Sakura-zensen


春の旋風 01

大きな戦争が終わり、世の中は大分平和になったけれど毎日は忙しく続いていた。
昨日は緊急の患者さんを診て欲しいって言われてて病院に駆け込んだ。処置が終わり患者さんが落ち着いたのが深夜で、待合室のベンチで勝手に寝てた筈だ。でも、俺が目を覚ましたのはアパートの一室と思しき場所で、安っちい感じのベッドで寝ていた。
木の葉とは違う、なんだか現代日本みたいな風景が窓の外には広がっている。身の回りにある日用品はほぼ俺の物だったし、布団もそう。でも部屋の間取りは少し違うし、やっぱりここは木の葉ではない。書類や身分証を探してみたら、俺は春野ではなく、谷山という名前になっていた。はて、俺は知らないうちに死んで生まれ変わって、いま記憶を思い出したのか?それなら谷山として生きて来た記憶も思い出せるんだけどなあ〜。
幸い携帯電話があったので日付は確認できて、近くにおちていた高校のパンフレットをみて入学式の案内を見た俺はあわてつつもとにかく学校へ向かった。入学式は、今日だった。


学校は普通の都内の高校だった。日本とか二十年ぶりくらいじゃね?まあ木の葉は外国って感じはしないけど。
生まれ変わったというよりも急にこっちにきてしまったようだが、身体は高校に入学する年齢に若返っていたし、サクラのような桜色の髪も翡翠色の瞳も白い肌もない。明るい茶髪に、焦げ茶の瞳、健康的な肌色だった。本当の俺はもっとメラニンが元気だったような気もするけど……まああんまりかわらないかな?
とにかく分かったことは、谷山は両親の居ない天涯孤独の子で、元々は都外に住んでいたけどこの高校が孤児に優しい学校だったから進学したようだった。奨学金の説明書類とか振り込まれる口座とかはちょうど最近見てたみたいであまり家捜ししないでも出て来た。
一番驚いたのはチャクラが残っていたこと。前髪をあげたら、まだ額に百豪の印がついてる。挑戦してみたら変化が出来た。うううううっそおおお!?
壁の上も歩けるし、風呂の湯船の上にも立てた。需要あるのか……この力。あ、でも医療忍術使えるのはラッキー?いや、無免許医師だから生業にはできないな。それに現代社会において忍の身体能力もっちゃって大丈夫なのかなあ……どんなに動いても疲れないだろうけど、手加減しないとまずいことになりそう。

そんな事を考えていた矢先のことだった。
俺は旧校舎の中にカメラがあったからあれれ〜なんだこれ〜って思って見に行ったら急に声をかけられて元忍の癖にびっくりして下駄箱につかまった。そのせいで下駄箱は倒れてきて、身を守る為に咄嗟に回し蹴りして下駄箱ぶっこわしちゃった。ほ、ほえぇ……やってもうた。
「な、……」
「どうした?今の音は……」
一応俺を助けようとしてくれたらしいお兄さんがぽかーんとしていて、音を聞きつけてやってきた美少年がそんな俺達を怪訝そうに眺めていた。
カメラもお兄さんも無事だったけど俺が無事じゃねえ。
咄嗟に足にチャクラ込めたから俺が触れた下駄箱が木っ端微塵だ。旧校舎の備品だから弁償とかは……多分言われないんだろうけど、回し蹴り一つで下駄箱粉砕した男子高校生……どうみてもおかしいですね。
「ご、ごめんなすん」
降参って両手をあげたけど、チャイムが鳴っちゃったので俺は「チッチコクダーッ」って叫んで逃げた。自慢じゃないけど逃げ足は早いんだ。
……というか多分俺は規格外な身体能力なので本気で逃げたら絶対追いつかれないと思う。
とにかく、クラスも名前も言ってないからきっとすぐには見つかんないだろう……って思ってたら放課後教室に美少年の方がやって来た。咄嗟に高速で逃げなかった俺を褒めていただきたい。逆に目立つもんね。
しかし何故バレた……って思ってたら美少年も目を見張っている。あ、予想外だった感じね?じゃあ何でだろう。
「あ、渋谷せんぱ〜い」
俺の後ろの席の方から女子が何人かあの人に向かって言った。先輩なの?制服着てないじゃん。
やんややんやしてるけど、美少年もとい渋谷先輩(ハート)はちょっと困った感じにしつつも俺を見ている。しかし女子は強し!かつてサスケに集う女子を見て来た俺はこれ幸い、しめしめと教室からでようとした。
「きみ、待ってくれないか」
うんぎゃぁ……。声かけられちゃったよ。
「谷山くん?知り合い?」
一人の女子生徒がきょとんとしている。名前ばれた!ま、まあ、クラスばれたんだからこの際どうでもいいか。
しかし……やっぱ俺か。
ぎこちなく振り向くと、みんなしてこっちを見てる。関係なさそうな生徒まで。そもそも美少年の渋谷先輩が目立ってるんだけどね。
知らない人だよって言って、今朝下駄箱ぶっ壊したじゃないかってバラされるのは嫌なので話を合わせることにした。
「皆こそ知り合い?」
「うん、今日ちょっとね」
「怪談に混ぜてもらおうと思ってるんだ」
渋谷先輩は言い淀んだ女子生徒に気づかずにさらっと零した。そしたら黒木さんが混じって来てよくわからないけど霊感あるとかなんとか言い出して、渋谷先輩は食い付いて言及して、最終的には空気が悪くなって終わった。
結局女子生徒だらけの怪談ハーレムは中止となったらしいんだけど、渋谷先輩はやっぱり俺にご用があるようで手招きをした。い、いやだぁ。
「彼女はクラスメイトか?」
「そうですけど」
「……本当に霊能者かな」
「さあ?喋った事ないんで」
「ところで、君は何者なんだ?」
「え」
「リンが言うには足一本で下駄箱を粉々にしてみせたそうだが」
「そんなばかな〜」
って言ったけど、俺よりあのお兄さんの言う事を信じるのだろう。聞いて来た時点で決まってるか。
「下駄箱が……んと、脆かったんじゃないですかね」
「……」
「馬鹿力なんですぅぅうぅ〜見逃してくださいぃぃ〜!」
じっとり睨まれて、俺はやすやすと吐いた。俺現代日本に帰って来てまだ二週間くらいだけど、ふぬけちゃったのかな。いや、忍の仕事じゃないから逆に本気出し難いんだよなあ。

どうやら渋谷さんは先輩ではなくて旧校舎の調査にやって来た人らしい。しかも心霊調査っぽい感じのやつで、ゴーストハントっていうんだとか。しらんわそういう住み分けは。
旧校舎を壊そうとすると事故やら事件が起きて工事が中止になってるらしく、渋谷さんはそれをどうにかする為に呼ばれたそうだ。ははーん、幽霊の祟りとかいうやつかあ。で、とにかく色々調べたいってときにおかしな生徒、俺が現れたから疑ってると。でも俺は新入生でまだ入学してからさほど経ってないから俺はちょっと気になる程度だそうだ。
「きみ、学校の生徒たちに聞き込みをしてくれないか」
「俺が?」
たしかにこの目立つ人が生徒に噂話を聞くよりは早いし面倒じゃないかもしれないけど……。
「下駄箱の件は誰にも言わないことにする」
弱味を握られた気分だ……。
言いふらされても信じられないだろうけど、変な噂が立つのは避けたいし、話を聞いて来るくらいは手伝ってやるか。



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サクラ→GHです。。原作知識無し。さすがにピンク髪じゃないです。
チートな主人公ってやっぱり妄想たのしくて……たのしい。
2016

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