I am.


My wiz. 03

昨日ジーンとナルにさりげなく指名されてたのを説明させられたついでに、旧校舎のことについてなにか知らないかと女子たちに聞いてみたら、いくつか怪談とか噂話をしてもらえた。ジーンとナルが心霊現象の調査員だという話をすると、彼女達はうっそ〜マジ?先輩じゃないの〜と大きな声で反応を示したので、黒田さんに紹介して!と言われてしまった。うへえ。
「いや、でも、今回の件は関わることないと思うよ?ナル、たいしたことない事件だって言ってたし」
なんとか引き下がってくれないかなーと思ってたら、ナルって何よと女子たちに聞かれてしまい話がそれた。その間に黒田さんは俺との会話をやめてしまって、席について本を読んでた。
先に話し相手を変えたのは俺だけども……。
「あいつって、ああなのよ……中等部の頃から、アブナイって有名だったんだ」
「そうなんだ」
「霊感があるとかいっちゃってさ、バッカじゃないの」
魔法界に居た俺としては、大げさに馬鹿にはできないのだけど、彼女達の反応はもっともすぎて、ちょっとだけ胸が痛んだ。庇えないけどな。

綾子とぼーさんが来たと思ったら、やっぱり黒田さんがやってきた。
そしてすぐ追い払われてしまう。あら可哀相……と思ったけど自業自得と言うかなんというか。
「それで?ナル、今日は何したら良いの?」
「え」
「……」
ジーンはぽかんとして、ナルはじっとりこっちをみた。
「なんでナル?」
いや由来は昨日言ったじゃん。と思ったけど、多分あだなで呼んだことが驚きだったのだろう。
「え、親しみを込めてあだ名で」
「僕には?」
「ない」
真剣に頭を捻ったけどジーン以外浮かばないしさすがに言い当てるわけにもいかない。
「あ、そういえば、噂とか聞いて来たから後で話すね」
「ああ、とりあえずが昨日運んだ———」
「呼び捨てだ」
案の定俺を呼び捨てにしたナルにぷぷぷっと笑うと、おまえも言っただろうと拗ねた顔をする。ナルにしてみたら下の名前で呼ばれたようなもんだしなあ。
こういう高飛車系なタイプは気安く呼ぶなってなるかと思いきや、海外の人だから全然抵抗ないみたい。
「で、なんだっけ、昨日運んだ教室?」
「そこに設置したカメラのデータを取って来て欲しい」
「わかった」
「ジーンは西側の端の教室を」
「あ、うん」
「なんだあ、あだ名あるなら言えばいいのに」
ナルがしれっとジーンと呼ぶ。偽名とかすってないけど良いの?
ナルもかすってないけど、ナルシストという要因があるじゃん。ま、俺のしったこっちゃないが。
運命が働いたのか三人で下の名前で呼び合う関係が出来あがった所で、校長に連れられてジョンがやってきた。ほええ、本当に可愛いじゃないか。感動。
彼は変な言葉遣いだったけど、優しい性格だったのでベースの実験室に残る事を許されている。
ジーンが思いのほか可愛くなかったというか、普通の男の子って感じだったので、ジョンの初対面でもわかる人の良さ的なものに、俺はへらへらと笑みがこぼれる。
「ジョンで良い?」
「あ、はいです。あんさんは……」
でいいよ、谷山
にっこにっこ笑いながらジョンとの親交を深め、ちらりとモニタを見る。
ふいに人影が映ったと思ったら、和服を着たおかっぱの少女が映ったのでうおっと声を上げた。
「ジーン、座敷童がうつった……」
服を引っ張ると、きょとんとしてモニタを見に来る。座敷童っていう言葉に反応したのかナルも来た。
「———あれは」
何かを言いかけた二人をよそに、実験室のドアがあいて俺はほっとする。そういえば真砂子がまだ登場してなかったんだった。

真砂子が自己紹介をしてすぐに、綾子の悲鳴が響いた。皆一大事かと駆けつけたけど、俺と真砂子は後ろからのんびりついて行く。真砂子の場合は着物だから仕方がないが、俺はやる気無さ過ぎである。でもなあ、俺が行っても魔法でドアをあけてやることはできないのだ。なにせ、まだ十六歳。学校やめたといえど、一応魔法使いではある訳で、成人するまで使ったらいけないのだ。

