Change the world. 01
※幸村編の主人公in仁王編
ベッドが揺れて隣で眠っていた人が起きだす気配を感じる。
俺は大抵眠るのが遅く、朝は遅くまで眠っていることが多い。それでも眠りが浅かったりすると、こうしてつられて目を覚ますことがたまにある。
「、に、くの……?」
「ん?」
ランニングかな、と思ってパタパタと手を振りながら声を出すと、思いのほか声が出なかった。
寝返りを打ち起きているアピールをしながら、手を少しだけ上げる。
「てらっさい」
「……何か欲しいもんでもあるのか?」
ぎしりとスプリングが音を立てて、マットレスが沈む。
おそらくベッドに腰掛けて俺のことを覗き込んでる。
漠然とした違和感が徐々に俺の頭を現実に引き戻していき、ぱちりと目を見開いた。
天井も、覗き込んでくる人も、ベッドの大きさも、部屋の間取りも、なにもかもが俺の身に覚えのないものだ。
「寝ぼけてるのか」
「ハ、ハイ」
がばりと起き上がり、俺は呆れたような顔しつつも微笑みを携えた知人の顔を見る。
そして慌てて正座して、彼と向き合う。
「あの、あの、……俺は昨日、何を……?」
「昨日?」
「ココハドコ……?」
「『ワタシハダレ』?」
まさか中学時代のちょっとした知人の家で目を覚ますことになるとは思わず、俺は昨日もしかして酔っぱらってこの人にでも再会したのか、と記憶をたどる。いやいやいや……それはないよな。
俺のおかしな様子を面白がってるのか、それともはぐらかそうとしているのか、よくわからない態度でその人───仁王先輩は首を傾げていた。
「記憶喪失なんかな、俺」
「……それじゃ、俺のこともわからんのか?」
俺はおずおずと、周囲を見回す。カメラとか、ないよな……って思って。
「いやそりゃわかるけど……ここって仁王先輩んち?」
「……は?」
仁王先輩はここへきてようやく、態度を変えた。
本当に驚いたみたいな顔。
つまり仁王先輩のドッキリってわけでもないってことだ。
いよいよ何が何だかわからなくなった俺たちは、仁王先輩の寝室っぽいところから出てリビングへ行く。
ソファとテーブルがあるので、そこに並んで座りながらも身体は少しだけ向き合う。
「とりえず、自分のことわかる範囲で言ってみんしゃい」
「谷山、23歳、東京都在住……?」
うんうん、と仁王先輩が頷くので、合ってるようだ。
「職業は?」
「え、っと、……歌手」
「歌手」
復唱はしてくれたけど、その様子からすると俺は多分歌手ではないんだろう。
くしゃりと頭を撫でつけて、変な気分になる。
仁王先輩は赤也と丸井先輩と一緒に俺のライブに来てくれたことがあったはずなんだが……。
こうなってくると、記憶喪失なのは仁王先輩では?
