Loose.


07

警察というか政府がキラに屈し、俺達は警察としてキラを追う事を禁じられた。また、業務時間中にLと行動を共にする事などもってのほかということで、局長と模木さんはすぐに竜崎さんの所に残ると決めた。「相沢、松田、まだキラを追う気があるなら私と模木とともに、今から警察庁に辞表を出しに行くんだ」
「!?」
「もう警察を辞めなければ本気でキラを追う事はできない」
竜崎さんは皆警察に戻れと言うけど、模木さんも局長も戻る気はなく、迷っているのは相沢さんだけだ。彼にはまだ小さな子供もいるし、無理だろう。
ところが竜崎さんは俺達が警察をやめるなら一般人となり、大した力にはならないとまで言った。わざとかもしれないが、ちょびっと傷つく。
局長が、自分たちの気持ちはどうなると言募り選ぶ権利を与えられた。
無職になるということ、キラを捕まえた後はどうするのか、相沢さんはそれを気にかけたが局長は清々しい顔で再就職だな、と笑うのでほっこりした。すごいなあ、この人は。
「ぼくも警察辞めて、残ります」
「松田……」
「せっかく新しく分かったこともあるし、ここでやめたいとは思いません。まあミサのマネージャーもあるので無職にはならないかな……あはは」
後頭部を掻きながら、それでいいのかと言いたげな相沢さんと局長を見る。
「もともと、警察庁に居ることにこだわりがあったわけじゃないし、キラの正体を見たいというのが、今の一番の望みです」
にへっと笑って決意をした後、残るのは相沢さんのみだ。
竜崎さんはわざと、俺達の生活保障を言わなかったんだろうけどその理由が相沢さんや俺達の信念や本音を試していたのか、それとも自分から言わないタイプだからなのか、それは結局不明だ。もしかしたら、ただ皆警察に戻るべきだと考えてのことなのかもしれないけど。


元々少ない人数だったのがまた減ってしまって、俺の与太話に付き合ってくれる人が居なくなった。といっても相沢さんは俺を窘める方だったのでむしろ変な話をするのは竜崎さんの方が多かったけど。
模木さんは地味で堅実的な作業が得意で、ヨツバグループの社員30万人を平気な顔してリストアップしてきた。いやあ、俺も頑張らなきゃ……と思ったところでミサのマネージャー業務が入る。俺の刑事としての地位が……あ、もう刑事じゃなかったわ。
じゃあ本格的に俺ただのマネージャーじゃん。じゃあ頑張ろう……。
「マッツーロケ行くよ〜」
「はーい。車回してきまーす」
そのまま俺はミサと仕事に行き、映画の撮影中なので皆と捜査するというよりはミサのロケを見てる方が多かった。
数日後には詐欺師や泥棒といった協力者まででてきて、ひえーキャラ濃い〜とか思った。
俺あんま役たってねーな、いや、でもそういうものな気がする……。俺が居なかったら居なかったでミサのマネージャーをする人を選出しなくちゃいけないしそしたら皆の仕事が増えてしまう。やる気なくしちゃ駄目だよな。それに辞めたらキラの正体がわからなくなる。
と、言ってた矢先に俺はまず命の危険が迫っていた。ちょっとした出来心でヨツバ本社に侵入して、運良く会議の話を耳にして後をつけて会議を聞いてたら、あっさりメンバーに見つかった。誰を殺すかって話してるのを折角聞いたのに!


