harujion

Last Memento

18 第二のキラ

第二のキラがテレビで色々やらかしているのは知っていた。粧裕が怖がっていたので、テレビを消してしまったけど。その四日後、ノーの返事をした場合のキラの言葉が放映されるのを月と一緒にリビングで眺めた。
「自己主張激しいなあ……」
「たしかにキラとしか思えない殺しの手口だが……警察幹部を生贄にしようとしたりビデオを送りつけたりするか?」
「さあ」
顎に手を当てて考える月を一瞥もせずに違うチャンネルにまわした。あ、おい、と咎められるがもうキラの放送は終わったのだから別にいいかと月の追求はすぐに終わった。
「いや、これはキラじゃない」
隣で結論を出した月は、ぐっと拳を握った。
「本物のキラが見ていたらきっと怒るな。こんなやり方は」
本物のキラは今見てるけど別に怒っては居ない。まあ、でも月がキラだったら怒ったのだろう。
「Lを殺してくれるかもしれないのに?」
「たしかにそうだが、キラの存在や力までわかるかもしれないからな」
隣で推理を披露しているけれど半分くらい無視しながら明日の天気予報を見た。これから月が捜査本部に加わって違うキラのテレビ放送をしたら考えよう。

案外それはすぐにやって来た。
月がいつの間にか出かけていたことは知っていたし、日にち的にもそろそろだと思ったので驚かなかった。漫画と見比べながらテレビを確認するが、全く同じ文章を喋っていた。それから何回かやり取りがあったけれど漫画と代わり映えの無いやり取りを見るのが面倒ですぐにチャンネルをまわしてしまった。
月が海砂に目をつけられる確率は今の所ゼロだけど、それはそれで困る。海砂が月につきまとってくれないと俺が疑われる可能性が出てくるのだ。
此処から先は、うまく行く可能性がぐんとさがる。まあ万が一海砂が捕まってしまってもレムがノートの所有権を放棄させるからノートの話はしないだろう。
青山に俺が行くと月やLの目に付くから避けたいし、だからといってキラと会えないままでいると海砂が何をし出すか分からない。
どうしたものかと考え倦ねいたが、海砂なんてそこそこ有名なティーンズモデルだからちょっと調べれば住所も出て来た。
漫画の中で、月の住所を調べていた事を思い出したのだ。
最近引っ越して来たばかりだというのに特定されているのは少し怖いけど、助かったなと思いながら最寄り駅にあたりを付けて、二二日の昼すぎ、駅前でぼんやりと座っていた。
「なあなあ、、青山行かないのか?」
「月が行ってるから俺は行かないよ」
リュークが俺にしきりに尋ねる。つまんねえな、と零すがこれから第二のキラに会うのだから黙ってなさいと口を挟めばリュークは首を傾げた。
「なんでわかるんだ?」
「その理由を話すと、これから先ぐんとつまらなくなるけど良い?」
「あ、やだ、じゃあいい」
「いつか全部わかるから……何もしないで見ていて」
ひそひそ喋っていたそのとき、現れたのはマッシュルームヘアーの大人しそうなセーラー服姿の女の子。改札から出て来た所だが、視界に俺を入れた途端きょとんと目を見開いた。手をひらひらと振って立ち上がり、その女の子に近づく。
「……目の取引してるんですか?」
「さあ?」
海砂は自分の斜め上を見る。おそらくそこにレムが居るのだろう。

