I am.


27-CLUB. 02

ある日突然、妙なものが見え始めた。そう、幽霊です。すごくすごく、よく見える。普通の人間みたいな幽霊も居れば、まさに幽霊みたいなどんよりしたおかしい感じのあれもいる。普段は姿を消してるようだし、意識もフワフワみたいだから滅多に見ないんだけど、あっちの都合で現れてはぼそぼそ何か言ってたりするので、大変心臓に悪い。
27歳で死んで記憶を持ったまま生まれかわったから、音楽の才能が開花すんのかと思いきや霊感ばっちりとか何さ。
俺、今度こそ音楽の道に進みたいんだけど??
?だいじょうぶ?」
霊感とかいらねー……と思ってげっそりしてた俺の顔を覗き込んだのは双子の姉である麻衣だ。
「麻衣?」
「?なに、珍しいね、麻衣なんて」
へへへっと笑う姉ちゃんに、俺は目を白黒させた。
「谷山麻衣!」
「おおお?なんだなんだぁ?」
がしっと肩を掴んだら、姉ちゃんは引きつった顔で笑った。
フルネーム知ってたし、もう十五年顔を合わせてるのに気がつかなかった。姉ちゃんって谷山麻衣と同姓同名じゃん。幽霊が見えるようになった所為か、姉ちゃんがゴーストハントの麻衣ちゃんにしか見えなくなって来た。
俺と言う弟が居る以外は境遇もまさにそのまま……。
高校の名前なんて知らないし確かめようがないんだけど、クラスに黒田さんって人居るかって聞いたら居るって……え?

桜が芽吹く季節、俺の変な才能が芽吹いて、変な世界がドンピシャした。はあ……なんてこったい。
霊が見えるからって、俺はゴーストハントなんかしないぞ……音楽の道に走るぞ!!


「は?助手ぅ?」
「うん!お願い、も来て!!!」
ある日の放課後、いきなり姉ちゃんが教室に来たと思ったら俺の腕を掴んで放さないし、おまけに俺をなんかの助手に引き込もうとしてる。廊下に連れて来られると、美少年が待ち構えていた。
「……だれ?」
いや、こっちのセリフなんですけど。
「あたしの双子の弟!連れてってもいい?」
「双子、ふうん、手は多い方が助かるけど」
「姉ちゃん何したの?」
とりあえず知らないふりして事情を聞くと、カメラを壊したあげくに彼の助手さんに怪我をさせたらしい。
「そそっかしいなあ、おまえは」
「あてっ」
頭をチョップすると、姉ちゃんは大げさに頭を抑えてほっぺを膨らませた。
美少年もといナルは偽名を名乗って簡単に自己紹介をしてくれて、俺は姉が粗相をして申し訳ないと謝った。そして心の中で姉をよろしくとか言ってみる。いや、お嫁に出すとかそういう意味でなく、部下として雇ってやってくれみたいな、長い付き合いになるだろうって気持ちね?

旧校舎の中にはいりながらびくびくしてる姉ちゃんは、ナルにここで棚を組み立てろって言われると頼りない顔で「〜〜!」って懇願する。
「それじゃおまえが機材を運ぶか?重い物で40キロ近くあるんだ」
「……棚でいいです」
「怖いなら代わってあげるよ、姉ちゃん」
「早く戻って来てね!」
40キロかあ、持てるかなあ……。
無駄口叩いてたら怒られそうっていうか、嫌味が飛んでくるのが面倒なので俺は黙ってナルの後について行き、指示された荷物を持ってまた一緒に戻る。
それを繰り返してなんとか荷物を運び入れ終わったら、姉ちゃんがナルに機材について質問してる。俺は今日だけのつもりだから特に質問する気はない。
「あしたの放課後、車の所に」
「あしたは無理」
「なに?」
ナルはぴくっと眉を上げた。まって?俺別に悪い事してなくない?
確かに姉ちゃんより使い勝手は良いだろうさ、男手だし。
「バイトあるから」
「えっずっるーい!」
「いや、ずるくないだろ……」
手をひらひら振って降参ポーズをとると、ナルは溜め息を吐いている。俺はナルに借りがないからな。


次の日からは俺はバイトに行ってたので、他のメンバーを見る事はなかった。土曜は泊まりのバイトって言ってたけど結局夜には帰って来てて、日曜も朝から元気に学校に行った。俺はその日はオフだったけど、ゴーストハントについてくつもりはさらさらなかったので姉ちゃんを見送るに留める。
しかし姉ちゃんは夜になっても中々帰って来ない。普通十時過ぎにまでなるか?って思ったけどよく考えたら下駄箱の下敷きになるんだったよな……。

姉ちゃんの帰りを待ってる間についうたた寝をしちゃったらしく、変な夢を見た。優しい顔したナルが俺を揺さぶって起こしている。
「ええええぇぇ……」
夢の中で目をさました俺は、思わず頭を抱えた。
ナルじゃなくてジーンだこれ。
霊感あるから俺の方に来たのかな?手っ取り早く姉ちゃんところいってくれないかな?
何をしに来たのかしらないけど、俺の頭を撫でてから消えた。そしたら今度は俺の傍で姉ちゃんが寝転がってたので、姉ちゃんの頭をぽんぽんした。今まさに下駄箱に潰されたのかこいつ。
「あれ、……」
「もう少し寝てな」
起こしちゃった、と思ったけど米神をくすぐるように撫でれば姉ちゃんはまた目を瞑った。
なんで俺ジーンの代わりにこんなことしてんの?


next.

一回くらい霊媒体質でやっておきたいなと魔が差した設定になっています。原作知識有り、初めての転生なので本編は関係ありません。
Dec 2015

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