I am.


Remember. I_03

夕方にはジョンが除霊をしてる最中に天井が落ちて来て、解散することになったんだけど……ナルは俺だけ手伝えと言って夜通し校舎のあちこちを計測させた。
そして朝、実験室に置いてた荷物をあらかた片づけて、一旦休憩しようと車内でウトウトしていたところ、車の窓がしきりに叩かれたことで眠れなくなる。
「おいっ、どーしたんだよ実験室!」
「なによボウヤ、もう帰る準備?」
ねかせてくれよ……と思いながら目を開けると、ナルも不機嫌そうに目を開けた。
「校舎内が危険だと判断したので荷物を片付けています」
「は?どういうことだ?」
ぼーさんはきょとっと首を傾げる。
ああ、仕事する流れ?コーヒー買って来ようかな……。そろっと人の群れから抜けるとナルがそれに気づいて「どこへいく」って嫌そうに聞いて来る。なに、逃げるなってこと?違うやい。
「コーヒー買って来る。飲む?」
「飲む」
そう言いながらお財布投げられたのでわーいとキャッチして車から離れた。

戻って来てコーヒーを飲んでいたら、黒田さんがやって来て今までの事全てが地盤沈下で説明がつくことをおしらせした。うん、すげーショックを受けてる。だろうね。
「……霊はいると思うけどな」
「なら、その証拠をあげてみてくれ」
「!」
黒田さんがまだ言うので、ナルはぴしゃりと言い放った。おい……霊がいる証明なんて、あんたでも難しい事させようってのか……。いやまあ、そこまで求めてないだろうけど。
ところがすぐに、見事なポルターガイストが起こった。
廊下や教室をバタバタを何かが走るような音だとか、ドアがひとりでに開閉したり、窓ガラスにひびが入ったり一部が割れたり。
一番の被害は窓の傍に居た黒田さん。俺は彼女を引き寄せたけど、既に若干ガラスを被っている。少し勢いが収まったのでガラスを割って外に出ようとしたらナルに先を越された。
外に出たときによく見てみたらナルの手が切れている。思わず手を掴んだ。
「怪我してる」
「平気だ」
「馬鹿!保健室!」
腕を掴んで保健室に引っ張っていくと、ぼーさんたちもついて来る。
心配もあるんだろうが、一番はナルの出した結論にケチをつける為だろう。
「いまのはりっぱなポルターガイストだろ?壁を叩く音もしたぜ、歪んだどころじゃねえ」
なんか責めるようにナルに言ってるけど、ぼーさん、それは違うだろうよ。
「ポルターガイストがおこったのは、今のが初めてでしょ?」
「は?」
なにってんの?みたいな顔をぼーさんと綾子からされる。ついでにナルまで俺の事をじっと見てる。
だってさあ、ナルを責められるのはイヤだったんだよう。
「あとで残ってたカメラの映像を見てみよーね、なんか違いがあるかもしれないしね」
「なによ、素人がいっちょまえなこと言っちゃって……」
ナルの手当てをしながらの俺の言い分に、綾子がふんっと息を吐く。
「はい、でーきーた。手でガラスなんて割るんじゃないよ」
ネットをはめたのでぱっと手を離すと、ナルは若干不機嫌な顔をしてる。
「───この件に関して、ひとつ確かめたい事ができた」
「ん?うん」

そう言ったナルは、しばらく留守にすると告げて消えた。



一度家に帰った筈の黒田さんは夜になったらまた現れた。そしたらまたポルターガイストが起きて、次は俺が巻き込まれて下駄箱に埋もれた。「あ、あったかい……」といかいいながら意識を失い、再び目をさましたのは、朝の五時だった。
「徹夜してた分もあって超寝てた、ごめんね」
「あ、そういやそうか。ご愁傷サマ」
ぼーさんが俺に純粋に同情っていうか、ナルの行動に関して色々思ってたみたいで苦笑する。
あの人、俺を"雇ってる"からガンガン使うんだ。俺がお金を欲してることは、初対面時の求人情報誌というアイテムにより見抜かれていたわけで。……ってのは言えないので軽く笑っておく。