「あの、仁王先輩の記憶だと俺って、なにしてる人?」
「高校時代のバイト先に就職したぜよ」
「え、SPR?」
こくん、と頷かれた。意外だ、ナルがあのまんま俺を雇ってくれたんだ。
今でも日本とイギリスを行き来しながらゴーストハントしてるらしいけど、俺もついてったりしてるってことか。それはそれで面白そうだなと思った。
次は過去の自分をてらし合わせていくと、中学は一年程立海に通い、お母さんの死を機に先生の家に下宿、大阪の四天宝寺中に転校して、東京の高校に進学したってところは記憶通りだ。けどその後の選択が違うんだだろう。
「信じがたいことだけど、ちょっと違う道を歩んだ俺ということですかね」
「そうみたいじゃな」
スマホを借りてネットで検索をかけてみるも、俺のデータは一切出てこなくて、ここに歌手の俺が存在しないことはわかる。
「まあ、行く宛てなんてないじゃろうし、帰れるまでうちにいればよか」
「それはすごくありがたいんですが……こっちの世界の俺ってどこにいるんですかね。自分に面倒見てもらおうかなって」
「会っても混乱するだけじゃき、おすすめはしないぜよ」
「それもそっかー……」
コーヒーでも入れちゃる、と言って席を立った仁王先輩を眺める。
俺の知ってる仁王先輩じゃないわけだけど、俺の知ってる仁王先輩とあんまり変わりはない。
最後に会ったのは多分一年以上前の、赤也経由で誘われた飲み会だ。
仁王先輩その時、どんな仕事しててどこ住んでるって言ってたっけ……。そう思いながら部屋の中を少し見る。
戻ったら仁王先輩の家遊びに行けないかなーなんて、不謹慎なことを考えた。
背もたれに寄りかかって天井を見ていると、仁王先輩が戻ってきて俺の前のテーブルに湯気が立つマグカップを置いた。
「ありがとうございます」
ゆっくりコーヒーに口をつけて、おずおずと啜る。
……思いがけず仁王先輩の家にきてコーヒーを飲むという経験をしてしまったな。
「ふふ」
俺は思わず笑ってしまい、吹き出した息でコーヒーと湯気が揺れる。
なに、と目で見てくる仁王先輩に、ちょっと照れ臭くなりながらも素直に想っていたことを口に出した。
「いや、きたのが仁王先輩のとこでよかったなって」
「……ピヨ」
街中に突如現れてたら、俺は危うく所属事務所を訪ねてやばい人扱いされてたのかもしれない。そう思うとぞっとした。
幸いこの日は土曜日で、仁王先輩の仕事は休みだった。
朝……というかもう、昼だけど、起きたらここにいたし、案外明日の朝には戻ってるんじゃないかなーなんて、楽観視している。
「とりあえず飯……、出かけるか」
「え、いいんですか?家に居なくて」
「一日うちにこもってるのも落ち着かんじゃろ。金は気にしなさんな、先輩がおごってやるぜよ」
「ゴチでーす!」
俺はぺこーっ!と頭を下げて、仁王先輩に感謝した。
仁王先輩だって、ただでさえ別世界っぽいところから来た俺が一日家にいるっていうのも、多分息が詰まるだろうしな。
現に俺も先輩の家ってことでソワソワしているし、服とかを見繕ってくるっていうのをリビングでぴしっと座りながら待ってたし。
用意された服も靴も案外ぴったりで、なぜかというと、丸井先輩やら赤也やらが遊びに来て置いて行ったり忘れていったものがあるという。
靴忘れていったのは赤也かな、馬鹿だからな……と納得してしまう自分がいた。
身支度を整えて外に出ると、知らないけれど何の変哲もない風景が広がっていて、少しだけ新鮮な気持ちになる。
「ここ東京?」
「ああ、大学からこっち住んでる」
「へえ~じゃ立海大行かなかったんだ」
鍵を閉めて歩き出す仁王先輩の後を追いまわして質問責めにする。
さっきは俺が自分の身の上を語ったので、今度は俺の番とばかりに仁王先輩の今の仕事とか、経歴を聞き出す。とはいえ、俺はもともとの仁王先輩の今住んでるとことか、仕事の話って聞いたことないので、俺から面白い話ができるわけじゃないんだが。
「おまえさんは?」
「ん?」
「どうして、歌手になった?」
「あー……っと、……憧れの人がいて」
仁王先輩は回答に飽きたのか、今度は俺に質問を投げかけた。
