06 不死鳥
セブルスに会い、リリーに会い、ジェームズやハリーに会った。その次は誰に会うのだろう。
わくわくする反面少しだけ恐怖感を感じることがあった。
(皆俺が見捨てた人々だから)
「ん?あれ?君はだれ?」
ジェームズは友達と出かけているらしくて、リリーはどうしても買い物に行かなければならなくなり、ハリーを連れて行けないから助けて。そんな理由で家に呼ばれた俺はハリーと一緒に昼寝をしていた。
タオルケットを掛けてあげて胸の上をぽんぽんと一定のリズムで叩きながら俺も眠ろうとしていたころ、外からちりんちりんと鐘がなった。リリーかなと思いながらハリーを残してドアを開けると見知らぬ……いや、知った顔が三つ。
「ただいま!リリーは?」
「お帰りジェームズ。リリーなら買い物だよ」
家に入ってくる鳶色の髪の人、黒髪の人、そしてジェームズ。
「ジェームズにこんなでかい子供がいたとはな……」
「いくつの時の子なんだろうね……この節操なし」
「そんなわけないだろ、シリウス、リーマス!!!」
僕の友達だよ、とすんなりと俺のことを紹介するジェームズ。
「———まあでも僕の子で、ハリーの兄みたいなもんさ」
付け加えてくれた言葉がくすぐったい。
あの頃はハリーを助けたくても助けられなかった。
双子を何よりも優先する為に可愛い弟たちを捨てたのだ。
白くてふっくらとした柔肌はかつて傷だらけになり、泥まみれになったのだろう。涙で濡れたのだろう。
可愛いハリー。リリーにそっくりな眸をキラキラさせて走ってくる姿に、いつだって心のどこかで罪悪感がうずいていた。
君を助けられたのに助けなかった俺をどうしてそんなに慕えるんだ、って。
「はじめまして、僕はリーマス」
「俺はシリウス。よろしく」
「よろしく、リーマス、シリウス」
爽やかな笑顔のリーマスと、少年みたいに目を細めて笑うシリウス。
かつては傷だらけの顔でやつれていた。かつては髭も剃れず顔も洗えず、薄暗い絶望の中で十年間を過ごした。そんな二人は今年相応に大人になって格好良くて、笑顔で、生きていた。
あまり仲良くしたことはなかったけど、不死鳥の騎士団に在籍していたのだから多少の交流はもちろんあった。
「そもそもどうやって知り合ったんだよ。こんな若い奴と接点なんてあんのか?」
「元はスネイプの友達だったんだよ」
「あのスニベルスのかよ?うげえ」
「全然そんな気がしないねえ」
シリウスもリーマスも俺をまじまじと見下ろしてジェームズに尋ねた。俺たちは十歳ほど離れているから端から見て交流があるのが不思議なのだろう。もとはセブルスとカフェで話していたことやリリーに会いそこから家にお邪魔するようになったという経緯を話すとリーマスはハリーを寝かしつけている俺をみて微笑んでいた。
すっかり眠ったハリーにタオルケットをかけ直して三人が居るテーブルの方へ近づいた。シリウスも悪い奴にはみえねえもんなと頷いていて、ジェームズはセブルスの友達じゃなくて僕の友達なんだから当たり前さと鼻歌を歌った。
「ジェームズ達は今日何処へ出かけてたの?」
「スポーツ観戦だよ!今度も一緒に行こう」
「俺まで行っちゃったらハリーの面倒はリリーだけで見なくちゃいけなくなっちゃうよ」
じゃあハリーも連れて行く、とジェームズが笑った。確かにジェームズとハリーは似ているから一緒に楽しめる気がする。もう少し大きくなってからの方が良いだろうけど、こんだけ大人が居れば大丈夫だろうか。
リリーにも女友達と遊ぶ時間が必要だと思うしね、とウインクしたリーマスはこの中で一番落ち着いていて優しい大人だと思った。
もう悲しい思いはしなくていい人々を見て、俺はそっと胸を撫で下ろした。
シリアスターン。
Mar.2013