I am.


My dear. 02

魔法の杖を手に入れた!わーい!びゅーんひょいってやりたいのをおさえるのは大変だ。
28センチとか桂の木とか言ってたけど、詳細を覚えてられなくて、もうなんか忘れた。とりあえず使えればいいよ。
杖とペットって魔法使いっぽいもの代表って感じだから欲しかったんだよう。でもペットは飼う余裕ないんでやめておく。手紙用のふくろうは学校でも借りられるってスネイプ先生が教えてくれたので大丈夫だ。日本まで行けるのかな、本当に。……考えるのはよそう。

9と4分の3番線ホームは大変親切ではない場所にあるので、まず俺は同じような生徒を見つけなくちゃいけない。壁に入るのは知ってるんだけど、どの壁なのかはよく覚えてない。9と10のあいだのやつ?あっち?間違えたら恥ずかしいからやっぱり誰かに聞きたい。
人混みの中日本人の子供がでっかい荷物もってうろうろしてる光景はさぞおかしなことだろう。混雑してるので誰も声はかけてこないけど。
「あ!」
「え?あ、きみ」
ふいにすれ違った家族の男の子の腕を掴んで咄嗟に引き止めた。
きょとんとして俺を見つめたのは、制服採寸の時に一緒になった子だった。
「ひきとめてごめんね、ホームへの行き方がわからなくて」
「おやそうなのかい。では我々について来ると良いよ。お嬢さんお名前は?」
「谷山麻衣……、日本人なんです。マイって呼んでください」
男の子の代わりにお父さんが快く返事をしてくれて、お母さんはにこにこ笑って俺を見ていた。ちなみに、俺がお嬢さんって呼ばれたのは女ものの私服しか持っていないから。
「えーと、君の名前は?」
「あら、自己紹介をしていなかったのね」
「……僕はセドリック・ディゴリー」
お母さんに言われて男の子はにかみつつ名乗った。
セドリック?セドリックってスリザリンの子だっけ?あれ?
とりあえず知ってる名前のような気がする。
「よろしくねえ」
手を差し出すと、おずおずと握られた。俺はそんな様子も気にせずわしっと掴んで少し振ってから放す。
大人しい子ってのは十分わかってるので、セドリックの対応はもう気にしない事にした。
嫌がる顔を見せないと俺は喋るのを辞めないぞ!

おじさんはセドリックと先に行き、俺にはおばさんが付き添ってくれて、無事9と4分の3番線ホームについた。荷物を運び入れるのもセドリックのついでにおじさんがやってくれて、おばさんはセドリックに俺の世話を頼んでくれた。なんて優しい家族だろう。セドリックもお利口さんで「うん。行こう、マイ」って手を差し出してくれた。
「セドリックは一人っ子?」
「うん。マイは?」
コンパートメントの中に入って案の定沈黙がおりたので俺は積極的に声を掛けてみる事にした。外人さんだから下の名前は躊躇い無く呼ぶくせに、口は開かないのは勿体ないよなあ。
「うちも一人っ子」
「マイの家は、……魔法使いはいないんだね」
「あー、わかる?」
セドリックはこくりと頷いた。
ちなみにセドリックのうちはお父さんが魔法省のなんとかかんとかってところにつとめてるらしい。うん、名前覚えられないので諦めた。とりあえず魔法省勤めってことは覚えたからいいだろう。
発車して暫くしてからも俺は甲斐甲斐しく話しかけ、徐々にセドリックも話題を出してくれるようになった。どの寮に入りたいかって話をしたときにスリザリンの名前が出なかったからほっとしたのは内緒だ。なんだぁ、スリザリンの子じゃなかったか。ん?じゃあ誰?確かに聞き覚えのある名前だと思ったんだけどなあ。
もう随分昔のことだし、登場人物の名前を細かく覚えてられないのもしょうがないよね。

