59 日本
(メロ視点)
ニアのところへ模木をやったが襲撃を受けた。結局良い情報は得られなかったが、後日模木と相沢が空港におろされる情報をハルが流して来た。おそらくこれはニアの狙いだが、とりあえずそれに乗る事にし、合流したマットと共にニューヨークからロスへ飛ぶ。暫く様子を見ていたが、秘密裏に日本へ移動し始めた。よく見れば怪しいというのは分かる。ぬるいやり方だと嘆息しながら、マットと日本へ飛んだ。
日本に来てすぐ、キラの代弁者とかいう女を観たが、ただの馬鹿女にしか見えない発言をしている。まあ、こういうのが気に入られる世の中になっていると言う事か。
俺自身がNHNに入り込むのは困難だが、高田のSPにハルが選出されたニュースを観ればニアが本腰入れて高田やキラについて調べていることが容易にわかった。
次に分かったのは模木がとある女に接触していたこと。
どうやら日本で活躍中の女優のようだが、随分子供らしくて馬鹿っぽい。名前は弥海砂。おそらく、ハルが言っていた第二のキラと疑われた人物だろう。あの女には簡単に盗聴器をつけることや尾行が出来た。
「ねーねー、月は元気?」
「私は会っていないので何とも……」
「そっか、今は捜査違うんだ〜」
弥には、女優弥海砂の家に爆弾を仕掛けたと言うイタズラ電話が入ったと説明していたが、そんなもので刑事が一人でずっと張り付く訳がない。彼女は信じていたが。
弥が一人の人物の名を出した。それは、夜神総一郎の長男の夜神月、の兄だ。そこで、が監禁されていた者の名を言わなかったことや、ハルから聞いた夜神総一郎の芝居の話に合点が行く。つまり、夜神月が仮のLで、キラ。
数日見張っていたが、本当にこの天然の馬鹿女が第二のキラだったのか?しかし模木が居る理由は第二のキラだからとしか思えない。
「あー!くんだ」
模木は弥に付き合い渋谷で買い物をしていたが、そこにを見つけた。
「うわ、……海砂」
面倒くさいという気持ちが全面にでた顔の。模木が隣に居ることを一切指摘しないのはあえてだろう。
「久々だねー!四年ぶり?」
「あー」
や模木はどんよりと遠くを見た。
「くん久々に会ったのに冷たくない?月は元気?」
がしっと海砂に腕を掴まれてがくりと体勢を崩す。
「月には俺も会ってないよ?ていうか海砂、まだストーカーしてるの?」
「ス!ストーカーじゃないもん!海砂だってもう家に行ったりしてないしー」
「刑事の前でストーカーとか本当勇気ある。捕まるよ?」
「だからしてないってば!」
緩すぎるやり取りに模木はたじろぎ、俺は肩を落とした。
「っていうか!月にはちょっと強引な方が良いっていったのくんじゃん」
「言ったっけ?もう昔すぎて覚えてないし、海砂のはしつこすぎでしょ」
「多分言ってた!海砂なんとなく覚えてる」
「いつだよ……」
わしわしと弥の頭を掻き混ぜる。弥は大して覚えていないらしく手から逃れることに一生懸命になった。
結局と海砂が接触しても得られる情報はほぼ皆無。夜神月のことを知れただけでもよしとするか。その後弥とは別れたが、俺は弥ではなくの方を追った。
「おい」
「ん」
そっと距離をつめ、隣に立つ。声をかけても驚きは無く、なんてことのないように返事をした。
三年前に会ったときよりも、また幾分か身長は伸びている。俺も伸びたがまだほんの少しだけのほうがでかいように思う。誘拐したときは実物なんてわからなかったが。
「何か用?海砂の尾行辞めてまでこっちくるなんて」
「やはり弥海砂なのか?」
「知らない」
ざわつく駅のホームでは、誰もが俺たちの会話を聞いていない。第二のキラであり、監禁された事のある人物を確認すれば、知らないと答えた。
「今更隠したって意味がないか。……疑われていたのは確かだよ」
キラなのかは定かではないが、監禁されたことは認められた。
「メロ、もう俺は完全にあちら側から抜けた———これ以上言える事はないよ」
電車がホームに走り込んで来て、ふわりと生暖かい風が俺たちの髪の毛を揺らした。は足を踏み出し、振り向いた。顎を引いて、靡く髪を避ける様に目を伏せる。
電車のドアがの背後で開いた。
「じゃあね」
そしては乗り込み、俺は動かずに向き合ったまま、電車のドアが閉まるのを見送った。
特技・フェードアウト。
feb-may.2014