I am.


Sunrise. 03

夏休みに吉見家のおこぶ様と、廃校になった小学校の事件を解決した。後者は俺とナルとリンさんだけで行ったので他の皆は知らないけど。
「あら?麻衣ちゃんやないの」
ちょっとした依頼を受けて俺達はまたしても全員集まって外出していたんだけど、独特の訛と聞き覚えのある声が俺をよんだ。振り向けばジャージ姿の金色先輩が居て、その後ろには一氏先輩までいる。
「わー、お久しぶりです!なんでこんな所に?」
「部活やアホ、なんでおんねん自分」
「バイトです」
そういえば近くに総合公園あってテニスコートもあるとか聞いたな。
一氏先輩のキツい口調は悪意じゃないので全然気にせずそっかーと頷く。
「お、麻衣の友達か……?」
「そうそう、中学んときの先輩」
皆で車から降りて荷物を持とうとしてる所だったので、全員がこっちをみている。一番に口を開くのはぼーさんで、綾子は気づかないうちに俺の隣に並んでいた。
「麻衣ちゃん元気しとった?東京はどう?」
「元気ですよー、東京もまあまあ慣れましたわ、皆も来とるんですか?」
「来とるで、謙也なんかさっきまでここおったし」
「え、忍足先輩?めっちゃ会いたい〜」
横に並んだり口を開いた割に、先輩達との会話を止めてくる事が無かったので、俺はついついそのまま喋ってしまう。
「なーに、じゃあその先輩が麻衣の好きな子?」
ようやく話に入って来た綾子は面白いネタめっけとばかりにニヤニヤしてた。
「ちーがーいーまーすうー」
「せやね、麻衣ちゃんの彼氏は財前くんやもんね」
金色先輩はあえて煽ったので、綾子がひきつった顔で固まった。
綾子ちゃん今フリーだもんネ。
「麻衣……さっさと仕事にもどれ」
「はぁい。んじゃ先輩また会いましょー」
「またね」
「しっかり仕事せえよ」
いい加減おしゃべりしすぎって思ったのか、ナルからのお叱りが飛んで来たので俺は返事をしてから先輩達に挨拶をした。
安原さんは少し離れた所で手を動かしながらもこっちの会話を聞いていたようで、戻って来た俺ににっこり笑って声を掛けて来た。
「関西弁でしたね」
「あ、そうだったね、関西に居たときの知り合いと話すとやっぱり出ちゃうかも」
「なんか印象変わります、方言だと」
「そーお?俺の方言は似非だよ」
「親しみやすい感じっていうか」
「ええ……普段親しみにくい?」
「というより、いつも以上に懐っこいですよね」
懐っこいって、……いや、そうだけど、犬かよ。
「なんかわかる」
「せやですね」
ぼーさんが同意した横で、ジョンも控えめにこくりと頷いた。
確かに関西弁使うと気安い印象になるのかもしれないけど。

調査はあっけなく終了し、俺達は撤収するために荷物を持って車の方に向かっていた。
「お、麻衣ちゃんや。ホンマにおったんか」
「げ」
「久しぶりやなあ、元気にしとった?」
白石先輩と忍足先輩と財前の三人が一緒に居る所をすれ違ったので、俺は足を止める。先を歩いていた皆もまたかと足を止めてくれたので先行ってていいよって言っておく。財前は「げっ」てなんだ「げっ」て。
「麻衣ちゃん侑士と仲良うなったんやて?」
「え?ああ、侑士くんはなんだかんだよく会いますー」
「侑士くん!?」
「ホンマに侑士って呼んどったん……!?」
忍足先輩はイトコ同士でよく話すようで、俺と彼が今も交流を持っていることを知っているようだ。忍足さんと忍足先輩は呼び分けのために侑士くんと呼ぶようになったんだけど、謙也さんの方が下の名前で呼ばれてる事が多いせいか、白石先輩が驚いてるけど忍足先輩までショックを受けたような顔をした。
「ああ最初、侑士くんも俺のほうなんって驚いてたけど、その時一緒に居たのが侑士くんだったし、あの人、別に学校の先輩ちゃうし」
「なんか負けた気分や……」
「本人いない所で勝手に下の名前呼んでもねえ〜」
「ええんやで、謙也さんで……謙也クンならなおよしや」
「俺も下の名前でええで?麻衣ちゃん」
白石先輩がしれっと入って来たけど、そういえばと首を傾げる。
「白石先輩って下の名前なんだっけ?」
謙也さんは爆笑し、財前はふんと鼻で笑った。

五分もしないで別れたつもりだけど、なぜか皆が荷物を持ったまま俺を待ってた。リンさんとナルまで待ってるから、もしや俺の荷物を一番先にしまわなければならない奴だったのか?と思ったけど別にそんなはずはない。
重いのとかデカいのからしまうし、俺はそんなものは持ってない。 なんてったって俺は女子枠。
「先に行ってっていったのに」
誰も返事をしなかったけど、先に行ってると思ってた。
俺の一番傍に居た安原さんがまたしても、にこっと笑って口を開いた。
「あの黒髪の人が彼氏ですか?」
「え、なんでわかったの?名前呼んでないのに」
あ、いや、彼氏じゃないわ。訂正するのわすれた。
「ピアスがおそろいだったし、会話してないからなおさらそうかなって」
「……ひえーすごい」
「ラブラブですのね」
なんかちょっと刺々しい視線と口調で真砂子に言われた。
綾子はもうニヤニヤしてるから独り身ジェラシーはふっきれたようだけど……真砂子ちゃんは今更なのね。
いやラブラブか?あれ。
「あ、言い忘れたけど、別に付き合ってないデス」
「え」
俺はさすがに誤解をそのままにしとくつもりもないので笑って否定した。
財前はあの中で唯一の同級生で一番仲が良かった友達で、ピアスは彼からの貰い物をしてるだけなので、麻衣アンド光フォーエバーラブなアレではない、と。
だいたい皆して人の彼氏の存在に驚きすぎだろうが。
俺ってばこんなにプリティー麻衣ちゃんなんだぞ、居てもおかしくないだろ。


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前の続きで、関西弁が関西に居たからっていうネタばらしネタから、大阪時代の友達に麻衣ちゃん麻衣ちゃんって言われれてなんやなんやって返す仲良さげな主人公をね、書こうと思っていました。財前くんとおそろピアスを未だにしているとか彼氏扱いなのは実のところおまけ。
普段から懐っこいのにさらにふにゃっとするから、みんなはちょっと寂しくなったりならなかったり。ギャップはそんなにないんだけど、すごくプライベートだなって感じていたらいいなって。
あとあえて謙也さんは忍足先輩で、忍足先輩は侑士くんにしてみたかった。妙なこだわり。
だが今後別に侑士くんは出ない
Sep 2016

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