60 天使
(照視点)
今まで私が心の中で削除を望んだ者が死んで行ったのは天罰だと思っていた。しかし、神の裁きだったのだと、私は確信した。
神が、舞い降りた。そして、その神は私を見つけた。
それはある日の事だった。郵便受けに一通の手紙が入っており、差出人は不明。用心してあけてみても、中には書類のみしか入っていない。コンピューターで打たれた文字の羅列。それは、神からの手紙だった。
手紙には、神である証拠としての殺人予告、神の使いの者が力を与えにやって来ることが書いてあった。
約束の日、私の部屋のインターホンが鳴った。カメラから見れば、少年が立っていた。
「———あなたが、神か?」
使いの者だと、青年は頭をさげる。
神の言っていた通り、神の使いがやってきた。
彼はそう、たとえるなら天使。
「こんにちは魅上照。貴方の事を神は見ていました」
部屋の中に入れると、少年は口を開いた。表情は変わらず、淡々と喋る。抑揚の無い、透き通る声は耳通りが良く、頭の中に甘く響き渡った。
「貴方なら拒否しない、その身体、その眸、その命までも……神に捧げると」
「はい」
私よりも小さく、細く、弱々しい少年は、清らかな眸と、子供のような肌、しなやかな黒髪をもっていた。ひざまずき、天使に誓う。私は、神の為、世界の為、力を尽くすと。
「神は今隠れてる。貴方に、神の裁きをしてもらいたい」
天使は憂いを帯びた笑みを浮かべた。
神はずっと隠れているらしい。そして、天使が今まで全てやって来たのだと言う。神の言葉に従い、日本警察を欺き、アメリカをはじめとするいくつかの国をも掌握した。さすが神の選んだ使いなだけある。
神の裁きの方法、死神の存在、そしてこれからすべき事を、天使は示した。
まずは出目川を排除し新たな代弁者を選出。神は全て予期しており、私が高田清美とプライベートでも会ったことがあると知っていた。NHNと高田をキラの言葉を発進するに相応しいテレビ局と報道人として、行動をする事を決めた。
当然高田には護衛がつきやすやすと脅かされるようなことにはならないが、必ず反キラ派の者が接触して来る。その中には本当の神も潜んでいると言う。ただ、神は記憶を全て失っており、あえてキラを捕まえる組織に身を置き、自らが神として降臨する時を待ち眠っているのだ。
天使の言ったことは全て頭にいれ、神の裁きをする道具、ノートを受け取る。天使が微笑むその後ろには、大きな目玉と口をした、死神が笑っていた。
ノートの使い方は死神に聞くように言って、天使は帰った。
出目川の死後数日おいて、あえてキラを求める様にテレビに出た。そして四日後、高田を代弁者とした。一週間おくのは不自然にも思われたが、それは私と神に繋がりが無い事を示唆するためだ。そして天使の言っていた通り、高田を代弁者にしてすぐ、高田は自分の意見も述べて来た。高田らしいと言えば高田らしいが、警察か、反キラ組織のものの介入があったのだろう。ここで高田に連絡を取るのは天使に止められている。
神は全てお見通しだったのだ。偽物のノートを作らせ、それを持ち歩きわざと死神の存在をちらつかせる。また、見張っている者の前で裁きを行ってみせ、ノートをあえてすり替えさせる。
神は、本当の神なのかもしれない。
死神がいるのだから、神も、天使も、居るのではないかと私に思わせた。
天使って。天使って。……これは魅上の呼び方ですから(言い訳)
feb-may.2014