22 拒否
(月視点)
いきなり言いよって来た女、弥海砂が第二のキラ容疑で捕まった。その辺りからおかしいと思ったんだ。
竜崎は僕とに事情聴取をするといって捜査本部へ呼び出した。僕は何度か行ったことはあるがまで連れて行くことにも少し違和感を感じる。海砂とは一、二回しか会った事は無い。それでも呼ばれたのは、竜崎の正体を知っていることも、僕がキラとして疑われていることもが知っているからだ。僕が巻き込んでしまった。
竜崎に提案されたのは、二十四時間態勢の監禁。そんなもの受けるつもりはなかった。そもそも僕はキラではないし、こんなことをやったって意味が無いのだから。キラは自覚無しに殺人を犯している可能性はあったが、あんな方法をとるやつは自覚があるに決まってる、だから僕じゃないと言える。
僕はキラなんかじゃない。
確かに海砂は僕を青山で見て一目惚れしたと言った。そして、僕は青山に居た。そのあとに第二のキラが、キラに会えたと宣った。だがそんなの偶然に決まっている。
海砂に嵌められたか、本当のキラと第二のキラに嵌められているとしか思えない。
しかし、最終的には身の潔白を証明するために、牢に入る事になった。
はっきりと、竜崎は自分が僕をキラだと思っていると言った。ならばそれを絶対に覆してみせたかった。僕が監禁されてもきっと、キラの殺人は止まらないと思ったのだ。
しかし、一週間経っても二週間経っても、僕も海砂も解放されなかった。
海砂の様子を教えては貰えないが、普段の様子からして彼女はそんなに賢くも強くもないだろう。きっと泣いている。第二のキラでなければの話だが。
キラの殺人が止んでいないはずなので、僕はもう無実だと主張していたが、聞き入れられる様子は一度も無い。なぜなら、キラによる殺人は止まったという。これは絶対に誰かが僕をキラに仕立て上げようとしているに違いない。そこにいる誰かがキラだと叫ぶと、竜崎は一拍置いてから言った。
『では、夜神がキラということになります』
「!!」
は僕が監禁されたのを知らされていた。それは、は僕が行方不明なことにきっと気づいてしまうからだ。遅かれ早かれ知ると思われたからこそ、無関係なのに事情を説明されていた。しかし、それはどう考えても捜査の手際が悪い言い訳にしかならない。僕がどれほどに違和感を与えようと、こうなっている事を教えるべきではなかった。そうすれば、は疑われないのに。
ぎり、と口を噛むと、また竜崎の言葉が降り注ぐ。
『仕方がありません、夜神にも入ってもらいましょう』
「おい!にまでこんな思いさせるのか?止めてくれ、まだ十六歳だ!」
『そうですね、その辺は考慮します』
それだけ言うと、竜崎は音声を切った。女性である海砂を監禁している竜崎の考慮にはあまり期待できない。
は大丈夫なのか、怖がっていないか、早く出してくれ時間の無駄だとほぼ毎日言い続けていたが、一ヶ月も続くと気力もそがれて行く。
それでも時折竜崎にかけられる度に僕はキラではないと言い続けた。
僕が監禁されてから五十日以上が経った頃、父が一芝居打ったことにより解放された。隣に座る海砂は心底ほっとしているが、の姿は見えない。ホテルに戻り、竜崎の隣に居たにほっとして思わず力強く抱きしめた。
「!」
「抱きつかないで」
いつも通りの刺々しさが懐かしい。
海砂が隣で、なんで海砂には抱きついてくれないのと騒ぐがそんな余裕は無い。が僕の背中を軽く撫で、珍しく優しくしてくれている様子にどっと安心する。
「おつかれ、月」
「お前も監禁されてたんだろう?大丈夫か?辛くないか?」
「監禁?されてないけど」
今日は僕が解放されるから会いに来てくれたらしい。そういえばシャンプーの匂いもするし、はいつも通り清潔だ。
僕はどうやら竜崎に騙されていたらしい。睨んでも躱されるので、文句を聞き入れては貰えない。こんな風に人を騙すのはもはや常套手段だ。
散髪や入浴、着替えをしてようやく身体が綺麗になって、僕と竜崎は手錠で繋がれた。二十四時間一緒にいて、捜査をすることになったのだ。
は松田さんがくれた飴を口に放りこんでコロコロと音を立てながら僕たちの様子をまるで見ていないかのようにぼうっとしていた。
「月くん」
「ん?」
「弥とは本気で?」
「いや……だから彼女から一方的に」
唐突に一目惚れしたので付き合ってくださいと言われたのは記憶に新しい。
同じ大学の高田さんに交際を申し込まれて、試しに付き合ってみようと思って了承した矢先の出来事だったから断ったのに、友達からでいいからと付き纏われた。
竜崎は、海砂と親密になり第二のキラの事を探れと言外ににおわすが、僕は女性の気持ちを利用することは出来ないときっぱり断った。
「まあ、月くんならそうだと思いましたし、正しいです。しかし捜査上の秘密等が彼女から漏れない様、月くんからもよく言っておいてもらえると助かります」
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海砂<<<<<|越えられない壁|<<<主人公くらいで海砂の事はなんとも思ってないしブラコン
feb-may.2014