂しかった。
は俺たちの兄みたいな父みたいな人だったんだ。
小さい奴らは泣いた。メロはふてくされて一日中チョコをやけ食いしてて、ニアは部屋から出て来なかった。

に会うには、Lになるしかない。
多分メロとニアと俺は三人とも同じ考えをして拳を握っただろう。