27-CLUB. 08
東京について数日ほど経ったある日、俺はまたナルにお呼び出しを受けて姉ちゃんと三者面談的なものをしていた。この場合姉ちゃんが俺の保護者になるのか。なんか不思議だ。「それで、いつから認識していた?」
「あっはは……最初からデス」
「最初?」
姉ちゃんはきょとんとする。
「旧校舎の調査んとき、俺の夢みたろ」
「あー!!!あれただの夢だと思ってた!嘘、あのときから!?」
「そう。あれが初めて」
ナルは首を傾げていたけど、とりあえず順番に俺が覚えている限りを上げて行く。
「あとは礼美ちゃんとこ、女子校の呪い、安原さんの学校、今回のとこ、かな?」
「ほぼ全部じゃん!」
姉ちゃんは驚いて声を上げる。
「わかった、————リン」
「はい」
いつのまにか部屋の隅にいたらしいリンさんが何か機械を持って来て俺の前に置いた。「あ!これあたしもやったやつ」って姉ちゃんが言う。どうやら何時間も掛かるらしく、姉ちゃんはげっそりした顔をしているので俺もつられてげっそりする。まだやってないのに。
「……ぇ〜」
「う、うそぉ」
ぜ、全部当てちゃった。気持ちわる!これ俺の思考を予想してんじゃね!?
姉ちゃんにしがみついてぷるぷるする俺をよそに、今度は姉ちゃんとESPカードの実験だってナルに言われる。寝た方がいいのかな?って思ったけど全然眠くならないから適当に選んだら姉ちゃんも全部俺と同じカード選んでるし、うわ〜双子ってすげ〜。
さすがにテレパシーで喋り合うのはやり方わからないし無理だったけど。
ていうか今俺のテレパシーはどっちかっていうとジーンと近いっていうかなんていうか。
「やっぱり、の力だったんだなあ」
「へ?」
なが〜いテストを終えて、お茶を飲む時間を与えてもらった俺は姉ちゃんの一言に首を傾げる。
「いやいや、姉ちゃんに勘が備わってることは事実だと思うよ」
「そうかなぁ」
「テストだってしたろ?」
もともと校舎内を見たり、鬼火を見るのは、姉ちゃんにだって出来る筈だ。俺だってジーンに引っ張ってもらって見たのを、真似して姉ちゃんに見せている。嫌な感じがするのとか、気配を感じるのは多分姉ちゃんの方が上手にできると思う。俺は幽霊が見えるのと、今の所何がどうなっているのか知っているから有利なだけだ。
「まだ目覚めたてなんだから仕方ない。これから上手に使えるように練習すればいい」
「そだね」
調査の時には手伝えって言われたけど、ところがどっこい、夏の俺は引っ張りだこなので、ライブ活動とバイトに明け暮れて吉見家と学校の調査には参加しなかった。
もちろん姉ちゃんの夢には出たけどね。
ナルがオリヴァーさんで、ジーンの遺体が見つかって、ナルとリンさんがイギリスに一度帰ることになって送別会をする時にようやく顔を合わせたら恨み言を言われた。もちろんナルに。
調査手伝わなかったけど〜別に俺お前の部下じゃねーしィ。
でも大変な時期に「みんなぁ!今日は俺達のライブに来てくれてありがとー!!!俺達の魂の叫びを聴いてくれ!!」ってやってた俺は黙って俯いて嫌味を受け入れた。すいません……夏フィーバーしててすいません。でも俺のミュージックソウルが……夏はどうしても騒音の中にいたいと申すのだ。ジーンもごめん。別にジーンには恨まれてないけど。
そういえばジーン遺体見つかったのになんで居るの?しかも結構普通の浮遊霊になってナルの傍にいるし。
「僕、の守護霊にでもなろうかな」
「いや、間に合ってます」
「は?」
あ、ナルの嫌味中だったのわすれて、ジーンに答えちゃった。
ぱふっと手で口を覆うけど、ナルは怪訝そうな顔で俺をみてる。
「何?」
「の傍は心地いいんだ……歌も好きだし、もしかしたらの歌で成仏できるかもしれない」
あっそう!
ナルに被ってジーンが会話の邪魔をして来る。なんでこんなリアルタイムで現れるようになったんだ。
こんなフレンドリーで常にひっついてる霊は守護霊とは言わないだろう。
お前いつか悪霊にならないだろうな。俺とり殺されるのはごめんよ。
「それに僕とが一緒に居れば、他の霊は寄ってこないはずだよ」
うそつけ、お前と一緒に居たけどヴラドに捕まったわ。あ、でも、逆にジーンが居たからこそ俺の身も守られてたのかもしれない。うーん、考えるなあ。
「?」
「あーうん、いや、もうなんでもいいや」
俺が百面相してるのをナルが覗き込んで来たので、適当に返事をした。
なんでもいいや、は明らかにナルの小言に対するお返事じゃないんだけど。
「まあ、これからもよろしく〜」
ナルの肩をぽんぽん叩いて、うやむやにしてナルから離れた。
けど、ジーンは普通について来た。人前で話しかけないように練習しなきゃな。
next.
うすぼんやりした浮遊霊から、ライトな浮遊霊になりました、ぱんぱかぱん。
霊媒の霊と霊媒ってことで相性抜群なんじゃないですかね。(てきとう)
Dec 2015