I am.


No, I'm not. 04


坊主の滝川さんと、巫女の松崎さんは、校長先生からの依頼でやってきたそう。
どうやら渋谷さんの事務所が渋谷の一等地に居を構えているからって、ある程度の期待を持って依頼してみたが、やってきたのか十七歳の若造だっつーもんだから、不安になって別の専門家を探して見つけてきたのが二人というわけだ。
俺はなんともいえずに、二人のあーだこーだを聞き、ついでに気になってたことも聞いてみる。
「黒田さんなんだって?」
「あの子、あんたの知り合い?」
「ここには悪い霊がいるんだってよ、そしたらこのねーちゃんが厳しいこと言って追い帰しちまった」
「ホントのことよ。あの子に霊なんて見えるわけないわ。単なる自己顕示欲、目立ちたがりね」
思いのほか拗れていたようで、ちょっとだけ罪悪感。
「それより谷山さん、クラスメイトから怪談聞いてきたんだろう───」
「お、おい、あれ」
渋谷さんがうんざりしながら話を戻そうとした時、滝川さんがなにやら慌てた声を出す。
反応の先に目を向けると、向こうから新たに二人やってくる。片方は俺の学校の校長先生だと思うが、もう一人は明らかに明るい金髪頭をした小柄な少年で───外国人だろう。
近くに来て微笑めば、顔立ちの違いや青い目もよくわかる。
「やあ、おそろいですな。もうひと方お着きになりましてね。ジョン・ブラウンさん」
仲良くやってくださいよーと軽々しく言う校長先生に紹介された。
ブラウンさんは柔和な顔立ちのまま、深く頭をさげて珍妙な関西弁で「もうかりまっか」と挨拶をかました。

エクソシストだというブラウンさんにも不名誉な自己紹介をしてから、渋谷さんがいいかけてた事を思い出す。
「まず怪談聞くんだよね?」
「ああ」
スマホで録音してきたのでそれを流す。
ブラウンさんや滝川さん、松崎さんもついでに聞いてくことにしたようだ。
「ありきたりね」
「ま、子供の好きそうな噂って感じだな」
「先輩から聞いたという、人魂が目撃された西側の教室にカメラを置いてみよう」
「はあい」
松崎さんと滝川さんの感想に比べて、渋谷さんは個人的な見解はない。まあ俺もただの怪談だなって思ってしまうので先の二人と同意見だけど。
とにかくなんの手掛かりもない今、この程度のことしか出来ないってことなんだろう。

霊能者はなぜか全員ぞろぞろと実験室についてきた。特に滝川さんと松崎さんは渋谷さんの持ち込んだ機材をすごいといいながらも馬鹿にしてる感じ。
結局、いい加減辟易してた渋谷さんに遊びに来たのかと問われて、気分を害して退室していった。
ブラウンさんだけは、おろおろして協力したいと言ってる。渋谷さんもこういった人のことは無下にしないらしい。
「じゃあ、西側の教室行ってくるね。カメラこれでいい?」
「ああ、インカム持っていけ。指示する」
「せやったらボクもお手伝いしてよろしいでっか?」
気を取り直してカメラを担いで三脚を脇に挟んだ俺を、渋谷さんは特に労わることなく見送るが、ブラウンさんがすぐに手伝いをかって出てくれた。
「じゃあ三脚お願いしてい?」
「へえ、まかしてください」
優しい笑顔にほっこりする。
こういう人が一人、バンドにいるといいよな。
「……音楽に興味ない?バンド組まない?」
「え!?」
聖職者なので、と割と真面目に断られた。
いいじゃないかよ聖職者でも……。



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ナルって呼ばれない話になります。
Sep.2022

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