皆で集合して意見交換をしているけど、まあ当然まとまる事はない。各々得意分野は違うし、互いのことをあまり信頼していない。ジョンが悪魔を呼び出したとか、なんて言っているのを聞きながら、俺はふと考える。魔女狩りって言ったら、こっちだな、と。
「ねえ、ジョンってエクソシストじゃん」
「はいです」
「魔女は狩るタイプ?狩らないタイプ?」
「へ……」
「またそれ?」
ジョンはぽかんとしてから、ジーンと一緒に苦笑した。
その間に真砂子はナルにナンパまがいなセリフを吐いていた。

次の日、黒田さんがまたしてもやってきた。というか、先に居た。
ナルとジーンは一応このあたりに居るはずなんだけど、よく入れたなあ。軽く感心しつつ、モニタやテープには触らないように一言そえる。まあ、すでに触ったあとなんだからもう触らなくていいだろうけど。
昨日の出来事を聞かれて素直に答えると、急に真砂子の悪口とか、襲われたとかいう話が始まってしまって肩をすくめる。なまじ彼女の性格を知っていてこれが嘘だという偏見があるもんだから、与太話を聞くのはちょっと疲れる。

ナルが丁度教室に戻って来て、律義に話を聞いて珍しく黒田さんの意向に沿う結論をだしたあと、綾子の祈祷が行われた。
祝詞を聞いている最中に、ひそひそと話しかけてみる。
「ねえ、ナルって霊感とかある?」
「僕はない」
「ジーンは?」
「さあな」
ジーンが答える前にナルがすっとぼけたので、この野郎と思いつつ別に霊感の有無について聞きたいわけじゃないので気を取り直す。
「じゃあ専門家の意見ってことで良いんだけど、霊感ある人って、霊にわかるもん?」
「どういう意味だ?」
「黒田さん、さっき霊感が強いから邪魔だって襲われたとか言ってたろ」
ナルは綾子を眺めたまま相槌をうつ。
「霊から見て霊感があるとか強いとか分かったら、世の中の霊能力者は大変だなーって」
「そうだな」
「綾子だって昨日、黒田さんに霊感はない、見たら分かるって言ってたよね」
俺もナルと同じように綾子の背中を眺める。
だって、真砂子やジーンは本物のはずなのに、綾子は特に真砂子のことを認めてないみたいだ。
まあ、見たら分かるって言うのはただ単に、子供が嘘をついていることを見抜いたっていう意味なのかもしれないけど。
「ならは、何を見て判断する?」
「いや俺霊感ないから、見ては判断できないよなあ〜。俺に見えないものを見ていて、それが正しかったら?かな」
でも結局それって全て検証できるわけじゃないしい、俺みたいなのが判断するのはその人が嘘をつくかつかないかだからあ、……だから綾子やナルたちみたいに普段関わってそうな人たちの考え方を聞いてるんじゃないかよう……。俺の意見を言わせる必要ある?
口を尖らせてぶーとナルを見やると、俺の考えに肯定も否定もせずに、数拍置いてから口を開く。
「霊が霊能力者の力量を感じ取り襲うという発想は、霊に聞いた事がないのでわからない」
そりゃそうだわな。
「霊能力者はある程度霊を寄せ付けない体質であると言われているんだ。じゃないとの言う通り、大変だろう」
ナルの奥からジーンが言った。
つまり、ジーンもある程度霊を退ける体質ではあるのだろう。なおかつ、自分の意志で引き寄せたり、寄り添う力があると。
「じゃ、黒田さんをあんな風に言って襲うのも、へんだね」
「おかしなことではあるが、あり得ないとは言わない」
「しんちょー」
軽く笑いながらナルを見ると涼しい顔をしていた。
「霊はシャイだから人がくるとなりを潜める半面、反発を起こして最初から行動をおこすタイプもいる。偶然ここに霊がいたとして黒田さんに反応して何かをした可能性も無くはないんだ」
「ああ、日本人はシャイだけど綾子とかぼーさんみたいに最初から攻撃的なタイプもいるもんな」
一概にはいえんなあ、と思いながら納得していると、ジーンが口元を抑えて顔を背けた。ナルはかすかな声で、まあそういうことだと同意したので今度は俺が笑いを堪える番だった。


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べ、べつにジーンの呼び方考えるのがしんどいからとか、そんなんじゃないです。
Oct 2016

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