harujion

いとしのヴァニーリア

バニラ・ビーンズ 01

十年前に夢で見たように、裏の仕事に足を踏み入れてからすぐボンゴレからの仕事も受けるようになった。
今回の仕事もボンゴレからの要請で、とあるマフィアに潜入していた。ボスのフランチェスコ・ラゾローロは仏のラゾローロと言われる程、穏やかなマフィアのようだが、それは本当に最近の話だ。今までは過激であったり、腹黒であったり、とにかくあまり良い噂を聞いていない。仏のなんていわれつつ、ただ今は何かを企んで大人しくしているだけなのでは、というのがボンゴレの見解だ。あのファミリーは、敵対でもなければ同盟でもない。ボンゴレに牙を剥かない限り、また、ボンゴレの目に余る行為をしないかぎりは、手を出すつもりは無かった。とはいっても、調べるくらいはするのだ。つまり、俺はその調べ物にかり出された。
本来居る味方スパイの伝手と情報操作を重ねて潜入し、見事下っ端として認知された。一年先に入った同じく新人であり先輩のトーニオは俺を弟分として可愛がって世話を焼こうとしたし、お調子者というタイプだったので俺に対して屈託なく接してくれた。
「おぉい、スー!小遣い貰ったから晩飯奢ってやるよ」
「本当ですか、トーニオさん、うれしいです」
スーというのは勿論偽名であり、俺は中国人ということになってる。日本は平和な国ってイメージがあるのと、ボンゴレのボスが日本人だということはマフィア界隈では有名な話なので、少しでも違和感の無いようにとのはからいである。
トーニオはにこにこ笑いながら遠くからかけよってきて、俺の肩を抱いて軽快に叩く。

彼に可愛がられているのは計算外だったが、最終的には良い事づくしだった。まず、彼自身がボスのお気に入りであったこと。それから、兄貴分たちからも贔屓目に見られていること。おかげで、彼が俺を連れ回している間は俺も他に仕事を入れられなくて楽だ。時折邪魔だからって追っ払われるけど。
一番良かったことは、トーニオが組の噂話も平気ですること。
今度ボスと幹部の一部とトーニオで、HLに行く事も簡単に俺の耳に入って来た。HLで遊んで来るぜって意気込むトーニオを見ながら、あそこはボンゴレの幹部ですら危険視してるのになあと思いつつ、気をつけてくださいねとだけ言葉をかけた。
ご飯を一緒に食べてちょっとお酒が入っただけで、二ヶ月しか居ない新人に極秘であることをぺらぺら喋るトーニオを、ある意味尊敬した。ボンゴレだったら今この場で始末すべき対象だ。何故ボスはトーニオを可愛がっているのだろう。馬鹿な子程可愛いとか言っていられるほど、このファミリーは寛大でもなければ余裕も無い。おそらく何かあるのだろう。そもそも異界と入り交じる街HLに行こうとしている時点で、おかしいのだ。
何か兵器とか薬とかを手に入れてくるつもりなのかもしれない。

ボンゴレに報告すると撤退命令が出たので、連中がHLに発つ前に関わった者全員から俺の記憶を消した。
潜入は終了し現場は撤退となったが、調べることはまだまだあるのでまだ日本に帰る訳ではない。
、おめーちょっとHL行って来い」
「え」
「ちょ、リボーン!?」
見た目年齢は俺よりも年下で、まだ少年という風貌のリボーンが、ボスであるツナのデスクに腰掛けて俺に命じた。
そんなことしたら雲雀さんに殺される!と戦慄くツナに、俺は苦笑が零れる。
たしかにあの街は危険だ。俺は過去二回ほど行ったことがあるが、恭弥と哲と一緒だった。
今回は一人で行けってことだろう。なおかつ、ラゾローロ達のことを探ってこなければならない。つまりHLの闇の濃い方まで行かなければならない、ということだ。
相変わらず優しいツナは青ざめつつリボーンを止めている。
「他に適任が居るとは思えねーぞ」
「いや、ヴァリアーとか、うちの諜報員でもいいじゃないか……そもそもはボンゴレでもないし」
「戦闘力皆無のヘタレだが、諜報に関しちゃに任せたほうが手っ取り早いし、コイツには杖もあるだろうが」
ダメツナと未だに評され頭を蹴飛ばされる様子を見て、俺は行くよと答えた。
ツナは最後まで俺をそんな所に送り出さないと止めるだろうし、リボーンは俺が一番の適任だと譲らないだろうから決着がつかない。
「でも」
「心配?」
「いや、実はそれはあんまりしてなくて……」
ずっと前、危険だから行かない方が良いと止めたツナに見くびるなと言ったことを思い出し、からかうような視線を向ける。けれど、さすがに今のツナはそんな事は言わないようだ。
「あんまりを使うと、雲雀さんが怒るんだよ……最近もの帰還命令のメールがどっさり」
「ごめん、怒られて?」
「イヤだぁあぁ!!」
リボーンから投げて寄越された航空チケットを指先で受け取り、ツナに笑って背を向けた。

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軽率にクロスオーバーです。原作キャラ同士は絡まないです。
能力を絡めるのは多分無理だけど、マフィアである主人公が色々動くのが書きたくて。
ボンゴレが一番でかいマフィアということにしてます。血界の眷属を封じるのは無理なんじゃないかな〜と。まあ、そんじょそこらの異形には負けないと思うけど。
July.2015