学校につく前に制服に着替えた後はセドリックも俺を女だと思っていた所為で目を白黒とさせていたけど、最終的に俺がちゃんと男だって宣言したので落ち着いた。
そして、俺とセドリックはハッフルパフの寮だった。汽車のなかで、寮の気質を聞いたけどセドリックはぴったりだ。俺は自分の事なのでなんとも言えないけど、まあ選ばれたってことはそういうことなんだろう。
ご馳走は食べ慣れない味がして、俺は腹八分目でセーブしておいた。嫌いじゃないけど、慣れるまでは少しでいいなあ。
主要キャラといえばグリフィンドールなので、あっちのテーブルを眺めてみたら新入生の群れの中に赤毛の頭を二つ見つけた。どうやら俺は、ロンのお兄ちゃんの双子と同年代らしい。
年子ではなかったと思うから、少なくとも再来年以降にハリーが来るんだろう。わくわくするような、怖いような気分だ。

同室はセドリックの他には純血の子とか、混血の子とか、マグル出身の子も様々居て皆で夜遅くまで喋った。その中でセドリックはやっぱり口数は少なかった。でもだんまりを決め込む程暗くはなくて優しい子だった。人当たりも良くて、魔法界のことを沢山教えてくれた事もあったので、俺の中で友達になりたい人暫定一位はセドリックである。
ちなみに、二位と三位はグリフィンドールの双子であるフレッドとジョージ・ウィーズリーだ。
彼らは入学して一週間で悪戯騒ぎを起こし、その名前はまたたくまに他寮の俺たちにまで広まった。
授業で一緒になる時は、同僚よりも他寮がターゲットになりやすいので要注意。俺とセドリックは一回いたずらに巻き込まれてびしょぬれになった事がある。一緒に被害にあった上級生が俺たちのことも魔法で乾かしてくれたけど、俺はいつか何かしらの仕返しがしたいと思ってる。何が良いかなあと考えて、俺はとっても優しい方法をとった。
お母さんから、クラッカーを送ってもらったのだ。マグル用品なので珍しいだろうし、びっくりするのと散らかるので被害は終了だ。フレッドとジョージへの仕返しにも、お近づきの印にもなるだろう。
「あ、丁度いい所に」
「「ん?」」
渡り廊下で偶然見つけた赤毛二人を見つけて、声を掛けた。俺は首を傾げた二人に、ローブのポケットからクラッカーを二つ出して押し付ける。
「これ日本のオモチャなんだ。余ったから君たちにあげる。紐をひっぱったら開くから遊ぶときに使って」
説明した途端二人揃って同時に紐をひっぱった。可愛いやつらだな。
パン!という音と、火薬の匂いと、色とりどりの紙が噴き出して双子に降り注いだ。俺にも若干かかったけど、噴き出した途端に少し距離をとったのですぐに取り払える程度の量だった。
「あっはははは!」
目を丸めちゃった二人に俺は爆笑した。
「なにこれ、なにこれ!」
「すごい散らかっちゃったぞ?」
体中にまとわりついた紙クズをぱんぱんと叩きながら、二人は俺と片割れを交互に見ている。うん、大満足。
「期待通りに遊んでくれてありがとう」
「マグルのパーティーグッズだろ?これ。見慣れない形してるから気づかなかったよ!」
一応物としては知っていたみたいだけど、よかった気づかれなくて。
「というか、これどうするんだ?散らかしちゃったぜ」
「それは二人にあげたヤツだから、二人でお掃除頑張ってね!魔法でびゅーんひょいっと」
「「片付けの魔法なんてまだ知らないよ!」」
「俺も!」
そういって俺は彼らに手をあげて別れの挨拶をした。
よし、この間水をかけられて吃驚したのと飲み込んだ不快感の分は仕返しが出来た。まあほっといても先生かフィルチさんか、もしくは律儀な上級生が片付けてくれるかな。

双子にはそれ以来顔をしっかり覚えられたし、声をかけられるようになった。時々悪戯もされるけど、誘われた時に付き合ってたら俺も悪戯する側にまわっていた。ただし寮が違うのであんまり一緒になることはない。
俺の名前になぞらえて、「やあ、マイ・フレンド」とか呼びかけられるのはちょっと嬉しかったりする。


next.

セドリックと同級生です〜。でも双子も好きなのでお友達になって欲しいなって。
クラッカーは、イギリスのやつは形違うって聞いたので。いや、日本製も売ってるかもしれませんけど?
まあ、そこはね。いいかなって。一応魔法族だし。
Oct 2015

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