I am.


Davis. 05

森下邸の依頼を受けて、三人は出かけて行った。
その間、オフィスでクーラーつけながら留守番をしつつ宿題をやる許可を貰ってるので万々歳だし、森下邸の調査以降は他の協力者達がわんさか事務所に集まるようになったので概ね予定通りって感じ。

蒸し暑い季節も終わり、涼しくなって来た頃には真砂子が俺に覚えの無い調査依頼を持ち込んで来たんだけど、真砂子に正体バレてある意味弱味を握られちゃってるナルは仕方なくそれに応じた。男女で歩いてると水が降ってくる公園があるらしいんだけど、つまり真砂子はナルとカップルの囮をやりたいってことでファイナルアンサー?「さんもいらっしゃるんでしょう?」とか言われたけど、あきらかに男手は足りてるじゃないですかあ。俺行かないよって言おうと思ったけどナルが「お前も来い」とか言い出したので次の日公園に集合になった。
仕方ねえ行ってやるか、という気持ちだった。……朝早くジーンとナルが部屋に押し掛けて来て、おばさんから持たされたらしい可愛いワンピースを手渡されるまではな。ルエラ曰く、「久々に娘の姿がみたい」……だそうです。
「真砂子とナルあたりで囮をやればいいじゃん」
「冗談じゃない」
お前なんか水かぶっちまえって思ってたのに、ナルは俺の悪意を感じ取ったのか先手を打ってきよった。まさかナル、俺と組もうてんじゃないよねえ?
「ジーンとで囮をして、僕と原さんとぼーさんで離れた所で見てる」
「酷くない?酷くない?」
いつのまにかぼーさんまで呼んでたらしいけど、もうそれはどうだって良いや。
にこにこなジーンに手を引かれ、久々の女装に身を包んで公園にやってきた仏頂面な俺を見て、真砂子はあんぐりと口を開け、ぼーさんは大笑いした。お前とペアになってやろうか!?

仕方なくジーンとベンチに座ってそれっぽく喋ってたら、急にジーンがはっとして、俺をひっぱって立たせてくれたので水は逃れられた。急な事だったからジーンにしがみついてしまい、その光景をみてた幽霊が真砂子に憑依してキレてたけど、ジーンとナルとぼーさんの説得により昇天していった。な、なんだったんだ、あの人は。

後日俺の女装姿は、写真を撮っていたぼーさんにより綾子やジョンに晒された。
、あたしのお下がりの洋服あげようか」
「イリマセン」
にまにま笑った綾子にお茶を出しながら答える。
「こんにちは。……あら、みなさんおいででしたの」
「いらっしゃい。仕事の話?ナル呼ぼうか」
「いいえ、お茶にお誘いしようと思って」
やってきた真砂子ににこっと笑うと、真砂子も小さく笑う。
今までも何度か真砂子がやって来てお出かけに誘われてナルが渋々出て行っていた事を思い出す。こういうときたいてい俺はナルに仕事をたくさん言いつけられてるので気にしてなかった。
「えー?無理よ無理!いくわけないじゃないあのナルが」
「いや、時々一緒に出かけてるよね、二人で」
綾子が茶化すように手を振ったところで、俺は首を傾げる。
「ええ、でも今日はさんを誘いに来たんですのよ」
「ん?俺?」
「いつお誘いに来ても、ナルにお仕事ふられてしまってたけど、今日は良さそうですわね」
ころころ笑った真砂子に、俺が一番ついて行けてない。
皆はむしろナルとお茶をしていたであろう真砂子にびっくりしてる。
「俺でいいなら付き合うけど」
「まあ、嬉しい」
ナルの相談とかしたいのかな?と思ってへらりと笑う。それならジーンとかの方が良い気がするんだけど、真砂子ってジーンにあんまり興味無いみたいなんだよねえ。やっぱナルが好きなんだなあ。
一応仕事中だからナルとジーンに少し出て来るって言おうと思ったところで、ナルがうるさいと言いに来た。後ろにはジーンもいて、俺と真砂子を見ながらきょとんとしている。
「こんにちは」
真砂子が余裕げに微笑んでナルとジーンに挨拶をした。あ、じゃあやっぱりナルとお茶行くかな?どうだろう。
「———、買い出しを頼みたい」
「あ、うん」
「ま、でしたらおともしますわ、さん」
「仕事の買い出しだから一人で行け、
「あ〜……またね、真砂子」
なんか不機嫌そうだから、俺はコートを掴んで外に出た。ある程度お金も持ってるし、買う物はあとで連絡がくるだろう。
結局買い出しは日用品の補充程度で、絶対なんかの八つ当たりだった。ゆるさん。



