03 淡白な我が同胞
は、俺達とあまり関わろうとしない。嫌われているわけじゃないのは分かっているけど、俺達よりもパーシーと勉強したり、友達と行動するほうが多い。
子供の頃からそれは変わらなかった。一緒に遊ぶのが当たり前な俺達とは違って、だけは部屋の中にこもって本を読み耽っていた。
遊びに誘うと面倒くさそうにして、嫌だと言うことが殆どだった。しかたなく、俺達は両脇からを持ち上げて無理矢理外に連れ出した。
は抵抗するのも面倒くさいらしく、つれてきてしまえば一緒に居てくれた。まあ居るだけで遊びに付き合ってはくれないんだけど、俺達はそれでも満足だった。は傍にいてくれればいいんだ、俺達を見ていてくれればそれだけで。
と俺達は三つ子だというのに、双子と一人のようだった。
髪色も眸の色も体質も身長も同じなのに、似ていなかった。それはの行動力の無さが原因だった。
は同い年なのに俺達よりも細っこい。凄く小食だし、動かないから体力もない。クィディッチはもちろん、スポーツも一緒にやれたことが無い。だってにぶつかったら落としてしまいそうだったし。(そのくせ反射神経は良いみたいだから、本当はクィディッチを一緒にやりたかった)
ホグワーツに入学して、俺達が悪戯仕掛け人として有名になったとき、俺達は双子として有名になってしまった。それはとても耐えられないことだった。
も俺達の体の一部なんだから、そこを忘れられるわけにはいかない。
小さい頃と同じように、を無理矢理引っ張って悪戯に付き合わせた。は度々、パーシーやマクゴナガル先生やママにまで、俺達をどうにかできないのか、なんて言われているところを見て悪いけど嬉しかった。
俺達を三人揃って見てくれている。
相変わらず自分で走らないから俺達が引っ張るしかないけど、は悪戯に関して文句を言ってくることはなかった。疲れた、と言うのは、の何倍も俺達が疲れているのだから認めない。
悪戯をするために連れまわす時以外、は自分の部屋や談話室で読書をしたり、図書館へ行ったりして俺達に構ってくれないんだ。だから、俺達も悪戯に誘わないわけにはいかないわけだ。
「、新しいグッズを開発したんだ!」
「ちょっと見てくれよ!」
談話室で転寝をしかけていたを揺さぶって起こし、手を引いて部屋へ連れて行った。
うんうん、と生返事しか返さないが面白かったけれどきちんと起こさないと知恵を借りられない。は魔法薬や薬草や呪文に詳しいから時々手を借りている。最初は自分で考えなさいといわれていたけど、三年生になったあたりからはしぶしぶ助言をくれるようになった。
「うーん……この薬草はもうちょっと入れたほうがいいのと、あとは……最後は弱火でじっくり煎じること。あとはー……」
「「うんうん!」」
「解毒剤を作ってから試すこと……多分時間かかる」
「「そっかー」」
言い終えるなり、はうとうとと船を漕ぎ出す。のベッドまでは少し遠いし、眠い時は更に面倒くさがって動かないから、その場で寝ることが多い。
「なんだ、寝ちゃうのか?他の薬も見てもらおうと思ったのに!」
「おいおい、ここで寝たら風邪引くぞ」
「うん」
何に対してうんと言っているのかさっぱり分からない。
壁に寄りかかり膝を抱えて寝る体勢に入ったを仕方なく俺達は二人で抱えた。は驚くほど軽いから一人でも運べるけど、俺達はの取り合いにならないように二人でやるのだ。
「えう……」
「?起きたなら足動かしてくれよ」
「昨日寝なかったのか?」
持ち上げた時に声を漏らすに俺達は苦笑いしか出ない。は相変わらず動こうとせずに俺達に身を任せていた。
のベッドへ連れて行き寝かせると、ベッドの感触に安心したのかうずくまる。俺達はベッドの端に座って、の眠っている姿を見ていた。
とても面倒くさがりなは自分か身内のためしか動かない。
頭が良いから時折頼られているけど、面倒くさがって何もしない。だから、悪戯グッズに知恵を貸してくれるということは、にしてみたら最大限の優しさだ。
俺達はちゃんと、と兄弟なのだと実感できる。
なんていとしく、ささやかで、優しく幸せな日々だろう。
Sep.2011