harujion

Mel

Cosleeping

※この話は名前変換の3つ目(愛称)を英名の愛称として使用しています(ご面倒おかけします)



リンは浅い眠りから目を覚まし、鼻先にかかっていた毛布以外の感触に気づいて自身の状況を認識した。
なぜだかが、同じ毛布の中に潜り込んでいる。
柔らかなブロンド髪に頬ずりしていたのだと思うと、わずかに恥ずかしさを感じて顔を退けた。
すうすうと寝息を立てる頭と、毛布の外の風景のギャップに少々、げんなりした。
現在は調査にきていて、自由にできる部屋が複数確保できなかったため、ベースの隅で仮眠をとっていた。当然、部屋にはナルとジーンもいた。
彼らは素知らぬ顔してリンに背を向けているが、おそらく自身の腕の中で弟が眠りこけていたのは承知していたはずだ。
「……なぜ起こさないんです?」
「メルが起こしただろう」
「よっぽど、疲れてるんだろうなって寝かせておいた」
自分が毛布の中にを引きずり込んだわけではないと分かっているが、今現在抱き込むようにして眠っていたことは変えようもない事実で、後ろめたさが少しある。
が起こしたというのは、どれほどの声をかけたのかは定かではないが、潜り込んできたことも、起こしたという言葉の意味に含まれるのかもしれない。

リンが抜け出して、毛布でを包むと、それを抱きしめて丸まった。
はいつからここに?」
「30分くらい前かな、ちょっと手伝ってもらおうって呼んでたんだ」
そもそも今回の調査には来ていなかったはずなので、リンは問いかける。
「ついたばかりで、なぜ眠って……?」
「いつでもどこでも寝てるだろう」
「でもメル、いつまで寝かせておく?」
「そもそも、メルにはリンを起こしてことに当たるようにと言ったはずだが」
この双子はときどき、弟の自由行動にも大いに寛容になる。というより諦めている節がある。
「そうだった……リン、のこと起こして連れて行ってくれる?」
本当にはリンを起こそうとしたのだろうか。それでリンが起きなかったからやけになって、入り込んだのだろうか。
あまり信用できないが、───きっとリンが起きなかったせいなのだろう。
……」
控えめに、優しく起こすことにする。何度か呼びかけて毛布をつかむ手をほどかせて、頬を指で少し弾くようにたたく。
「ん、リン?……おきたの?」
無造作な頭のまま起き上がったは、自分の髪の毛よりも、しわになった毛布を広げて空気をとりこみ、整え始めた。
「そうだ、ナルに見てこいって言われてるんだった」
「その前に頭をどうにかして、……行きますよ」
大あくびをしたは一拍遅れながらも口を隠すが、頭をどうにもしようとしないので、見かねたリンが整えるために指を通す。絡まりやすいのでゆっくりと梳いてやらないといけない。
「寝てたから気持ち悪い……お茶のもう」
「……メル、お願いね」
「はあい」
リンに世話をやかれ、勝手なことを言いながら部屋を出ていこうとするに、ジーンは念を押すように言った。
「───……って言わなかったか?」
「?」
しかし部屋を出る直前、ナルのつぶやきにが足を止める。
少し考えてから、ああ、とリンの方を見た。
リンはの視線に促されるようにして口を開く。
の愛称といったら、でしょう?」
には特別な愛称が存在するからか、と呼ばれることが多く、ナルたちは聞き慣れていないのだろう。
「今までも呼んでたか?誰か」
「私はたまに呼んでいますが……気づかせるときに効果的なので」
「そうだっけ?」
は言いながらもナルやジーンを放って出ていくので、リンはそれに続いた。
「俺、そんなによく気付くかな」
部屋を出て歩くは口元を抑えた。
笑いをこらえているのか、考え事をしているのか、隠し事をしているのか。
「よく気付くというか……目が」
この愛称は自身がメル以外の愛称として提案してきたものだったはずで、だからリンも時折呼ぶし、その時の反応に気が付いた。
「目?」
つぶらな瞳がリンを見る。
彼はよく目で物を言うことが多いが、と呼ぶ時、目が言葉以上に返事をしている気がするのだ。
リンは何と言ったらいいかわからず、口ごもり、自分の気の所為だと伝えたが、少し考え込んだ後に彼は口を開く。
「……リンだなって思うから」
の脈絡のなさは今に始まったことではないのだが、よく意味がわからない───いや、思い当たる可能性に行きつき、思考が停止してしまった。
って呼ぶの、リンだけだから」
「そう……だったんですか?」
「うん」
リンは咄嗟に、今までの記憶の中でのことをと呼び掛けたシーンを思い出せる限り思い出す。
誰かに聞かれていなかっただろうか、指摘されたことはないが、今後は誰にも聞かれたくないと思った。

「これからは、あまり呼ばないようにします……人前では」

さほど特別なことではないように見えて、リンにとって、そしてきっとにとっても、特別なことのように思えた。
「リンがそうしたいなら、いいよ」
は目を細めて笑った。



end.


開設記念日のお題箱でリクエスト募集したものになります。
リンさんとメルで添い寝!
愛称はですね、ずっと前に知って、いつかリンさんだけがしれっと使ってる話書きたいなって思っていたので混ぜ込みました。
お兄ちゃんたちは普段から主人公に振り回されているので、リンさんが振り回されているのも大変楽しいけど、たまに「は?????」ってなります。その愛称なに?????

日本に来る前でも、イギリスにみんなで帰った後でも、日本で調査中に主人公が来てたのでもどの時間軸でもいいです。
好きな主人公の年齢でご想像ください。きっといくつになってもいっしょにねるから。
・主人公が起こした→多分起こしてない(潜り込んだ)
・ナルはリンを起こして事に当たるように言った→主人公の認識ではリンが起きたら行くからそれまで寝るね
・普通の愛称の提案→深い意味はないけど、気付けばリンしか呼んでなかった
・もう呼ばないとは言わない

ネコチャンってだいすきなご主人から「かわいい」って言われて自分の名前「かわいい」だと思ってる節があるので(諸説あり)つまりだいすきから言われる名前を一番認識しちゃうのってあると思うの。ん?つまりリンさんは主人公のことをずっと「かわいい」って呼んでることになるのでゎ(繋がらない思考回路)
Oct.2021