harujion

いとしのヴァニーリア

12

「無事に帰ったということは勝ったのですね!!」
上半身を外に出した哲の声を下で聞いていた。
なつかしい、子供の頃のツナの声がぎゃーぎゃー騒いでいるのも聞こえる。足まで出て行った所で俺もよじのぼって穴を目指したんだけど、どうも事態が急変したらしく哲が恭弥を呼び止めている。
よくわからないまま穴から顔を出したら、恭弥と哲が走って行くところだった。
そして身体全部を出してスーツを整えている間に、ディーノがユニの安全の確保をとツナに指示して階段を一気におっこちていった。
「いっちゃった」
「!だ、誰ーーー!?!?」
頭一つ分小さいツナの隣に立って、ロマーリオとディーノが走って行ってしまう方向を眺めた。
ツナは俺の急な登場にびっくりしていて、なんだか本当に子供だなって思って笑ってしまう。
「もしかして……?成長してるけど」
「十年後だからね」
あの頃の俺は小学生だったから、他の皆よりも成長する度合いが大きいだろう。
「スクアーロはやっぱり俺より先についてたんだ」
「テメー遅すぎるだろぉ!!」
「俺は飛行機で来たので」
無茶を言わないでほしい。どうせこの人は泳いだり走ったりして距離を縮めて来たんだろう。
「え、って何処にいたの、今まで」
「ヴァリアー」
「えぇ!?」
「所属は当然風紀財団だけど、ボンゴレから要請があって……その前はミルフィオーレにスパイもしてた」
入江正一とユニの方をちらっとみると、二人はぱちぱちと瞬きをした。
幹部に顔を見せつける程の動きはしていないけど、何度かすれ違ったこともある。
「とにかく、まずは皆アジトへ」
せっかくよじ上ったけど俺はまたすぐに中に潜ることになった。
リボーンの姿があるのは懐かしく嬉しいことだけど、ここで再会を喜んでいる暇は無さそうだ。

「通信室をかせ、クソボスに報告して救援を頼む」
案内している最中にスクアーロは俺の首根っこを掴んで引き寄せた。いちいち乱暴に引っ張るからスーツが乱れるし首しまるし、ヴァリアーには出来る限りかかわり合いたくないと心の中で思った。
ルッスーリアとフランくらいだ、俺に優しく触れるのは。

通信中に襲撃を受けたので碌な会話もできないまま俺たちはアジトから逃げ、ハルの言う川平不動産に向かった。
しかし一息つけたのも束の間で、襲撃はすぐにやってきて不動産は燃え尽き、俺たちは結局森の中に行くことになった。
ユニを助けに来たブラックスペルの隊員達も居るので戦力が増えたけど、ホワイトスペルと白蘭を倒すのに万全とは言い難い。
「俺は様子を見に行ってくるから」
作戦会議中に俺はどうするのかと入江に聞かれたので、立ち上がりスーツについた土を払うと、ツナはぎょっとして俺を見上げる。
「え?ど、どこいくの?
「ヴァリアーや骸が日本に着くから迎えに」
ルッスーリアとフランが俺に連絡を入れて来てるので確かな情報だ。
雲雀さんの所じゃないんだ、とツナが零したのでつい首を傾げる。正直俺は恭弥を心配していない。これまで約二十年の人生で、恭弥を守るという概念は捨てた。
「恭弥はどうせぴんぴんしてるから放っとく」
「十年前なのに?し、心配とか」
「……若返って更に元気なんじゃない?」
とにかく行ってきますと一応ボスである彼に報告をした。
「でも、一人じゃ危ないよ!」
更に引き止めるツナに、進めようとしていた足を止めた。
「見縊るな」
「!」
「俺は今までずっと、一人でも諜報活動してきたんだ。心配されるほどの腕じゃないつもり」
ツナはその事実に顔色を悪くした。そういえば、まだ中学生だったという事を思い出す。
でも、俺はもう小学生じゃないのだ。
「そうだぞツナ、こいつは戦闘力がなくとも、危機回避能力はずば抜けてるんだ」
リボーンが俺のことをどれだけ知ってるのか分からないけど、擁護してくれた。
「……うん、ごめん」


で、どうにか闘って白蘭を倒し、沢田達が過去に戻る……という夢をみた。
夢だったのか夢じゃなかったのかよくわからないけど、ここ最近沢田が行方不明だったことや恭弥が居なかったことはその所為だったのかもしれない。
目を覚ましたら恭弥が勝手に俺のベッドに潜り込んで寝ていて、やっぱり全部夢だったのかもという気になってきた。
正直どっちだっていい。俺も恭弥も生きている。
もぞもぞと寝返りをうって胸に顔を埋めると、恭弥は応えるように俺の背中に腕を回して眠り直した。
過去の恭弥と未来の俺はほんの少し顔を合わせたけど隣に立つことは無くて、身長差を比べるくらいのことはしてみたかったような気もする。でも、抱きかかえられるくらい差のある今を楽しんでおくことの方が貴重だと思った。

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戦闘シーンで出番がないのは、おきまりなんですよっ
Apr.2015