My wiz. 17
真砂子とジョンが到着して、真砂子の霊視の結果を聞いてみるとジーンと概ね同じ事を言っていた。多くの霊が彷徨っているけれど、浮遊霊のようなものばかりで意識は読み取りづらい。なおかつ、坂内君の霊だけははっきりと見える。
ジーンはそれに加えて、どこの霊が強そうだとか、もうちょっと細かい話をしていたかもしれないけど。
真砂子と綾子、ジョンとぼーさん、リンさんとナルは安原さんをつれて除霊と調査にベースを出て行った。
俺は中継役として、ジーンは危険かもしれない学校だから俺を一人にさせない為に残った。まあ俺は前回の調査で呪われたしな。もしかしたらぽっぽこぴーな俺の隣で霊視をしてろってことかもしれない。何せ俺はぽっぽこぴーなので気づかないと思われてる可能性ありだ。
作業が一段落した俺達は並んでパイプ椅子に座りながらぼんやりと前を向いている。
「昨日安原さんと話しててそういえばって思い出したんだけど、どうして俺を手伝いに呼んだの?」
「の学校の、旧校舎の時?」
「そう」
そっと隣を見ると、ジーンもゆっくりこっちを見て少しだけ笑った。
それから困ったような顔をして、口ごもる。
「知ってる人に似てたから」
「似てただけで?……っていうか名乗る前に俺の名前を知ってたのも、だからなんだ」
「うん、身内かと思って、女子生徒に聞いてみた」
あの子たちはその日が初対面だったから、当然知らなかっただろう。
「……俺に身内はいないよ」
「それも、聞いた」
「校長先生から?」
俺の家庭の事情を知っている生徒は居ないし、俺の担任はジーンと会っていない。暗示に集められたのは校長や教頭などの矢面に立つ先生ばかりだ。その中でも校長先生は俺を苦学生と認定する書類に判を押してるわけだから、まあわかるだろう。
ジーンは少し気まずそうに頷いた。
「別に、聞いた事は怒ってないよ?むしろ、バイトに雇ったのはそういう理由かなって思ってた」
「それだけじゃないけどね」
え、逆にそれ以外あったことに驚き。もしや知り合いに似てるからって理由で??
そもそも、知り合いに似てるって……イギリスで会ったときの事かな。また会えたらいいねって話をしたけど、思いっきり死の予言的なものをしちゃったので怪しいから、よく考えたら明かさないほうが良いじゃんって、確かめるのはやめておいたんだけど。
首を傾げて斜め上を睨んで考える。
待てよ?守護霊も出してるし、なんか色々当てちゃってる所為でESP能力あるって思われてるし、しょうがない気がして来た。
頭をかしかしと掻いてからふーと息を吐く。
「あのさ、もっと遡ったこと聞いて良い?」
「?うん」
「どうして日本に来たの?」
えっと呟いたジーンは目を見張り、何かを言いかける。
その瞬間に会議室のドアが開き、そこには安原さんが立っていた。
今まさに、ジーンが俺の腕を掴もうとしていた体勢だったので、急に入って来た安原さんに驚く俺達と、俺達の体勢に驚く安原さん。
「お邪魔しました……?」
「待って待って待って!違うから!」
ゆるゆると戸を閉めようとする安原さんに手を伸ばして引き止める。
ジーンはぽかーんとしちゃってて使いものにならない。おい、お前も引き止めろ。
「安原さん作業終わったの?」
「うん、頼まれた分は……コーヒーいれますね」
「あ、俺いれるよ、ジーンも飲むよね」
「いいですよ、弟子としてはこれくらい」
あくまで一番下っ端を自称する安原さんはインスタントのコーヒーを手ににっこり笑う。
ジーンくんさっきから黙り込んでるけど、コーヒーできたよ。
まあ勿論俺が際どい話をしたから驚いてるんだろうし、安原さんの前で話を続けることはできない。
なので俺は安原さんとコーヒーを飲みながらほっこりと世間話……と見せかけてちゃんとお仕事の話をすることにした。
「ヲリキリ様って、なんでヲリキリ様なの?」
「さあ?僕も分からないですね。権現さまとかキューピット様と同じなんじゃ……」
「でもヲリキリ様ってどういう意味だろうね、聞いた事ないや」
「僕も。ルールも結構普通とは違うんですよ、決まりや呪文とかがあって」
「へえ、呪文」
安原さんはうろ覚えの呪文をもにょもにょいうけど、俺は勿論、静かにコーヒーを飲んでいるジーンも分からない様子だった。
ぼーさんとジョンが戻って来て、俺達のコーヒーブレイクはのびる。やったあ。
安原さんったら二人が戻って来るとさりげなく立ち上がってすぐにコーヒーの準備するんだから、卒ないなあ。
「しっかし真砂子があれじゃ困ったな。本人はみえなくてもわかるって言い張ってるけどどうだか」
「ナルは日本じゃ一流だっていってたじゃん」
「んー……真砂子は口寄せが得意なんだよなー」
俺は専門的知識がないのでぼーさんとジョンの話をぼけーっとしながら聞いている。安原さんは俺以上に分からないみたいで、首を傾げた。分かる所は俺も教えておく。
ジーンの名前がちょろっと出たけど、誰もこっちを見なかった。
「霊媒の中には予言や当てものが得意な人もいてます……そうゆうのは霊媒ゆうよりも、ESPである可能性が高いんやないかて博士はいうてはるんです」
「……真砂子は予言も当てものも得意だったな」
ぼーさんは顎を撫でながら考える。けど頭を使うのはナルに任せようと諦めた。
「っちゅーわけで、おまえなにか分からないか」
「何で俺?」
「お前も微妙にESPだろ?」
「測定できなかったじゃん」
「測定不可能ってところがまた怪しいだろうが」
「こじつけ!」
俺は全く麻衣ちゃんパワーなんぞを発揮していないので、ヒントになるような事は何も見てない。
夢とか見ないもんな。そもそもあれはジーンが導いてくれて見てた感じだったし、ジーンが俺に干渉するのは死んでしまって波長が少しずれたからで……。生きているジーンが俺の指導霊ってやつになることはないわけだ。
「俺には守護霊のわんちゃんしかいないから」
「駄目か〜」
ぼーさんは頭を抱えてしまった。
どうやら相当、調査が難航してるらしい。
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なぜカップケーキを買っていって俺だよ★しなかったかというと、バレてなさそうなら言わない方がいいのではと思い直したからです。結局諦めて言おうとしたらまたしても邪魔(?)が入りました。
主人公は退魔法習った方がいいとはいわれていません。いつも一緒にいるつもりでいたから。
ジーンはあの口ぶりからして退魔法が出来そうですよね。真砂子もなんか霊を避けるおまじないみたいなのしてたし。
Nov 2016