I am.


My wiz. 16

俺達は地道な調査をしながら皆がくるのを待つことにした。
安原さんなんかはすっかり使われることに慣れてしまって、放課後生徒が帰宅しきってもベースに居る。
一方やってきた綾子はリンさんと一緒にくるなり文句垂れていた。……この差。
「とにかく、目撃数が多すぎて機材がたりない。今の所霊の存在はあるが、詳しく分かりそうなのは坂内くんという生徒のみ。明日は原さんに霊視をしてもらいながら、ぼーさんと松崎さんとジョンの三人で除霊にあたる」
「坂内くんは?」
「害はなさそうだけど……少し調べてみる必要がありそうだ」
坂内くんの名前を聞いた安原さんが一瞬目を見開いたけど何も言わない。
俺が坂内君の処遇を聞くと、ジーンが除霊の待ったをかけた。
「その他あいまいなものについては僕とリンが調査を行う。はここで情報の中継と整理」
ただし、何かあったら報告するように、だそうだ。
「はあい、呪われない事を祈りまあす」
ぴしっと敬礼してへらへら笑うと、ナルとジーンが少し黙り込んでからそれぞれため息を吐いた。なんですか、失礼な。
「え、谷山さん呪われたんですか?」
「前の事件でチョットネ」
「無神経なこと言ったからよ、自業自得」
「うるさいよ〜失言女王」
綾子にだけはいわれたくないのでぴしっと指をさすと、ぼーさんが口元を抑えて笑う。
「たしかにな……」
「ちょっと!どういう意味!?」
「仲良いなあ、あははは」
俺達のやり取りを見ていた安原さんはのほほんと笑っている。いつか安原さんもここに加わるんだよ……って思ったけどそういえばいつからだっけ。今回の調査は安原さんが一緒にいるんだったけど、その先も居たよね。バイトになるんだっけ。
「安原さんも調査手伝ってくれるの?」
そういえば、と思って首を傾げると、安原さんは思い出したようにあっと口を開いた。
「ええ、僕みたいなのでも雑用くらいできるかなと」
「それは助かるけど、……泊まるのは止した方が良いよ」
「一応、泊まるようにしてきたんですけど」
「うーん」
ちらっとナルの方を見る。
「残ってくださるのはありがたいですが、泊まり込みはやめたほうがいい。危険です」
「もちろん足手まといになるようなら言ってください、帰ります」
「そんなことないよお!!」
「……それでは、手を貸していただこうかな」
ちょっと黙ってようねとぼーさんに顔面を掴まれたので、ナルがちょっと笑いながら言ったところは声だけしか分からなかった。

電気のついていない廊下を安原さんとジーンと三人で歩く。
俺たちはナルに言われて機材の設置にきてるのだ。
「すごい機材ですね」
「ね、俺も驚いた」
は全然驚いてなかった記憶があるけど」
「あれ?そうだっけ」
三人してひとつふたつの荷物を持ってるので、安原さんは手に持った機材をまじまじと見てから苦笑した。
「そういえば谷山さんってどういう経緯でバイトしてるんですか?」
「安原さんと同じようなもんだよ。春頃にさ、学校に調査に来てたときに手伝ってそのまま」
「ああ、なんだか懐かしいね」
ジーンがとなりでくすくす笑った。あれからまだ一年も経ってないんだけど、たしかに懐かしさは感じる。
「どんな事件だったんですか?」
「うーん、うちの学校の旧校舎でおかしなことがおこって、解体工事が出来ないらしくて」
あの事件の事は基本口外しない約束だったけれど、安原さんは言いふらさないだろうし、あくまで黒田さんの名誉のために内緒なのでおおまかな事件内容は言ってもいいかなあ。
「学校の事情とか全然知らない状態だったんだけど、生徒に怪談聞いて来いとか鬼かと思った」
「ああ、入学してすぐじゃ辛いかもね」
安原さんが苦笑したけど、それどころじゃないと否定する。
「俺、前の学校の手続きが間に合わなくて登校遅れてんの。ナルとジーンは登校初日に会ったわけ」
「え!」
それはきついじゃん、という顔をした安原さんとともに、ジーンを見る。
なんで俺が手伝いに抜擢されたのか、聞いてみるのも良いかもなあと思っていた所で目的の教室についてしまい、会話は一次中断し、マイクの設置についてジーンの説明が始まった。
「最近の霊能者ってこんな機械を使うんですか?」
「うちは特別かな」
「ナルは霊能者じゃないんだっけ」
「うん、ゴーストハンター」
機材をせっせと設置しながら、安原さんの疑問に答えて行く。ゴーストハンターという言葉について安原さんは知っているというので、俺もジーンもしゃがんでいた体勢で振り向き安原さんを見上げた。
「めずらしい、知ってるなんて」
「うん……坂内が……」
安原さんは一度口ごもる。けれど説明を続けて、坂内くんがゴーストハンターになりたかったらしいということを零した。三年生のところにまで噂が流れて来るってどんだけ大事になったのかと思ったけど、多分彼が自殺した後の噂なんだろう。
ジーンの方を伺ってみると、どこか遠くを見ている。もしかしてそこにいるのかな。
「大丈夫?」
「……うん」
いつか、俺がされたようにジーンの指先を絡めとり握ってみる。
ジーンは冷たい指をしていて、俺の指を掴み返しながら、こっちを見ないまま返事をした。


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安原さんが所々敬語じゃないのを書きたくてしょうがないんです。
主人公は霊の夢などは見ません。口にする言葉が妙に当たっていて、それは前世の記憶や知識ではなく本当に勘で適当に言っているので、ESPじみたものがあるかもという。
Nov 2016

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