I am.


My wiz. 14

後味の悪い事件だった、と言うのが皆の感想だった。
綾子は相変わらずすっぱり割り切っちゃってて、もうどうでもいいじゃんって感じになってるけど。
すっかり退院して元気になった……のかはわかんないけど、涼しい顔をしているナルが急に俺達がお茶してるところにやってきて、俺を名指しで呼ぶ。
うるさいって言われるならわかるけど、うるさいのは主に俺じゃないので多分違う……はず。


「なにこれ?」
「サイ能力のテスト」
実験に協力しろと言われて渡された妙ちきりんな機械を持って、首を傾げた。
ルールを説明されたが、なんだって俺がこんなことを。あ、麻衣ちゃんやってたか。でも俺は別に勘の良いことを言ってたわけでもないんだけどなあ。言ってたとしても多分、知識があったという、ESPだかそうじゃないんだかわからない能力でして。
「なんで俺……」
言いかけてあっと口を抑える。
あまりにいつも通りで忘れてたけど、守護霊だしてた。
「ハイ」
ギロっと睨まれたのですんっと大人しくなってボタンに向き合う。

「あれ?……光らない」
「故障か……?」
ジーンとナルが二人揃って機械を覗き込んでる。少し離れたところでぼーさんや綾子がこっちを見てるけど、スタートしないんじゃ興味がわかないようで話に花を咲かせている。
「ちょっとかしてみて」
ジーンが試しにスタートさせてボタンを押すと光った。
え、光るじゃん。皆して首を傾げ、もう一度俺に渡される。
「光んない……」
「なぜ?」
俺に聞かれてもな。
ナルがもう一度俺から機械を取り上げてやりなおし、自分でボタンを押していた。光ってるやんけ。
「ありゃ、相性悪いね。……俺、機械類駄目なところあるから」
そういえばホグワーツは電子機器類が使えないとか言うし……、魔法と機械は相性が悪いんだっけ?
あ、霊障と機械も相性悪いよね。まあ別次元のエネルギーだからかもしんないけど。
「調査んとき、カメラは操作できてたろ?」
「うん、別にテレビのスイッチ入れたり、クーラー付けたり、そういうこともできるけどさ」
いよいよ俺にだけこの機械が使えないとわかって、ぼーさんは興味深そうに身体をこっちに向けて話に入って来る。
「測定は諦めて」
どの程度駄目で、どの程度大丈夫なのかは、正直俺にも分からない。
まあ、ESPを計られないようにっていうことなのかも。
にこっと笑うと、ナルが不機嫌そうにむすっとした。
「っていうか、何でのテストなんてやってんのよ、この子一般人でしょ」
「なんなら綾子のテストでもやったらどうだ?こいつ今の所なんもやってないし」
「ちょっと!!」
「───は、やけに勘が良いから」
綾子が鼻で笑うと、今度はそれをぼーさんが笑う。ふざけてるのでこのまま話が流れたらいいなーと思っていたらジーンが呟く。
「勘の良いこと、言ったっけ?」
「まあ確かにな」
「は?別になんて役立たずじゃない」
聞き捨てならないぞ、そこの巫女……。
ぼーさんが頷いた意味は分からないけど。
「森下邸では霊の姿を見たり声を聞いたりしてるだろ?」
「それに、子供の霊が大勢居るとか、母親のふりをして求めている霊でもいるのかも、とか言っていた」
ぼーさんに続いて、ジーンが付け足した。
いやあ、あれはなんというか、何にも考えてなかったし。
「ただの馬鹿な発言ともとれるが、的を射ていることが多い」
ナルは少し考える様子を見せてから、ちらっとこっちを見た。守護霊はあくまで言わないようだけど、なんかあるってことは明らかにしておきたかったのかな。
、白い犬に、何か思い当たることは?」
「え?」
ナルめ裏切りよったなって思ったけど口にしたのはジーンだ。
知らんぷりをしたのが仇となったか。フクにジーンを呼びに行かせたもんな。
「ナルとがマンホールの中に落ちたとき、犬が僕を呼びに来たんだ……」
「なんじゃそりゃ」
「白い、犬……」
真砂子がぽつりと呟いたことで、視線がそっちに行く。
「どうかしはりました?」
