04
コーヒーを飲み干した後、帰るかと立ち上がった所でディーノは送ると言った。
「え、いいよ」
「なんもしてやれなかったしな、せめてこれくらいさせてくれ」
「……」
もう世話したくない。
じいっと見つめていると、ディーノは何も分かっていないキラキラした笑顔のまま俺を見下ろしていた。
「なにやってんだへなちょこ」
「ぉわ!」
ふと、可愛らしい声が聞こえたと思ったら、ディーノの後頭部に何かが衝撃を与えた。前のめりになるだけでは止まらず、顔面から転んでしまった。
「リボーン」
登場に驚き、見開いた目をゆっくり戻しながら人物の名を呟く。
「よー」
「ってて……なんだ、お前ら知り合いなのか」
「うん、知り合い」
俺たちの関係をどう言い表したらいいか分からず、ディーノの問いには肯定だけしておく。
「沢田さんは?」
「雲雀を起こしちまった」
「なんか爆発してたね」
リボーンを抱き上げて腕に乗せながらつぶらな瞳を覗き込む。普通にしている分には可愛らしい。
「はツナとも知り合いなのか」
「まあね」
ディーノはにこにこ笑いながら俺たちの会話に入って来た。知り合いかと聞かれても、さっきほぼ初対面だったが、説明するのが面倒くさいのでこれ以上言わなくていいや。リボーンは俺がそう考えていることがわかったのか、ずぼらな奴だなと突っ込みを入れた。
「ほら、もう帰ろう」
「おう」
ディーノのジャケットを軽く引っ張ると、にかっと笑った。しかし歩き始めてすぐに自分の足を絡ませて転び、俺の上に倒れ込んで。見事にとばっちりを受けたので今すぐ置いて帰りたい気持ちで一杯になった。
「……もう転ばないでよ」
手綱を握るつもりでディーノの手を握って歩き出す。
ディーノは嬉しそうに笑って俺の手を握り返して、少しぶんぶん振りながら歩いていた。すると、家はコッチでいいのかと尋ねられる。実は家の方向とは違い、先ほど部下達が居た方へ向かっているのだが、俺はうんうんと頷いた。リボーンはおそらく分かっているのろうけど、口を出さない。
手を繋いだ効果か、あれからディーノは転ばなかった。
「お、ボス!」
先ほど部下を見かけたあたりにやってくると、案の定すぐに声がかかった。
ロマーリオと呼ばれた部下はディーノに駆け寄って来て会話をしてる。そして俺に視線を落として、からかうような笑みを見せた。
「このバンビはどうしたんだ?隠し子か?」
「ばーか!色々世話になったんだ」
さっきも病院でぶつかっちまったしな、とディーノが繋いでいた手を放して俺の頭をぐりぐりと掻き混ぜる。
「さっきの坊主か」
「お小遣いありがとう」
「ボスが世話になったな」
ディーノの次にロマーリオの手が伸びて来てまた頭をぐりぐりされたので、髪の毛を整える。
「じゃあ俺帰るね」
「何言ってんだ送ってくって言ったろ」
ばいばい、とディーノとロマーリオに手を振って去ろうとすると、ディーノは後ろから俺をひょいと抱き上げて阻止した。
リボーンをちらりと見るけど、ニヤニヤ笑っているだけだ。
「リボーン発見だぞ!!」
その時、ガハハハという笑い声の子供がして、ディーノの意識がそちらに向いたので腕から降りる。もじゃもじゃ頭の幼児と、つるんとした頭に一本三つ編みが垂れてる卵みたいな幼児がいた。
もじゃもじゃが笑いながら近づいて来たが、つるつるはちょっと離れた所で立ち止まっていた。
そばに寄って顔を覗き込むと、額に麻雀牌が浮かんでいる。九つだったものが、八つになったとき、ディーノが後ろから駆け寄って来た。
「やべ!、離れろ!」
焦ったディーノの声がしたと思ったら、どこからかディーノが鞭を取り出した。
「え?」
鞭は器用に小さなイーピンの身体に巻き付き、びゅんと上に飛んで行った。目で追っていると身体がぐっと引かれてディーノに抱き込まれる。何事かと思っていたその時、上空でつるつるが爆発した。
「リボーン、俺今普通に死ぬ所だったんだけど」
「イーピンは恥ずかしがり屋でな。緊張が極限までくると爆発するんだ」
どうやらこの顔が好みらしい。
イーピンホイホイ私も大好きです。
Mar.2015