湯浅高校の依頼は学校がある日からだったので俺はついて行かなかったのに、なぜかよく変な夢をみるようになって学校中に変な鬼火みたいなのとか、マンホールの中が変だとか要らない情報を俺に与えて来るものだから、必要としているであろうジーンとナルにメールしたらなんと本当にあったらしく、調査から帰って来たナルに俺は変なテストをやらされ、見事に百発百中させてセンシティブっていう診断を受けてしまった。調査には毎回行かないし、麻衣ちゃんじゃないと思ってたんだけどなあ。

旧校舎以外で調査に連れて行かれたのは、緑陵高校の事件だった。まあ、クリスマスにジョンの知り合いの教会にも行ったけどあれは調査っぽくなかったかな。
俺にESPがあるってことになってたから、俺をユージン・デイヴィスの隠れ蓑にしたいらしい。へえへえ、やってさしあげますよう。
でも、俺の苗字がデイヴィスのままになってるのを忘れないで欲しいなあ。ナルたちが謎すぎて俺に視線は向かないけど、リンさん同様に俺はフルネームを名乗った事が無い。学校に通っている所を見られているわけだから、素性はちゃんとしてるっていう認識があるんだろうけどさ。

俺はジーンと二人で校内を見回って、ジーンが色々眉をしかめたり悲しげな顔をしたりするのを見学していた。
校舎内には喰らい合った人魂と、坂内くんがいるらしい。
念のため寝転がっても大丈夫な用務員室で、ナルに暗示をかけてもらってトランスに入った俺と、自分でやってきたジーンとでまた校舎を見る事になってる。目を覚ました俺の傍にはジーンも転がっていて、ナルは座って俺たちが目を覚ますのを待っていた。
「ジーンが言ってたとおり、喰い合って、大きくなってる。あと、更衣室にあったやつが放送室に動いてった」
報告すると、ナルもジーンもこくりと頷いた。ナルは了承、ジーンは同意だろう。
そのあと他のメンバーにも報告してから、カメラを放送室に置いた。案の定そこでボヤが起きて俺のお手柄的なものになってしまった。まあ、本当はジーンの方が優秀なんだけど。

俺が一人で居る時に襲われたり、保健室でジーンと待機してたけど危険だって気づいてすぐに出て行こうとしたら天井落っこちたり、色々事件があってとうとう帰れって言われる事になった。ナルとジーンは説得に行ってて、俺たちは基本的には待機だったんだけど、俺は昨日眠っている間に神社の夢を見たので安原さんに詳しい道を聞いて一人で行ってみることにした。
ヲリキリ様の用紙を持ってる人がいないから、仕方なく宮の下に潜り込む。なんか煤がついたけど、とりあえずゲットだぜ!ってベースに戻って来たら皆が揃っていた。
、どこに行ってたんだ」
「どろんこじゃないか」
いや、別に泥じゃないんだけど。脱走していた犬みたいな扱いやめてもらえます?俺ちょっと外に出て来るとは言ってあるし。過保護なお兄ちゃんってわけでもないだろうに。
ジーンが俺の顔周りにべたべた触って煤を擦る。
「んぐぅ、」
シャツで拭こうとまでしなくていいっつーの。
頭をぶるぶる振って、俺はナルとリンさんにヲリキリ様の紙を差し出した。

ジーンは霊視なだけで神社の夢なんて見てないというから、なんやかんやで俺はちゃんと一人でお手柄立てられたようだった。
それから生徒全員分のヒトガタを体育館にびっしり並べる作業を手伝わされた。ぼーさんとかにも手伝って貰おうよ〜。失敗する可能性もあるって言っても、責めたりしないよ〜。多分。



Înext.
今度はあえて女装で挑み、ジーンとペアになってもらいました。
Sep 2015

PAGE TOP