harujion

Last Memento

19 殺して
(海砂視点)

キラに会おうとしたけれど会えなかった。でも、キラの代理人には会えた。
海砂よりも年下で、ちょっと幼い感じ。でも喋り方は海砂より全然大人っぽかった。態度も堂々としてるのか、海砂のことを最初から下の名前で呼んでいたからちょっと吃驚した。人見知りしないんだなあ。海砂もそうだけど。
英語の名前だったから外国人かなって思った。読めなくて聞いたら、その名前は訳ありだから夜神と呼んでと言われたので素直に聞くことにした。くんはキラである月の弟なんだって。だからこんなに大人っぽいんだ。
キラの意志を継いでるから、ちょっと尊敬。本当は海砂がやりたいけど、弟なんだもん、仕方ないよね。
キラは今デスノートの所有権を放棄してくんに預けているらしい。もうLや警察に疑われてて、Lってすごいんだなあと思った。キラのほうがもっとすごくて、愛してるけど。
たとえ記憶が無くたって、キラである月は、海砂の王子さまなの。救世主なの。大好き。
写真を見せられたとき、すぐに青山で見かけたことを思い出した。なんかそれだけで運命感じちゃった。いつもいろんな人の顔も名前も見てたし、いちいち覚えてなんかいられない。月は顔が格好よかったからたまたまだけどね。
名前を調べたら住所も大学も出て来たから、通りそうな所で待ち伏せして、告白してみた。
「一目惚れだったんです、付き合ってください」
「いや、悪いけど」
断られちゃったけど、じゃあ友達からってお願いしたら妥協してくれた。いいもん、海砂ぜったい好きになって貰える自信あるし。くんも、月はガンガン押せば付き合えるって言ってたし。
海砂押すの得意だもん。


「月……だれそれ」
玄関で待ち伏せして、月を捕まえたと思ったらくんが出て来た。知らないふりしないと。
月が彼女は、と言うから一瞬嬉しくなってはしゃいだけど、違う彼女って意味で、ぷうっと頬を膨らませた。
それから数日後、撮影のスタジオ近くが月の通う東応大学の近くだったか会いに行ってみた。大学って誰でも入れるんだなあ。
「あ、いたー!月!」
背の高い後ろ姿を見つけて嬉しくて呼ぶ。げって顔をする月も格好よくて海砂は好きだよ。
「月のお友達?個性的ですてきね。私ライトの彼女のー」
「彼女じゃないだろ」
月と一緒にいた、猫背の男の人にもにこっと挨拶した。彼女たるもの、お友達にもフレンドリーに。って思ったら彼女ってところをいつも否定される。
「これから彼女になる予定の弥海砂です」
「流河旱樹です」
くんが、芸能人と同じ名前を名乗ってる変なの居るから気をつけてねと言ってたけど、この人の事だったんだ。顔には出さないように頑張った。

それから大学生に囲まれちゃって、そのまま月とはあんまりおしゃべり出来ないまま、マネージャーのヨッシーが迎えに来たから大学から出る事になった。
しかたなくスタジオに向かおうと思ったら、急にヨッシーが警察に捕まっちゃって、海砂も連れて行かれる事になった。仕事もあるし、月のこともあるのに、と不安になっていると、ヨッシーが捕まったのはフェイクで、海砂を第二のキラと断定されていた。
目隠しと拘束をされて尋問がある。水も飲めない生活が三日も続いた。縛られたままじゃまともに眠れないし、体力も限界。でもキラをおとしめるような事はできない。だって、海砂はキラの役に立ちたかった。傍に居たかった。くんが危険だよって言ってたけど、それでもキラに、海砂を見ていて欲しかったんだもん。
レムが縛られてるものを取って逃がしてやるって言ったけど、そんなことしたら死神の存在や不思議な力があることが分かってしまう。
耐えられないなら死ぬしかない。死んだらキラには迷惑かからないよね。

「殺して……」

レムにお願いだから海砂を殺してと頼む。でも殺してくれない。くんと月を殺すって言う。でもそんなのだめ。月は海砂を救ってくれた、くんは海砂を愛する人へ導いてくれた。海砂の思いを綺麗だって思ってくれた……。
そんな二人はこれから世界を救うの、導くの、美しいものをつくるの。海砂のせいで二人が死ぬなんてぜったいに駄目。
自分で舌を噛もうとしたけど、タオルで口を押さえられてしまってどうにもならない。後はレムが海砂を殺してくれれば良いだけなのに。お願い、という思いをこめて鼻を啜る。
そんなとき、レムが提案してきたのは、ノートの所有権を放棄しくんに託すことだった。そうすればノートの記憶は消えて、口を滑らせる事も無くなる。月が好きだという気持ちは消えない。くんとはノートの話しかしていないからもしかしたら忘れてしまうかもしれないけど、月の弟としてこれからも会えるし、きっと海砂を見守っていてくれるはず。だから、こくんと頷いて、くんにノートの所有権を託した。

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海砂かわいい。
めちゃくちゃ利用してるけど。すまんやで。
feb-may.2014