「いえ、あたくしも見た事があるかもしれません。ほんとうに一瞬ですけれど」
「真砂子まで?いつのまに見てたわけ?あたしたち一緒に行動してたけど、そんなこと一言も言わなかったじゃない」
ナルがちらっと俺を見たけど、俺はあくまでよくわかんないよう〜って顔をして、皆に話をさせる。
「あたくしが見たのは、森下さんのお宅ですわ」
やっぱり真砂子は見てたのかー。目を瞑ってたと思ってたんだけど。
それとも肉眼じゃない感じで『視えた』なのか。霊媒ってどこで霊を見てるの。
「初めてお宅に入ったとき、あまりに霊が多くて困りましたの。けれど急に気が楽になったと思ったら、白く……銀色にも光る何かが霊を散らしてくれました」
「ふうん、それって犬だったの?」
何かが、とあの時言いかけてたけど、犬に見えてたのかな。そう思って純粋に質問をしてみる。真砂子はゆっくりと首を振って否定した。
「でもそれ以来、谷山さんの傍に犬の影を感じます」
「僕もだ。姿を一度見て以来、の傍に犬が居ると分かる。はっきりとは見えないけど」
霊媒二人が意見を交換してしまった。
「じゃあ俺の守護霊じゃん?」
ナルは約束守ってたけど、まあしょうがないか。
迎えに行かせた時にこうなるかもなーって思ってたし。いざとなったら皆の前でも出す気では居た。だって幽霊こわいもの。
「守護霊?ってーと、スピリチュアリズムか?」
「すぴりちゅありゅ?」
「言えてない、言えてない。いわば心霊主義ってやつで、人は肉体と霊魂からなっていて肉体が消滅しても霊魂は存在するっつって、現世の人間が死者、幽霊と交信できるって信じてる人たちのこったな」
「皆とは違うの?」
「んー、俺達は主義思想いろいろあるけど、そういう主義を掲げているっていうよりは、霊能力者の部類にはいるんだわな」
「俺は別に心霊主義を掲げてるわけでもないよ?」
「あー、そういうことじゃなくてだな」
「これにあまり難しい話をしないでくれ、話がこじれる」
ナルがそっと話を制した。し、失礼な。ぼーさんが俺にそういう主義の人なのかって聞いたわけじゃないのは分かってたよ。
「守護霊はキリスト教でも、日本の民間信仰でも言及されているから、はどうせそっちだろう」
「へい」
よくわからんが、民間信仰と言われればなんとなく分かる。ご先祖様が見守ってくれてるとか、そういうあれだろ。
「ただ、動物というのは珍しいな」
「そなの?」
「一般的に守護霊は人の形をとっているものが多いとされている。それと、霊格が高く、現世とは離れた霊界にいる為現世への干渉は難しい。だから……」
ジーンが説明をしながら、口ごもる。
「一般の霊能者……ましてや普通の人には、霊視することはできない」
ナルがジーンを補うように言った。
ジーンはとても見えるタイプの人って聞いたから見える可能性はなきにしもあらずだけど、真砂子はそんなでもないんだっけ。ナルなんてもっと見えない筈だし。
そもそも、フクは守護霊と言うが動物の霊ってわけじゃなく、むしろ俺の作り出した幻みたいなものだから、一般的なそれとは違う気もする。全部魔法です。


「んで、その守護霊がどうしたって?」
には自覚があるのか、聞きたくて。その様子だと、守護霊だと思ってはいるんだね」
「ああ、まあ、うーん、助けてくれるやつがいるのは知ってる」
ナルは一応約束を守って、俺が故意に出したことは言わなかったみたいだ。
ぼーさんまでジーンと同じように、意外そうに頷いている。
「じゃあ今回呪われて大した傷を負わなかったのも、それのお陰なわけね」
「そうかも」
綾子の言葉には曖昧に頷いておいた。


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守護霊調べてたら守護霊の種類として指導霊って出て来たので、ジーン本当に麻衣ちゃんの守護霊だったんや……!!!って思いました。
Nov 2016

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