一度家に帰って着替えてから登校すると、俺たちが旧校舎で霊かなんかに襲われたって言う話題でもちきりだ。
何故なら黒田さんが登校してきた生徒に次々語って聞かせているから。
彼女自身怪我を負ったし、俺が巻き込まれたことで証人もできた。
俺と黒田さんはいろんな人の注目を浴び、朝のHRの為に先生がくるまでクラスメイトに取り囲まれる羽目になった。
そしてようやく来た担任は、HRを始める前に俺と黒田さんに校長室へ行くように指示をした。
行ってみればナルが居て、ほかの霊能者たちも呼び出され、一斉に暗示をかけられた。
俺って暗示だという事を知ってるんだが、かかるもんなんだろうか。まあ、最悪黒田さんにかかっていて成功すればいいだろう、と諦めてナルの声に聴き入るようにして目を瞑った。


放課後いつも通りに旧校舎に向かったら、ナルは俺が置いておいたレコーダーの音を聞いていたらしい。おもしろい音が入ってるそーです。
あと下駄箱はあったかかったと答えたら、案の定皮肉な感じで「よく覚えていたな」と言われた。褒められてんだか貶されてんだか。


「さて、機材をおく」
……ですよね。
そう思っていたところで、ふら〜っとやって来たのはジョンだった。
「こんにちは、あれ、他の方は居らへんのですね」
「ヨーシ!ガンバロ!」
俺はジョンの隣に立ってがしっと肩を掴み、開いてる方の手をわざと大きく掲げた。はい?って感じできょとんとしてるジョンは、ナルの指示を聞いてる俺と同様に当たり前のように手伝ってくれた。これが奉仕の精神というやつか……。

ベニヤ板で実験室の窓とドアを全部塞ぐ作業は男三人なのでそこそこなスピードで終わった。そこにサインを書くように指示されたんだけど、ジョンの文字かっくいい……筆記体かっくいい。
「ねえねえ、俺の名前も書いてみて」
「え?」
「ここはお前のスケッチブックじゃないんだが」
俺がジョンに絡んでるとナルがため息まじりに注意して来る。いいじゃんケチ。
ジョンは日本語まあまあ読めるっぽい所あるけど、字も書けるのかな?ちょっと下手な字だったらどうしよう。ときめかない自信がない。
でもこれ以上ジョンに絡んでるとナルにトンカチでごっつんこされそうなので黙る。



次の日ナルの実験結果と解説は行われ、俺たちは若干ほんわかしつつ解散となった。皆は機材ないからいいよね。俺はリンさんにガン無視されながらお片づけ手伝ったんだから。……もちろんちゃんと謝ってはあるんだよ?
謝っても許したくないというならもう仕方がないけど。
、番号」
「うん?口座の?」
「……わかるのか?」
「ううん」
帰り際にナルに言われて、俺は首を傾げた。わかるわけねえじゃん。
どうやらナルは電話番号を教えろって意味だったらしくて、ポケットから携帯を出していた。
電話番号読み上げるとナルは手早く打ち込み、確認のためにかけたみたいで俺の右ポケットが震えた。
「あ、きた」
「20時くらい、電話する」
「はーい。じゃ、おつかれー」
ひらひら手を振って、ナルが車に乗り込むのを見届けてから校舎に戻った。
その日の午後校舎は倒壊して、夜にかかって来た電話でナルに「危機一髪だったねえ」と言ってもつまんなそうな返事をされた。



next.

相変わらず携帯電話はありの設定です。無い方が多分状況的に盛り上がるんだろうけど、便利だから出します。
ジョンに名前書いてっておねだりしたい。ジョンのサイン欲しいです。使い終わった板ください……。
本編はチート能力になってしまったところあるので、あえて原作知識有りなだけのド一般人です。ジーンにも会ってない。
Sep.2015
Aug.2023加筆修正

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