正直この手の質問は今までたくさんされて答えてきたけれど、この人に答えるのはなんだか少し居心地が悪い。
なにせ、ここには別の俺がいるはずで、仁王先輩の知る俺ではないわけで。
「その人に、歌を聴いてもらいたかったから、かな」
ふうん、と言ったきり、それ以上深くは聞いてこなかったけど、何を考えているのかわからないので益々不安になった。
「───こっちの俺って、歌どうですか?へた?」
「いや、上手いぜよ。よく鼻歌も歌っとる」
「アハハハ、よかった同じだー」
ほっとして笑いながら、仁王先輩がいつぞや、俺の鼻歌を聞きに来てたことを思い出して話した。
自覚なく歌ってた鼻歌だったから、最初は曲名もわからなくて、後に発覚したその歌が一時期テニス部でブームになった。というのも、俺がカラオケに突如呼ばれて歌わされたからなんだが。
「思い入れがあったんですけど、歌手になってから、その歌カバーすることになったんですよ」
「こっちじゃカラオケは行ってないし、多分その歌は聞いてないぜよ」
「おお……そうか、そういう違いがあるのか……」
ふむ、と口元に手を持ってきて考える。
それもそうだよな、過去が違うから未来が違うんだろうし。
「こぼしてる」
「え、あ!」
「……考え事か?」
カフェに入ってサンドイッチを食べながらぼうっとしてた俺は、具材をべろっとこぼしてたみたいで、仁王先輩の指摘で我にかえる。
考え事をしていたのがもろバレで恥ずかしい。
「あと、ここ」
「んぅ」
ソースが顎についてたのを、仁王先輩に拭われた。
そして、その指についたソースを舐めとる仁王先輩にドキッとさせられる。
思わず動揺して、サンドイッチそのものを手から落とした。
仁王先輩がはっとして見て、自分の行動を振りかえるように目を泳がせた。気まずそう……。
その行動が、どういう意味から来ているのか、二通りほど考えがある。
単に、自分の癖が俺に出ただけ───もしくは、俺とただならぬ関係だということ。
振り返ってみるとおかしなことはあった。
最初から俺との会話が普通に成り立っていたこと。噛み合ってはいなかったけど、俺がいたことに疑問を感じてなかった。……てっきり、冷静に観察してるだけかと思ってた。
俺の高校時代のバイト先やそこに就職した話も、自然に言ってた。まあ、向こうの仁王先輩も知ってるかもしれないが、話すときに『らしい』とかつけるかな。
この服や靴もきっと、誰かの忘れ物ではなくてこっちの俺が普段使っているものだろう。
なにが、赤也は馬鹿だから靴置いていくかな、だ。馬鹿は俺だ。
「……バレたか」
俺が今度こそ別の意味で黙り込んでいるので、仁王先輩は観念するように言った。
ご飯を食べたあと、行きたい所はあるかって聞かれた。
せっかくなので地元に行きたいと提案すると、夜までには帰れるだろうとそのまま神奈川へ行く電車に乗せてくれた。
あ、交通費……それはこっちの俺の財布からでもとっといてほしい。
「海ー!」
「そんなに久々か?」
俺が地元の海を見て思わずはしゃぐと、仁王先輩は隣で軽く笑った。
「久々なんだけど、ただ、見ると気分が上がるってのもありますね」
「間違っても裸足になったり、海に入ったりするんじゃなか」
「寒いからやらないし」
「寒くなかったらするのか……」
「たぶん」
ふっと息を吐き出して笑うので、それはどういう笑いかな?と首を傾げる。
多分性格に差はそんなにないと思うんだけど。
「やってたナリ。しかも転びそうになってた」
「やっぱりなー」
俺も自分の行動に深く頷く。それにしても転びそうになったのか……アホが極まりすぎているし、今日はやらなくて正解だ。
さすがにこれ以上仁王先輩に迷惑かけたくない。
「……俺と仁王先輩って、いつから?」
「聞きたいのか?」
「ちょっと気になるっていうか……」
仁王先輩は海を見たまま、視線だけちらりとこっちにくれる。
知ったからには聞いときたいけど、知らないままの方が良かったような気はした。
でもなあ、遅かれ早かれ、違和感には気づいたと思うんだ。
「中一」
「!?早くない?え、それは俺が男だと知っていて?」
「ああ、最初はまあ、フリだけどな」
「お、おお……」