なんとか偽名を名乗ってミサのマネージャーだということをアピールしてみる。ごめんミサ〜。
別室で一応話だけでも聞いてやれと言われたので、こっそりベルトにつけたヘルプミーボタンをぽっちんした。後で怒られるなあ……相沢さんがどやしてくれるならまだ良いんだけど、残ってる人は荒々しく怒らないから、こう、ポンコツを見る目が俺を襲うはず……。主に竜崎さんからの。
二人程俺を監視する人がつき別室で荷物検査をしていたところ、竜崎さんが朝日を名乗って俺に電話をかけて来た。
「うん、家で一人。え?飲み……今月ちょっとピンチでさ……アハハ」
ごめん〜、と申し訳なくなって謝った。う……生きて帰れたら甘いものを差し入れたほうがいいだろうか……。
とりあえず時間稼ぎをしつつも、ミサをここに連れて来る方向になったのはもう本当ごめんなさいとしか言いようが無い。
ひそひそ話してるけど、内容までは聞こえない。多分殺す殺す絶対殺す的な話なので聞こえなくてよかった。


なんとかミサに興味を持ってもらい、竜崎さんの企てで俺は死んだフリを決行。
後日俺は偽名だけど新聞にのりました、お母さん。いや、死んでるけど。


捜査を辞めずにある意味唯一の職というミサのマネージャーを殉職してしまったわけなんだが、捜査の方に戻れたので悪くもないかなと思う事にする。
竜崎さんには今後ネチネチといじめられるかもしれないけど頑張る。


ヨツバのセキュリティは俺がこっそり忍び込むこともできたくらいなので、プロの泥棒には朝飯前だったらしく監視カメラは容易にとりつけられた。殺しの会議が始まると、竜崎さんはほんの少しだけ眉を顰めた。いっちゃわるいが、なんでこのくらいで眉を顰めたんだろうと思ったけどライトくんと局長が焦り出したのでなるほどこういうことかと理解する。
最終的に早まることもなく、ライトくんが落ち着いて殺人計画を延期させてくれたが、なんだかまた喧嘩が始まった。
「あー、こらこら、もうだめ、一回ずつやったでしょ、終わり!」
顔面を蹴る竜崎さんと、顔面を殴るライトくんがゆっくりと離れてファインティングポーズを作る間に入り込む。
竜崎さんを背に庇う形になっているが、向き合っているライトくんの方が話は通じると思ったからだ。


一応喧嘩はおさまったかと思ったけど、竜崎さんは局長とライトくんの正義にはついて行けないと思ったのか……ある意味邪魔だったのか、別行動をとりたいと言い出す。
いや、まあわからんでもないけど。
「私は七人逮捕には反対ですからやるなら夜神さん達の責任でお願いします。私は私でキラを追う。期限は一ヶ月……どっちが早いかですね」
のっそりイスを降りた竜崎さんはちらりと俺を見た。
「そうだ、松田さんをお借りしても良いですか?」
「エッナンデ?」
自分の身体を抱きしめて問うと、竜崎さんは特に理由を言わずにぺたぺた歩く。繋がってるライトくんもそれについて行くことになるので、俺は一応追いかける事にした。
なんか、急に二対三になっちゃったじゃん、局長可哀相。
「どこ行くんだ?」
「弥の部屋です。すみませんライトくんもお父さん側だとわかってますが手錠は外せないので付き合ってもらいます」
「ねえ俺は?俺は?」
俺はほぼガン無視のまま、ミサが竜崎さんとライトくんと三人で友達〜といって円になってるのまで見せつけられた。これはあれですか……お仕置きの一種ですか。
「四人力合わせてキラ逮捕!!」
「いえそれが……夜神くんは私と違う捜査方法をお父さん達ととるようで、私とミサさんとあれの三人ということに……」
「えっ、何それ……松はともかくライトが居ないとか嫌〜」
なんだかんだ一応人数に数えていたようだけど、凄いディスを受けて、俺は人差し指を突き合わせるしか出来ない。こんな大の大人を皆でよってたかっていじめて!俺をしゅんとさせて楽しいか!え!
「そもそも何で松田さんが問答無用で竜崎の方なんだ……」
「松田さんは見ててこっち側だと思ったので」
「……やり方が汚いぞ、竜崎。これじゃ僕はこっちの捜査にも加わるしか……」
「いえ結構ですよ」
「何言ってんのライトも参加決定ーっ」
局長おむかえにきてーーーーっ。



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たまにぞんざいな扱いもしたくなるんです。
Aug. 2016

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