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ライトくんはやっぱりキラなんだと思う。でも証拠が全く見つけられなくて、そうでなければ良いと思いながらも結局ライトくんを信じきれず、俺はふわふわした状態のまま捜査本部に身を置き続けた。キラ捜索本部でたった一人のポンコツが、唯一ライトくんを信じきってないことが気になるのかライトくんはよく俺に絡む。とくに二人きりの時は恋人ばりに甘い。
いや、お前ミサと同棲してるし、今までの浮き名も模木さんからちゃんと聞いてるからな。
ちなみに模木さんはなんとなく俺とライトくんが微妙な関係と言う事を察していて、たまーに心配そうな顔をされる。
大丈夫、奪われてない!……唇以外は。
ライトくんも暴挙に出たと思う。信じていない相手に惚れることはまずない。惚れさせれば信じるってこと?そういうのは少しでも惚れる可能性のある女の子になら試して良いかもしれないが、男の俺にそういう手段をとるのは違う。
ライトくんって別に悪か無いけど男に人気なタイプじゃないと思うんだよなあ。
Lの死から四年もすると、ライトくんは大学も警察学校も卒業して警察庁に入庁した。その間にアイバーやウエディ、ヨツバの社員なんかも一掃されてしまう。
世間も少し変わって、犯罪者の報道は本名や写真無しにするなどの方法をとったがインターネットに犯罪者のデータが流出し始めた。
「———しかし、インターネットの規制は現状不可能だし、キラ事件も行き詰まって久しい……」
「どんな理由であれど、ネットに勝手に人の顔をアップする人だって犯罪者だと思いますけどねえ……」
数年ぶりに夜神家を訪れたのはたまたまだった。ミサとライトくんが実家に顔を出すから父である局長……から出世した次長も家に帰ると言う。そしてそう言えばお前も来ないか、なんてことになって顔をだすことになったわけだ。
「またそんな話になってるの、やめてくださいよあなた、ライト」
奥さんが注意したと同時にリビングのドアが開き粧裕ちゃんが顔を出した。
「———松田さんですよね?お久しぶりですね。いつも父がお世話になってます」
「あ、覚えててくれたんだね。お久しぶりです、こちらこそいつもお世話になってます———それにしても粧裕ちゃん綺麗になったね」
前は中学生で、まあもちろん可愛かったけどーとにこにこ笑うと粧裕ちゃんはうふっと笑った。
「キャハハハ、マッツーおじさんくさーい」
「おじさん……!?」
こ、心は永遠の少年だもん。
ライトくんまでハハっと軽く笑ってる。
「粧裕は刑事の嫁には絶対やらんぞ」
「そうですよ、絶対嫌ですよ」
「く、口説いてないですよ!?それにぼく一回りくらい歳上ですから!」
俺は慌てて次長と奥さんを交互にみる。
「でも松田さんって全然おじさんに見えないし、素敵だと思います」
「ありがとうね、粧裕ちゃん。でも粧裕ちゃんからしたら最初にあったときでさえおじさんに見えたでしょ」
「いいえ、松田さんの事格好良いお兄さんだなって思いましたよ」
爽やかだわー女子大生、と眩しくなる。
「同年代だったら、絶対アタックしにいったのに」
やめて、これ以上俺を褒めないで……!上司の視線が痛いから!
「松田さん、別に言い返して良いんですよ」
「アハハ、そういえばマッツー意外とモテるもんね」
あわあわしている俺にフォローをいれてくれたのはライトくんで、意外とと付けてるがミサもなんだかんだ場の空気を変えてくれた。大丈夫です、彼女はいませんが、だからといって上司の娘に手を出そうなんて考えてないです。上司の息子 で手一杯です……!
「お兄ちゃんも就職したんだしこそこそ同棲なんてしてないで、早く結婚しなさいよね」
「良いこと言う〜」
そして一番話をひっくり返した粧裕ちゃんに内心盛大な拍手を送りながら、良い事言う〜と感想を抱く。口には出さないが笑顔で頷いておいた。
そんな一家団欒を目にしていると、我らが長官が誘拐されたという一報が入る。
誘拐されたのは多貴村長官で、犯人はノートと長官の交換を条件に提示した。
そのことでごたついてる時に限ってやってきた来客はFBIを名乗り、そちらもまたノートを所望する。最初は同一組織の犯行かと思ったが、そういえば新キャラって二人くらいいたっけと、うっすい記憶を呼び起こす。結局俺のフワフワな脳みそからは全然情報が出て来ないけど、その可能性もあるだろう。
ライトくんとミサの愛の巣という名のキラ捜査本部に集まって、話し合いの席はもたれ今日訪ねて来たFBIは一応本物だと言う事は確認された。
「父さんも気をつけた方がいい……いや、ここにいる全員だ」
振り向いたライトくんは真剣な眼差しでこちらを見る。
誘拐された長官はノートの事は知らなくても、俺達捜査員の名前くらいは知っているから狙われる可能性は十分にある。
「わーこわ、警察庁に寝泊まりしよ」
「なんだったらうちに泊っても良いですよ、松田さん」
にやっと笑うライトくんがちょっと怖いので、そんなご冗談をと言おうとしたらミサが可愛いワンピースで顔を出し、良い子で先に寝るねーと言いに来た。
「二人の愛の巣で寝る程神経図太くないよお」
断る材料いっぱいでほっとしちゃうわ。
あっはっはと笑い飛ばしたら、ライトくんは肩をすくめて視線を前に戻した。
一瞬和やかな空気になったけど、家族にも危険が及ぶかもしれないと言いかけた所でまた誘拐犯から連絡が入る。
ノートの交換は中止、多貴村長官は死亡、新たに誘拐されたのは粧裕ちゃんだった。
next.
アタックってまだ死語じゃない?大丈夫?
Aug. 2016