EndlessSeventeen


CapriciousBalloon 01(主人公視点)

何回こうして新しい場所に飛ばされただろうか。目を覚ますと決まって自分の部屋で、模様替えしたり引っ越したりしても前日まで住んでいた部屋ごと飛 ばされていて、それが一軒家になってたりアパートの一室になってたりと様々。
窓の外を眺めると、庭を見渡すことができ大きな一軒家の一室だとわかる。

ふ、とノックの音が聞こえベッドからのそりと降り、返事をしようと口を開きかけた所で扉の向こうの人物が声をあげた。

、ご飯を持ってきたわ』
「え?」

自分の名前が呼ばれたことは辛うじて理解できたけど、それ以降はなんて言っているか聞き取れなかった。多分英語だったと思う。
たじたじになってどうしようかと迷っていると、扉の向こうでカシャン、と音がしてまた話し声が呟かれた。

英語の成績は普通だったけど、いきなり本場の人が躊躇なしに喋っている言葉を聞きとるのは難しかった。
とりあえずどうしようかと思って狼狽え裸足でよたよたと扉に近づくと、向こう側で足音が遠ざかって階段が降りて行く音がした。


(あ・・おいてかれた)


カシャンという音は多分何かが置かれた音で、俺はおそるおそる扉を開けてみる。
足元にはパンと卵焼きとレタスとハムと牛乳……典型的な洋風朝ごはんが置いてある。

さっきの英語は多分俺を起こしに来たとか朝ごはんに呼びに来たんだろう。
それにしても、どうして最初から俺のを別々で用意してあるんだろう、と思いつつトレーを引きずりこんで部屋のベッドの上においてもそもそと食べた。

パンの乗ったお皿の下にメモが入っていて俺はそれを開く。
羊皮紙の厚めの紙で、ざらりとした手触り。


"Happy Birth Day"
誕生日おめでとう……という意味なのは一目瞭然。

"You are also 17 years old now."

あなた もまた……十七歳 今?

直訳すると訳が分からないので掴みで訳すと多分17歳になりましたね的なことだ。

"Please come out from the room in rare cases."

rare cases って、なんだろう……と思い携帯を開いて辞書機能を使ってみる。
幸いにもアプリにつながって辞書で調べることができた。

たまに、部屋を出てきてください……って意味になって、つまり俺はずっとここにひきこもっていたのだろうか。そもそもここがどこなのか分からない。出てき てねって言われても困る。
手紙は走り書きで、そのあとは筆記体がぐしゃーって繋がってて読めなかった。
辛うじて分かったのは、ご飯を一緒に食べましょう的な文だった。



ミルクを飲み干し、トレーをどうしたらよいか考えていた。
今までの俺はひきこもってたみたいだから、扉の外においておけば勝手に片しに来てくれるだろうと思い、スウェット姿のまま、俺は扉を普通にあけた。





『!』


扉を引くと、目の前には少年が1人いた。
驚き目を丸め、整った顔をした俺よりも幼い少年。
見たことがあるようなないような。

トリップするのは今までずっと知ってる世界だったからこの少年に既視感を覚えても不思議ではないのだけど、思いだせない。

だけど今はそんなことを考えている場合ではない。
扉を開けようとしていたという事は何かしら用があったのだろうか。
ひきこもりな俺と親しくでもしていた奇特な人なのかな。子供の好奇心で来たのか、からかいに来たのか、誕生日祝いでも言いに来たか。とにかくわからない。

俺は逃げよう、と悟りを開いたみたいな安らかな気分になり、固まった少年の足元にトレーを置いて、精一杯の良い発音で"Thank you"(ごちそうさま)と呟き扉を閉めた。



カシャンとトレーが置かれてはっと我に返った少年はぱくぱくと何かを言おうとして少々声をもらしていたけど、言われても理解できないから俺はとにかく関わ らないようにと少年を無視した。

2010-06-21