harujion

Last Memento

16 殺人犯
(L視点)

レイ・ペンバーの捜査対象である警察関係者とその周辺を、よく見る必要が出来た。監視カメラと盗聴器をつける事を口にすれば、捜査官たちは戸惑う。法に反することは私も重々承知であるが、我々は命を懸けて捜査しているのだ。

北村家と夜神家にカメラを取り付けた。私は初日、夜神総一郎と一緒に夜神家のモニタを観察している。一番に帰宅したのは、夜神月。カメラを付けた者からの報告では、彼は自分の留守中に誰か入っていないかをチェックしているようだった。それ以外は怪しい物も無い。
彼が階段を上っている途中に玄関がもまた開き、弟の夜神が帰宅。夜神月は階段の上から顔を出して弟に声をかけた。
夜神の部屋も同様簡単な家宅捜索をしたが、特に怪しい物はなかったと聞く。
二人とも階段を上り、互いの部屋に別れようとしていたが、ドアに挟んだ紙切れを夜神月が回収している様子を夜神はじっとりと見て、少し考えてから何をしてるのかと声をかけた。
『特に意味はないけどやってみたくなって』
私も十七歳くらいのころ、特に意味もなくやってみたことがあった。
『あそう』
呆れたような声だが表情に機微はない。
はやりたくならない?』
『さあ。俺は月みたいに、部屋の本棚にグラビア雑誌隠してないしなあ』
グラビア雑誌を隠している事に関しては年頃と言えば普通のことなのだが、それを兄に堂々と言って退ける弟というのも少し珍しい。おそらくからかっているのだろうが、いささかテンションが低い。
夜神月は動揺しているが、夜神は最後まで飄々とした態度で部屋へ入って行った。
「弟さん……どういった性格なんでしょうか」
「普段から優しい子だが……時々ああして人をからかう事もある、普通の子だよ」
モニタを見ながら夜神総一郎に問えば、躊躇いと笑いの混じった声で答えられた。
それから夜神月は勉強を始め、夜神は宿題をやった後、帰宅した妹の夜神粧裕とテレビゲームを始めた。そのまま兄は夕食まで勉強を続け、弟妹は途中で帰宅した母に言われて、風呂洗いと洗濯物を取り込みに移動した。怪しい行動をする人物はおらず、とうとうリビングに集まって食事となった。夜神家は夜神粧裕がリモコンを操作し歌番組を観ていて、夜神月はたまにはニュースを見ろと嗜める。ごくごく普通の食事風景だ。
両家でテレビを観ているので、ワタリにニュースのテロップを流すよう指示させると、ICPOが先進各国から総勢1500人の捜査員を日本に派遣する事を決定した旨を画面から世間へ伝えられた。
『1500人だって、すごっ』
夜神粧裕は驚いた顔でそのニュースに反応する。夜神と夜神月はどう反応するかと観察すれば、先に口を開いたのは夜神月だった。
『こんな発表をしたら意味が無い。やるならこっそり捜査させるべきだろ』
『あ、そっか、そうだよね』
夜神月は、得意げな顔をして大げさに報道をしてキラを同様させる警察の作戦だと話した。
模試一位であることや、普段の行いからして賢いことは分かっていたが、なかなか頭の回転が早く推理力もある。
『ICPOってなに?FBIと何が違うの?警察じゃないの?』
行儀よく静かに食事していた夜神は、口の中の物を飲み込んでからようやく口を開いた。首を傾げ、キラのニュースに触れるわけでもなく、ニュースを無視するでもない反応。あまり、キラには関心がないようである。
『簡単に言うと、ICPOは警察の国際組織、アメリカの警察は州ごとで動いていてFBIは全土で動く。警察ではなくて法執行機関だ』
『へえ。英語圏を全部くくって考えてたら駄目だね』
『……。お前英語喋れるんだからこのくらい分かっておけよ。あとICPOは英語圏だけじゃないからな』
『興味の問題だし、今知ったじゃん』
勿論興味が無い人間には差など分からないだろう。夜神粧裕も、夜神同様、説明にふむふむと頷いている。
夜神は、拗ねる様子も見せずにあっけからんと答える。知らないということに対してあまり恥を感じないようで、柔和な性格をしている事が伺える。
夜神月はその逆で、ひけらかすとまでは行かないが、知識に自信を持っていて、分からないと答える弟妹たちにも教えている。そして時々からかうような下に見るような発言も多い。

普通、人が人を殺すときは何かしら機微がある筈なのだが、誰一人怪しい者が居ない。普通ならこの中にキラは居ないと思う所だ。もしこの中にキラが居るとすれば、精神が既に神の域に達している。もはや神が行っているのではないかと思う程だ。しかし、罪の無いFBIの捜査官を殺し、私を挑発している点をみると、キラは神なんかではない。神の裁きを気取った子供じみた者である。
キラは、ただの大量殺人犯なのだ。

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しらばっくれるのとか分からないから適当には話してます。
feb-may.2014