65 正体
(ニア視点)
過去Lに拘束されていた者は二名。名前こそ教えては貰えなかったが、当時局長だった夜神総一郎が芝居をうつ際に言った、お前を殺して私も死ぬという言葉から彼らが親子であろうと判断する。夜神ではない事は、彼の行動と、誘拐された時に仮のLが指揮を執っていたことからして決定と言っても良いだろう。また、夜神がキラとして疑われていた人物の名を口にしなかったのも、家族だからだと思えば納得が行く。もちろん個人情報ということもあるだろうが、Lからの要請で捜査の情報を私たちに与える時に名を伏せるならば、この理由が最も大きいと言えよう。
ならば、キラは夜神月。年齢的にも経歴的にも彼ならば今捜査本部に居る事は不自然ではない。
相沢と模木を解放した後、キラはまた大きく動き始めた。キラ王国の出目川をはじめとする幹部が、放送中に死亡したのだ。それから一週間後高田清美アナウンサーがキラの代弁者として選出された。
捜査本部はもともと日本を拠点にしており、メロによる誘拐の捜査をする為にロスに居たがまた日本に戻って捜査をすると私に報告をして連絡が途絶えた。
レスターはすぐに日本に飛び、夜神月について調べた結果を報告して来た。大学時代、おそらくLだと思われる人物と接触をしており、六月頃にはL扮する流河旱樹と夜神月、そして弥海砂が大学でであっていたとの情報があったがそれを境に流河の目撃はなく、夜神月と弥海砂も行方が数ヶ月わからなくなったという。おそらくこれが、Lとキラ、そして第二のキラの三人だ。
弥海砂は現在日本で女優をしており、今では夜神月との付き合いはないそうだが、おそらく監禁から解かれてから接触を断ったのだろう。今のキラは顔を見ただけで殺せるキラと手を組んでいると確証はない。
捜査本部は日本にたち、すぐに弥海砂にもう一度接触をはかり理由をつけて行動をともにしているが、動きは無いと思われる。あれば相沢や模木が連絡を入れてくる筈だ。暫く様子を見るしかなさそうだ。
しかし模木と相沢が戻った後に犯罪者殺しや出目川殺しがあった事を考えれば弥と夜神からの証拠は期待できない。おそらくノートを使っているのはこの二人以外だろう。いまキラとして動いているものの証拠を掴んで捕まえると言う事になるが、夜神月はキラだ。決めてかからなければ、負ける。
夜神月は周りにも言われている通り、優秀で頭の回転の速い人物だ。監禁されておきながら新たな者にノートを使わせそれを捕まえさせる事により、L以外の者に監禁された二人は何もしていない故にキラではないと思わせ監禁を解き、十三日のルールでLに判断させざるを得ない状況を作り出した。しかも、Lが監禁をすることを読んでの行動だ。Lも言っていた通り、キラは二度もLに負けをたたきつけ、メロに苦汁をなめさせ、今も私をせせらわらっている。
キラ出現時のLとのやり取りからしても、プライド高く負けず嫌いなキラが、キラの座を完全に人に譲るとは思えない。必ずコントロールし、最後には自分がその座につく。必ず殺しをさせている者にコンタクトをとり指示をだしている。それを明らかにし動かぬ証拠にし、殺しをしている者とノートと一緒に夜神月も押さえなければならない。
しかし夜神月は時々調子を狂わせる。あっさりと情報を認め、事実を明け渡す。Lに監禁をしむける程の人物なのだから驚く事ではないが、その手腕には驚かされる。今キラの代弁者としている高田清美とは友人であり、接触を試みキラの手がかりをつかもうとしている事さえも私に報告した。
おそらく、それを言うことで、周りの者たちに夜神月がキラである筈が無いと思わせる為の策略だ。
高田清美に接触できるように手を回す。女王様気取りの、頭はいいが成績だけのただの馬鹿な女の護衛に、リドナーをつかせることに成功した。
高田清美は時折密会をしているとの情報が入っているが、それは仮のLが言っている通り、夜神月との密会だろう。相沢に確認をとれば、カメラも盗聴器も付け、全員でそのやりとりを見ているとの事だ。
高田清美と夜神月は大学時代男女交際をしていたようだが、夜神月は朴念仁なのか一切甘い囁きはせず真摯に友人として振る舞っているらしい。いっそ虜にしてしまえば、高田清美は何でも話してしまいそうではあるのだが。
また、高田清美を代弁者に選んだのはおそらくキラの意志ではなく、Xキラの独断だろう。高田清美がキラ崇拝者だと知って選んだのだ。出目川を殺して新たな代弁者を仕立て上げるまでに一週間を要したのは、おそらくキラからの連絡を待ち、その連絡が無かったから。Xキラはかならず、高田清美とどこかで会っている。レスターとジェバンニには危険を伴うが高田清美の交友関係を洗ってもらった。
だが、すぐにXキラへの検討はついた。魅上照、彼は何度か高田清美の番組に出演しており、また、あきらかなキラ崇拝者。そして、出目川の死の四日後に意味深なメッセージをテレビで言っている。その四日後に高田清美が代弁者に選ばれたのだろう。
Xキラには死神がついており、協力している可能性が高い。尾行や調査を行えばおそらく報告が行くか、その場で殺されるだろう。しかしだからといって何もしないという選択肢は無い。危険を承知で、ジェバンニには魅上照の尾行をしてもらった。
報告では、不気味なくらいに簡単に尾行が可能、検事の仕事も意欲的にこなしているとのことだった。近づきすぎないように注意し、部屋に入る等はせずに見張りだけをさせる。
ところがある日、魅上は外でノートを取り出した。そして、目の前で人が死んだ。やはり、Xキラは魅上に決定だ。だが今魅上を押さえても、キラにたどり付けはしない。もっと泳がせ、最後の最後に捕まえなければならない。
なるべく魅上とは距離をおいて映像を残し、死神との会話を得る為の尾行にした。その数日後、ジェバンニが魅上の一人言を捕えた。レスターの読唇術により、魅上に死神がついていないことを知った。ならばやはり、魅上は独自に大胆に動いている節もある。そもそも殺しの基準もキラとは違う。キラよりも、酷い。魅上は罪を憎み、許せないだけだ。
日本捜査本部では、ノートに触れられれば死神を見る事が出来ると言ったが、それではメロのことは説明がつかない。しかしノートに触れてみなければやはり分からない。捜査本部の者全員が死神を見たと言っているのだから。
魅上の行動生活パターンを徹底的に調べ、ノートに触れる機会を窺うことにする。魅上に死神がついていないとは、絶対に言い切れない。もしついていたとしたら、おそらくノートに触った事は魅上にバレて殺されるだろう。
魅上の一人言通り、死神がついていない方にかけることにした。
主人公にほとんど接してないので眼中にないんです
feb-may.2014