仁王先輩の発言に思わずつめ寄ったが、付き合ってるフリと聞いて安心した。おおかた仁王先輩の女避けとかそんな感じかなって。
しかしそのあとに出てきた事実にもっと驚くことになる。
「学生証拾ったら、性別欄に男ってかかれてたき本人に返してやるために呼び出したぜよ。どんな反応するのか興味もあったしな」
俺はえー……と言葉にならない声をあげながら、当時のやり取りを聞く。
密会を周囲に誤解されたのが面白かったので、そのまま付き合ってるって嘘ついて、次第にということらしい。
「その様子だと、お前さんは落とさなかったらしいな」
「はい。仁王先輩が俺の性別知ったの、多分デビューしてからだと思う」
「ザンネン」
肩を竦めた仁王先輩を見るに、きっとそれをきっかけに、俺の人生は変わったんだろう。
もしかしたら他にも、何かをしたり、しなかったりしたのかもしれないが。
海は目一杯堪能したので、そのあとは中学まで行ってみたり、俺の元の家や両親のお墓に行ってみた。
場所が変わっているなんてこともないし、両親の亡くなった日付だって同じで、ただ俺の人生の選択が違うんだなと実感した。
日が暮れるよりも前に神奈川を発ち、また東京の、仁王先輩と俺が暮らす部屋に帰ってきた。
狭い玄関のカギを置く場所に一つ残されていたのは、きっと俺の分。家を出るときは気が付かなかった。
手を洗ってからこっそり洗面台の鏡を開けてみると歯ブラシとコップが二セット並んでいた。
キッチンで夕食準備を手伝いながら気づいたのは、食器が二人分あること。
朝、同じマグカップでコーヒーが出されたのは、客用があるのではなくて俺用だった。
そして夜の日付が変わるよりも少し前、俺は猛烈な眠気に襲われていた。
「もう眠いか?」
「ん」
ソファに座って、うとうとしかけていた俺を見た仁王先輩は、軽く頭を小突いた。
「ベッド行くか?」
「いいの……?」
「ベッドに来たんじゃき、帰るのもベッドじゃろ」
「そっかあ」
のしのし、と寝室に向かうのを、仁王先輩が追いかけてくる。
「今日は一日ありがとうございました。そしてすみません」
「なんで謝る?」
ベッドに乗って、寝転がるより前に仁王先輩には深く頭を下げる。
謝ったのは純粋に、お金を使わせたし、きっと気も使わせただろうという負い目があったのだ。
「俺、ちゃんと帰るから」
俺がどこにいるか、と聞いたときに仁王先輩が会わない方が良いとはぐらかしたのは、こっちの俺と『入れ替わった』からなんだろう。あれは俺と同棲していることを隠すための優しい嘘だった。
「本当の恋人のところにか?」
「───うん」
「なあ、……幸せか?」
初めて名前を呼ばれたな、と、頭の隅で考える。
「もちろん。でもさ、こっちの俺も幸せもんだなって……ちょっとうらやましく思った」
「?」
手を掴まれていたので、握り返す。
「仁王先輩が恋人で幸せだろうなって」
「……こっちのは、夢叶えられんかったき、それでもか?」
「俺が夢を追いかけたのは……一人がいやだったからだ」
「───、」
元気づけるような、別れを惜しむような、感謝を表明するような、いろんな意味を込めて、仁王先輩の手を大切に両手で包み込んだ。
「一人にしないでくれてありがとう」
「……」
「こっちの俺のこと、よろしくお願いします」
「まかせときんしゃい」
笑いながら向き合って話しているのに、とてつもなく瞼が重たい。
こんなふうに眠りに落ちたことはないけど、充足感が胸いっぱいに押し寄せてきて、俺は何もかも放棄して身体から力を抜いた。
ベッドに寝落ちたのか、仁王先輩に支えられたのかわからないけど、深い眠りに落ちるようにして、すべての意識を手放した。
───朝だな、と頭のどこかで自覚して目を覚ます。
その時、自分が何かを掴んでいることに気が付いた。
徐々に誰かの手を握ってるんだとわかって、その肌を確かめるように指を開いてまた閉じる。
くすぐったかったのか、それともただ寝息なのか、零れてきた息の音でそれが恋人のものであることがわかる。
珍しく、俺の方が早起きだ。
そう思いながら、癖のついた黒髪を手でもてあそぶ。もちろん、繋いだ手はそのままにして、開いていたほうの手で。
