Platinum.


01

ひょんなことからクロウカードとかいう魔法のカードを集めることになった。封印の獣『ケルベロス』はちっこいぬいぐるみみたいな姿をしてて大層可愛いけど、魔術とかそのへんのことを聞いて凄く驚いた。
アニメでやってたやつだ。女の子向けの。

ケルベロスもといケロちゃんはこてこての関西弁で魔術やらクロウさんについての解説をしてて、俺はそれを聞きながらばたばた慌ただしくカードを集めることになった。
それにしても主人公とはいえ、本来はヒロインであるところに俺が居るのはちょっと解せない。『さくら』ちゃんの名前とか簡単なプロフィールはなんとなく知ってたけど、お父さんとお兄ちゃん見ててもそんなこと気づくわけないし。カードを目覚めさせるまでさくらちゃんとしての自覚は無かった。
ちなみに、三年生の頃から同じクラスの知世ちゃんにはバレた。たしかこの子、さくらちゃんの親友ポジで、衣装係だったような……。
「超絶かわいいですわー!!!!」
「あ、そ、そう」
さくらちゃんだったなら多分良いんだろうけど、俺はどういうわけかコスチュームを着せられてビデオを回されていた。それ、黒歴史やん。
ご丁寧に女物っぽいので、ショートパンツとかカボチャパンツ付きのスカートとかそう言う感じ。勘弁してよお!!!成人男性やってた記憶がある身としては恥ずかしい。百歩譲って子供だからまだ見られなくもないけど、カメラに撮られているなんて……。お兄ちゃんに見られたら何を言われるか……。
「あの、なんでこんな格好?」
「やはり特別なことをするときには、それなりの服を着るべきですわ!」
「だからって女物なんて」
「その方が作り甲斐があるんですもの!それに、とってもお似合いですわ」
力説されてるぅ。
たしかに俺はお母さん似らしいし、まだ子供だけど。
鏡を見ながら手で頬を包んでむむむっと睨めっこしてみる。リビングに日替わりで飾られてるお母さんの写真を思い浮かべてみても似てる自覚は無い。
派手好きのケロちゃんにも賛成されてるし、知世ちゃんは別に辞める気がない用なのでもう諦めてきゃわいい格好することにした。
まあ、知世ちゃんが魔法使ってる俺の映像を皆に見せびらかすなんてことはしないだろうしな。
使ってないシーンは見られるかも、というのはこの時すっぽ抜けていた。

転校生の李くんはぷんすかしながら俺に軽く決闘まがいなことをしかけてきたので、隣の高校から見てたお兄ちゃんが颯爽と現れて助けてくれた。かっこいいけど、一応同い年の男同士の喧嘩だったならお兄ちゃん出てきちゃ駄目なような……いやでも、一方的な敵意だから助かった。
李くんはお兄ちゃんにも負けじとじっとり睨んでたのに、全然怖くない雪兎さんに動揺してぴゅーっと逃げて行った。剣のカードを捕まえた後も敵対心ばりばりだったけど、またも雪兎さんが出て来たのでことなきを得た。奴の弱味ゲット!今度から困ったら雪兎さんとこ逃げよう。

ある程度カードが集まって来ると、占いが出来たり、予知夢を見ることが増えた。お兄ちゃんみたいに幽霊は見えないんだけど、勘ってやつが冴えていってるように思う。
だからといって日常生活に変わりはない。しいていうなら新しくきた観月先生が魔力持ってるっぽいことくらいかな。でも優しそうな人だし、お兄ちゃんも知り合いだから大丈夫だろう。

長い休みの日になると、お父さんが久々に遠出に連れてってくれるというので家族と雪兎さんと一緒に出掛けた。なんでも、お父さんの知り合いの数学を教えている教授さんの別荘なんだけど、この休みは海外に行くらしいから貸してくれるんだとか。すごいぶるじょあじぃ。いや、知世ちゃんもお母さんの実家も結構な資産家だったっけ。
小学生な俺はあそんどいでって言われてほっぽり出されたので、お父さんのいうさっき通りかかった大きな別荘を見物しに行ってみた。そこのおじいさんに見つかってしまって、一応挨拶してみたらお茶に誘われたのでへらへらつられて来た。次の日もよければって言われたし、お父さんも行っておいでって言うのでもう一度遊びに行く。綺麗なティーセットと、紳士風のおじいさんは様になっていて、ちょっとだけ場違いな感じがしてきた。でもお茶美味しい。
「そうしてると、孫が帰って来たみたいだよ。彼女は女の子だけれど」
「その子もここに来てるんですか?」
「ずいぶんまえに、天国へいってしまった」
「……ごめんなさい」
優しいまなざしを向けられれば嫌な気持ちもしないわけで、軽い気持ちで聞いてみたらとんだ地雷だった。ティーカップをおいてあやまると、おじいさんは俺を慰めてくれた。
「君は笑った顔が素敵だ」
そのあとお父さんが持たせてくれたクッキーをだすと、少し困ったような顔をしてからお父さんの話題を振って来た。とっても優しくて料理上手て格好良いお父さんなので存分に自慢すると、おじいさんは目をくしゃりとさせて笑ってから、クッキーを食べて美味しいといってくれた。
「そうだ、孫の部屋へいってみないかね?」
「え、いいんですか」
「きみに着てほしい物があるんだよ」
ちょっとした興味本位で頷いたけど、それに続いた言葉に嫌な予感がする。本気で嫌というわけじゃなくて…でも孫、女の子って言ってたじゃん。
部屋だって案の定な感じで、お嬢様テイストだし、かわいいなーとは思うけど別にこういう部屋に住みたいとか憧れるとかはないわけで。
わたされた着てほしい物もやっぱりお孫さんのドレスみたいなやつで。こっそり唇噛みつつ、コレはお茶のお礼!お茶のお礼!と言い聞かせて着た。知世ちゃんのコスチュームも大概アレだから大丈夫……。大丈夫。
もらってって念を押されたときは笑顔が引きつりそうになりましたけどね……。
なんか孫と重ねられてる。別にいいけどね?毎日お人形さんになってとか言われてるわけじゃないし、おじいさんが少しでも笑ってくれるなら俺はね。
フリッフリの格好で帰って来た俺に、お兄ちゃんもお父さんも雪兎さんもえってなってたけど、すぐににっこり笑ってお兄ちゃん以外は可愛いねって褒めてくれた。女の子の格好をしてるとますますお母さん似てみえるみたいで、お父さんが甘い笑顔をさらに甘くして可愛がってくれるので、あれこれもしかしたら使える?とか思いつつ何に使うかは特に決めてないので今後も別に家の中で女の子の格好をするつもりは無い。



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現代→CCさくらです。考えてはいたけどどうしようかなーって思ってて、でもCCどうですかって丁度言ってくださった方がいたので勝手にエンダァして書きました。
作品知識はうっっっすらあります。
Dec 2015

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