harujion

いとしのヴァニーリア

11

リングの争奪戦が終わっていたことに、三日後くらいに気がついた。
自分で調べなかったとはいえ誰か教えてくれても良いのに。
しかしよく考えたら俺に関係のない話なのかもしれない。


「あ、!」
「?」
おやつの買い物帰りに商店街を歩いているところで、沢田に声を掛けられた。
ランボとフゥ太はよく遭遇するけど、沢田とは学校以外でほとんど会ったことがない。
「リ、リボーンしらない?」
「見てないけど」
焦った様子の沢田に落ち着いて説明させると、昨日十年バズーカーにあたったリボーンが消えてしまったらしい。
「ランボに聞いてみたら?それか開発元に連絡」
「や、でも、ランボに聞いても何もわからなそうだし……あ!大人ランボに聞けば何か分かるかも!!」
助言をしてみたら良い案が思いついたのか、沢田は俺に手を振って走って行った。

その後並中生数名が行方不明となったことを恭弥から聞いた。
「……このラインナップはもろに」
沢田、獄寺、山本、笹川兄妹とくると、すぐに察しがつく。恭弥は俺に調べといてと言って外に出て行った。
夕方になっても恭弥は帰ってこなかったので、草壁に送ってもらって家に帰った。

その夜俺は夢を見た。
俺は大人になっていて、当たり前の様に裏社会で働いている。
時代も容姿も今の自分の未来といった感じなので、少なくとも前世ではなさそうだ。
恭弥は風紀財団と言うものを立ち上げていて、俺もそこに所属していた。





風紀財団所属の俺は、ボンゴレの仕事の手伝いをさせられていて、現在はイタリアに出張し、ヴァリアー部隊に居る。
意味が分からない。手伝いをしてこいと言われたのはわかってるんだけど、こんな状況、もはや運命としか言い様が無い。
そして運命は俺を殺そうとしているに違いないと星空を遠い目で眺めた。
隣では、新人隊員のフランがレヴィを怒らせて飄々としている。
「キレイな空だなー」
「………………そうだね」
ミルフィオーレの古城を占拠して篭城するまでならまだ俺も動けるし付き合ってもよかったんだけど、これからの作戦を隣で聞いてる俺はひっそりテンションを下げる。もしかして参加させられるのだろうか。
スクアーロ作戦隊長はダミ声でうむ、と頷いてから俺たちに指示を出した。
「レヴィとルッスーリアは城で待機して何かあればサポート、オレは東の抜け道を守る。南はベルとフランだ」
最後に、ザコは好きにつれてけと付け足した。
つまり俺はザコってことでベルとフランと一緒に行く流れなのだろうか。
「ゲッ……オレがフランのお守り?それならのがマシだっつーの」
ベルは思い切り顔を顰めた。下半分くらいしか見えないけど、それはもう盛大に嫌がっている。
それから、俺のほうがマシっていうのは多分言い過ぎだと思う。俺の本領は隠れるか馴染むことだし、出来るのは護身術と援護射撃くらいなもので、ヴァリアーの人達みたいに木と木を飛び交うことも、リングやボックスを用いて炎を出すこともできない。
「嫌なのはミーも同じですー。あいつ嫌なタイプですのでー」
まるで俺に話しかけるように、隣に立って同じ方向を向いていたフランは涼しい顔して宣った。
「なんならミーがと組みますー」
「はあ」
懐かれているように見えるけど、懐かれた覚えはないし、多分ただの消去法なのだろう。
もしくは当てつけだ。
あと、俺はもともと二人と一緒に行って援護する作戦の筈なんだけど。
「……スクアーロ作戦隊長、任務中あのカエル死ぬかもしんない……オレの手によって」
「ざけんなガキィ!新米幹部はペーペー幹部が面倒みんに決まってんだろぉ!!」
「オレもうペーペーじゃねーし」
「あとを前線に行かせてもしょうがねぇだろぉが!」
今、スクアーロが凄くまともに見えた。フランに腕を組まれて連れて行かれる流れになっていた俺は、首根っこを引っ張られて引き戻される。ちょっと苦しいけどほっとした。


俺はそこそこ安全な位置で情報整理して、戦況を報告したり、大人しくかつ従順に仕事をこなした。
いつのまにかザンザスが主戦力を倒したとかで、城はほとんど壊れたけど後は残党狩りのみとなった。
俺がいても仕方がないので、やっと日本への帰還ができる。日本では武が負けたらしく、それに憤ったスクアーロがすぐに日本に行くとか言い出して城を出る俺の腕を掴んだ。
「オレも日本へ向かうぞぉ!」
「チケットあるの?」
俺は帰ると決めてからすぐにフライト手配をしたけど、スクアーロは本当に今言われたところなので全く知らない。
ぐっと言葉をのんだところをベルとフランにだせーと揶揄されてブチ切れてる間に、俺は一人離れてルッスーリアに手を振った。



ボンゴレの経費でファーストクラスに乗って日本に行き、またもボンゴレの経費でタクシーにのって並盛に帰った。
「お帰りなさいさん」
「ただいま哲、恭弥は?」
財団のアジトに帰ると哲が出迎えてくれたが、イタリアに行ってからしつこく帰還命令のメールを送って来た恭弥本人が見当たらない。
哲曰く、チョイスという戦いに参加しているどころか、今の恭弥は十年前の恭弥らしい。
「あ!帰っておいでですね」
監視カメラのモニタに、懐かしい人影が写ったのを見ると、哲も気づいて声をあげた。
さんもお迎えしましょう、恭さんがお喜びになりますよ」
「若い恭弥じゃん」
俺より年下の兄にあうのか、と思いつつ出入り口に走る哲を渋々追いかけた。

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途中から十年後の主人公視点になってます。だから呼び方違います。
Apr.2015