「せーいちさん」
すうすう、と規則正しく寝息を立てている恋人に、ひそかな声で呼びかける。
起こすためじゃなくて、ただ呼びたかっただけ。
可愛いねがお……。
俺がされてるみたいに朝のキスをしようと思ったけど、この健やかな眠りを妨げる勇気が俺にはなかった。だからって俺が朝されたくないという訳じゃないんだけど。
寝室のドアを開いて部屋から出ながら振り向いて、ベッドで眠る精市さんのふくらみを遠目に見て、ニマニマ笑って静かにドアを閉めた。
洗顔後のスキンケアをしたあとキッチンへ行き、冷蔵庫の中を見る。
ミネラルウォーターとか、果物や野菜が入ってる。
パンを温めるのは食べる直前がいいから、とりあえずサラダからかな、と適当に食べたい野菜をとって、ワークトップに置いた。
仕事の関係で朝が早いこともあるけど、こんなふうに穏やかに早朝から目が覚めるのは珍しいかもしれない。
なんか気持ちよくて、採光のよいリビングに面したキッチンで鼻歌まじりに朝食を作る。
するとその歌に交じってスリッパを履いた足音がとすとすと聞こえてきて、精市さんが起きてきたのだと理解する。
「おはよー、お」
振り向こうとした矢先に背後から抱き着かれて、動きを止める。
盛り付けしているところだったのでいいけどさ。
「おはよう、今日は早起きだ」
「なんか目が覚めちゃってー……」
顔を洗ってきたのか、前髪が少し濡れていて、頬に雫がひとつぶ光っていた。
拭ってやろうにも俺の手は今、洗ったプチトマトを盛ったところで濡れている。
「ほっぺまだ濡れてる」
「うん」
俺の肩に顔をうずめて拭きだした。
あ、こら、と声をかけると顔を上げて、拗ねた顔をする。
「起きたらベッドにいないからびっくりした。今日は仕事じゃないはずなのに」
「えー」
些細な理由に思わず笑って身体を揺らす。
それでも後ろから抱き着くのはやめないので、まだ不機嫌みたいだ。
「は夜、俺を一人で寝かすんだから、起きたときは一緒にいてくれないと」
「ごめんなさい」
素直に謝罪が出てきた。俺だってせっかく一緒に過ごしているのに一人で眠って一人で起きるのは寂しいなと思うから。
「早く起きても二度寝して?朝ご飯は俺が作ってあげたい」
「あはは、いつもありがとう。……じゃあ今日のサラダ、要らない?」
「食べる」
そういいながら、食むのは俺の唇だった。
手が濡れているので、抱きしめることができない。
悪戯っぽく音を立て何度も俺の不満を遮る。俺も身体に触りたいのに、硬直状態でされるがままだ。
諦めて手以外はすべて応えるようにすりよって、自分からも唇に吸い付くと、喜んで零す熱い吐息が顔にかかった。
「───おはようのキス、やっとできた」
ひとしきりやって満足したのか、俺の頬を指でなぞりながら解放した精市さんはもう拗ねて顔をしてなくて、とろけるような微笑みと、熱っぽい目をしていた。
今のをおはようのキスなんて、いつもしてる可愛いのと一緒にしないでいただきたい。
「サラダも美味しそう、運んじゃおうか」
「……うん」
すっかり機嫌が直ってるので何とも言えないが、俺はサラダを二つ手に取った精市さんの背中を追いかけて、とんと体当たりした。その程度で倒れたり動揺する人ではないので、笑いながら受け止める。
なに、と知らんぷりして聞いてくるので、俺も教えてあげないことにした。
でもきっとわかってるんだろう。
俺がこれからも、ずっと一緒にいると心に決めていることは。
next.
思いのほか長いしどっち夢?ってなったけど後半が本番です。
仁王のビッグラブと幸村のメルティラブが押し寄せてきて情緒おかしくなりそう。
冒頭、寝ぼけたまま声かけてくるところからして、仁王には自分じゃない恋人がいるってわかっていてしんどいね……。夢を叶えた成功者っぽくなってる別世界線の主人公(の恋人)にちょっと嫉妬したり凹んでるのしんどいね……。
主人公の発言「一人がいやだった」というのは、一人になりたくなかったからと、一人にしたくなかったからっていう意味。
サラダ『も』美味しそうって、他には何が美味しかったんだろう(すっとぼけ)
Sep.2022