俺の寿命が見えないからキラだとは疑っていないようで、海砂はやすやすと部屋に入れた。そしてたやすくノートに触れさせ、白い死神を見せた。
「あなたの役に立ちたいの。だってキラは海砂の神様なんだもん」
「正確に言うと、俺はキラではない」
「え?」
「本当のキラは、ノートを手放した」
海砂はぽかんとする。
「憧れのキラは警察に追われてるんだ。その疑いを晴らす為に今ノートは持ってない」
「そう、そうなんだ。でも、じゃあLってすごいんだね」
「すごいよ。キラもすごいけど」
「そうだよね!」
月のやり方では最終的にLには勝っていた。俺だったら到底考えつかない高度な戦いだ。
「だから俺が今はキラを支えてる。今後も、キラの方針に沿って動くんだけど」
「海砂もお手伝いしたい」
「……それは必要ない」
ばっさりと海砂を切る。そんなことでは諦めないだろうし、もっと必死になってくるだろう。
両親が目の前で殺され、その犯人をキラが殺してくれた、と泣きながら語る海砂の声に静かに耳を傾ける。Lへの接触も海砂がして殺すと啖呵を切るが、俺は別に今すぐにLを殺す事だって出来る。もう顔は見たし、名前も知ってる。今Lが死んだら月がキラということになる、という好条件の元でLを消す事ができるのだ。しかしそれをするつもりはない。
「宿敵を他の者に殺して貰うほど、キラはヤワじゃない」
「!」
海砂のベッドに座って、足を組んだ。計画があって、順調に進行しているからこれ以上関わらないで欲しいといえば、拳をぎゅっと握って言葉をさがしている。海砂はボロボロと涙をこぼした。
「そんなに……どうしてもキラの傍に居たい?……キラの正体、教えてあげようか」
「本当?」
「ただし手伝う権利はあげない。手も口も、出したら行けないよ」
キラは今警察の監視の下に居ると言っていい。だから完璧に自分がキラであったという記憶は無いということを話す。本当は記憶どころか、キラという事実すらないのだけど。
「君の美しく尊い涙に免じて、教えてあげるんだよ」
「うん」
「俺以外にキラの正体を知るものはいない。キラ本人でさえ自分がキラだということには気づいていない。だから君が急に近づけば、きっとただの変な女に見られる。それでも良い?」
「良いよ。海砂、キラのお嫁さんになりたいの。たとえ記憶がなくても、キラなんでしょう?」
「うん」
そう言えば、ぱあっと明るい顔をする。
「レム」
海砂に憑いてる死神に声をかけると、返事をする。
「海砂がキラに近づけば当然疑われる。それでも彼女は近づきたいと言った。だから俺は止めない」
「そうか」
「でも海砂が危険な目に遭うのは本意ではない。海砂を守る為に協力をする?」
「ああ、あくまでも海砂の為ならな」
「それでいい。ただ海砂がキラにノートの話をしないか見ててくれさえすればいいんだ」
「わかった」
「海砂そこまで馬鹿じゃないもん!」
思ったより馬鹿じゃないのは知ってるし、キラの為ならどんなことだってやってのけることも知ってる。でも他人が関わるとどうなるか俺にもわからないんだから仕方が無い。
「今後どんな場合でも、ノートの話を他人に漏らさない。いいね」
「うん」
そう約束して月の写真を見せた。青山で見かけた覚えがあるようではしゃいでた。たまたま覚えていたことが嬉しいらしく、はしゃいでいた。そして一目で好きになった。
「よかったね」
「うんありがとう!あの、あなたの名前、何て読むの?」
「この名前は本来呼ばれてない名前だから気にしなくていい。俺は夜神
「夜神……月くんと同じ苗字なの?」
「兄だよ、月は」
「そうなんだ」
養子なのかと言われるけど内緒と答えれば、海砂はそれ以上聞かなかった。

それから数日後、兄につきまとう海砂がいた。
「月……だれそれ」
「彼女は、えーと」
玄関で待ち伏せしていたらしい海砂に捕まった月は、ひきつった顔をしていた。
「彼女!?彼女って認めてくれたー!」
「!?認めてないから……!」
青山で一目惚れしたとつきまとわれていると後で聞いたけれど、海砂は可愛いからまんざらでもなさそうな顔をしてる。でも同じ大学の高田さんと付き合い始めたらしくて、海砂に構うのも気が引けるらしい。それに海砂はちょっと頭が足りないしと散々な言いようだった。

next



月はキラじゃないので海砂と付き合いません。高田さんは一応オッケーしてみました。
feb-may.2014