My wiz. 08
ぼーさんが急にファンキーな格好をしてオフィスにやって来たと思ったら依頼だった。ならもっと普通の格好を……いや人の格好にケチ付けちゃだめだよね。魔法使いだって変なローブ着てる人多いし……そういえばロンのドレスローブすげかったなあ、結局アレはどこで入手してきたのか、どういう経緯でアレだったのか、ロンには聞けていない。だって傷口を穿り返してしまいそうだから。あいつらが大人になった時に一杯やりながら聞こうと思っている。
はやく、平和な日が来るといいなあ。
なんて、戦線離脱して平和な日本でぬくぬく過ごしている俺は無責任にも未来を思う。
依頼でやって来たのは湯浅高校と言う女子校で、おかしな事がたびたび起こっているのだとか、なんとか。うちのオフィスにも何人か依頼に来たけど、ナルがすげなく断り帰してしまった。
報酬は『志納』という形をとっているので要らないけど、調査にかかる経費は請求しているし、調べるとしたら多分学校を調べる事になるので、生徒が学校を調べてと言ってもこちらは受けようがないというわけだ。
今回はぼーさんが持って来たこともあり、なおかつ湯浅高校の校長が依頼に来たのでナルも受ける事になった。めでたし。
と、ここで終わるわけがなく調査が始まった。
ベースとなる会議室には生徒や先生がくるわくるわで、話を聞いてメモして対応していた俺達はとうとう、ため息を零す。それどころかぼーさんが絶叫までする。
「もう怖い話聞きたくないよう」
「おつかれ」
頭をごとんとテーブルの上に落としてぼやくと、ジーンが労ってくれた。
「皆は幽霊怖いって思った事ないの?」
「怖がってちゃしょうがないだろ」
「うーん、怖いとは違うかな」
ナルは聞いてないかのように書類を纏めているけど、ぼーさんとジーンが話に乗ってくれた。
「ぼーさんはぼーさんになる前はやっぱり怖かった?」
「覚えてねえなあ、もう慣れちまったし」
「ふうん。ジーンは?」
「よくわからなかった」
怖いとか、驚くとかじゃないんだ。ほーと感心した声を上げているとジーンは苦笑する。
「だから知りたいと思うのかな」
「でも結局、よくわかってないんだよね?」
「わかっていたらゴーストハントなんてやってない」
ようやくナルが、うんざりした声色で会話に入って来た。
「俺だったら無理〜、なんかもうそういうもんだって納得しちゃうもん」
「お前は本当に単純だな」
「羨ましいだろう」
「ああ、いっそ羨ましいくらいだ」
聞いた?といった感じでキラキラしながらジーンの方を見たが、微妙な顔をされた。
「全く褒められてないよ、今の」
分かってる。多分一生やってろって事だな。そして、羨ましいがそんな『馬鹿』と言う名の単純には死んでもなりたくないな、くらい思っていそうな。
お馬鹿さんじゃないので、そのくらいナルの思考は読めてるが、言葉だけでも優しくされたのでちょっとテンション上がった。可哀相な俺。
「———尋常じゃないな」
「え、俺のメンタルが?」
「違う、馬鹿」
「ハイ」
横でジーンがくすっと笑った。
ナルは窓の外を見ながら、相談件数の多さを嘆く。
単純に辟易したっていうよりも、異常な事態だという判断を下した感じだ。
「ぜったいに原因があるはずだ」
そう言いながら、ちらっとジーンを見た。何かまた内緒話でもしてんのかな。ちょっとそれ俺にも教えてよ、内緒にしとくからさあ。
二人を交互に見ていたらナルと目が合い逸らされた。まさか本当にテレパシーしてました?邪魔してごめんね。
「んで、この異常事態にどうするよ、ナルちゃん」
「人を集めよう」
ぼーさんが指示を仰ぐと、ナルはすぐに答えを出した。もう脳内会議は終わったらしい。
次の日真砂子と綾子とジョンとリンさんがやって来た。
二人組になって校舎内を見て回るってんで、組み分けをされたが俺は案の定リンさんとベースでお留守番だ。本当だったら多分ナルとリンさんが一緒なんだろうけど、ナルはジーンと一緒にまわるという。まあ、ジーンが見て気がついた事をナルに伝えれば早いんだろうから良いけど。
いまだに、リンさんとまともに会話をしたことがないんだよなあ。事務的なことならともかく。良いお天気ですねとかいっても、数秒躊躇ったあとにはいって返事をされるか聞こえなかった振りをされるかだろうし、と考えていたらぼーさんのファンというタカがベースにやって来た。
「びっくりしたあ」
「ごめんごめん、なにやってんのー?」
静かすぎる環境で、何の前触れなくドアがあいたことで俺の意識は思い切り揺れた。
びくっと身体が震えちゃったのではずかしい。
笑いながら寄って来るタカは向かいにさっと座って、俺が纏めていた書類を眺める。
「これ、ぜーんぶ学校の事件?」
「うん」
すごーいと眉を引き上げるタカに苦笑する。
「どうなってんだろうね、この学校」
「ほーんと。タタリに幽霊に超能力でしょ、あとUFOがくれば」
「超能力?」
はたりと動かしていた手を止める。
なんかぴんときた。
「そんなの聞いた事ないと思うけど。ね、リンさん」
「そうですね」
一応リンさんの方を向いて確認をとると返答があった。
「ナルたち呼び戻して聞いた方が良いと思う?」
「その方が良いと思います」
小さく頷いたリンさんに頷きかえして、インカムのスイッチを入れた。
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展開は略すけどどうでも良い事はやたら書きます。
Nov 2016