harujion

Last Memento

02 粧裕
(粧裕視点)

くんは私の二番目のお兄ちゃん。お兄ちゃんは四つ上のお兄ちゃんだけど、 くんはその二つ下。私たちは三人兄妹なのである。
お兄ちゃんは、頭が良くて運動もできて、優しくて格好良い。先生や同級生に上級生、いろんな人からお兄ちゃんを褒められた。妹としては鼻高々なのです。
くんは、お兄ちゃんだけど、お兄ちゃんて呼ばない。だってくんもお兄ちゃんの事を月って呼び捨てにしてるし、私にはお兄ちゃんが二人いるから、どっちもお兄ちゃんって呼んだら紛らわしいんだもん。お父さんとお母さんは、お兄ちゃんって呼びなさいって言うけど、 くんはこれでいいよと微笑んだ。
くんは勉強は普通。運動はしてる所あんまり見た事が無い。そういえば算数はいつも満点。でも、お兄ちゃんみたいに注目されるのも、褒められるのも好きじゃないんだって。だから、人気者のお兄ちゃんに学校では近づかないでねって言ってるのを聞いた。そんなくんは、学校ではあんまり目立たない。私はくんも充分格好良いと思うんだけど、皆はお兄ちゃんの方が格好良いからそっちを見てるみたい。勿体ないかな。でもくんは私には学校でも近づいてくるから私だけ特別で嬉しい。
お兄ちゃんが卒業すると、お兄ちゃん目当てだった女の子たちはくんから離れて行った。でも、お兄ちゃんではなくくんの隠れた魅力に気づいた女の子が居たみたいで近づき始めた。お兄ちゃん、お兄ちゃんがくんにうんざりされながらも近づいてたのはこの女の子たちを近づけないためだったのね、なんて私は小学生ながらに悟った。
くんは女の子に囲まれるのがあまり好きではなくて、誘われても私がいるからって断って、私の教室にくる。私の同級生は、最初はくんのことなんて見てなくてお兄ちゃんの事をちやほやしてたのに、急にいいなあ、なんて言い始めた。拗ねつつも、羨まれる兄を持った私は幸せ。くんが私を頼ってしょんぼりしながら一緒に帰ってってお願いしてくれるのも、私は幸せ。私が友達と帰れないからって気を使ってくれてるんだよ。
くんは女の子みんな嫌いなの?」
クラスメイトの美奈子ちゃんがくんは女嫌いなんじゃないのかって言っていたから、帰り道で尋ねた。
「いや別に?」
「好きな子は?」
これは一つ上の里沙ちゃんが私に、くんに聞いてって言ったこと。
「いない」
「ふうん。じゃあどんな子が好きなの?」
「いい子」
「なにそれー!」
「粧裕はいい子だから好きだよ」
くんが小さく笑った。お兄ちゃんの爽やかな笑顔とは別で、くんはほんのりと笑う。ぽんぽん、と頭を撫でられてかあっと顔を赤くしてしまった。こんな風に面と向かって男の子から好きって言われた事無いんだもん。たとえ実の兄であっても、くんにドキっとしてしまった。
「も、もう!くん好きな子つくりなよ!」
「お姫様は一人で充分」

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幼少時は短めに話切ります。粧裕ぐうかわです。
feb-may.2014