君を覆うやさしい銀河
は人見知りをする子供だった。無邪気に微笑む同年代の子供達が苦手で、笑いかけられるとびくりと身体を縮こまらせてしまう。
甲高い大きな声で遠慮なしに叫ばれるのも、乱暴に腕を引かれるのもあまり好きではなくて、は年上を好んだ。彼らはキンキン声で叫んだりしないし、手加減をして腕を引いてくれる。
「、わかる?あの飛行艇がマルコ、その後ろを飛んでいるのがベルリーニ」
「マルコ!ベル!」
はジーナの膝の上で青空をすいすい泳ぐ飛行艇を見上げ、大好きなマルコやベルリーニの名前を一生懸命呼んだ。短い腕を目一杯伸ばして、 二人が気付くようにぶんぶんと回すと、ふいに二人の機体が一回転をした。
「、マルコとベルリーニがあんまりはしゃぐと疲れるって言ってるわよ」
「ほんと?そういってた?」
ジーナはくすくす笑いながらを抱え直してあやす様に背中を叩いた。
「ええ」
「すごい、ぼくきこえなかったよ」
ジーナはまた笑った。今度は喉を鳴らしてそれを隠すように顔を背けていた。
暫くして飛行艇は着陸し、ジーナとのところへマルコたちが帰ってきた。はすぐにジーナの膝から降りて二人に駆け寄る。先に居たベルリーニの腰にばふりと抱きつくと、優しく後頭部を撫でられた。
「ベル、おかえりー!マルコも!」
「ただいま」
「あんまりはしゃぐと眠くなっちまうぞ、」
抱き上げてくれるベルリーニの肩に掴まって、後ろに居たマルコに少しからかわれるとはきょとんと目を丸めてからジーナを振り返った。
「ジーナのいったとおりだ!」
「「は?」」
本来なら頬を膨らませて眠くならないもんと拗ねるのだが眸を輝かせて喜んでいる様子に今度は二人が目を丸めた。ジーナだけはくすくす笑って落ち着いた様子で二人におかえりなさいと手を振った。
「マルコ、マルコ、これなに?」
「ああ?そりゃエンジンだ」
「エンジンって動くのにひつよーなやつ?」
「おおお」
七歳になったはマルコにいっとう懐いていて、飛行艇にも夢中だった。さすがに子供だったので乗せることはなかったがマルコは一生懸命自分についてき て楽しそうに飛行艇を撫でるを可愛がっていて整備や調整のときはにたくさんのことを教えた。
飛び方や武器の種類、飛行艇の歴史なんかも七歳の子供に語って聞かせてもわからないだろうとは思っていたは理解はできずともきちんと覚えて忘れなかった。
「マルコはくーぐんにいるんだろ?」
「ああ」
「僕もおっきくなったら、マルコんとこ行く!」
「はははははっまだ飛行艇に乗れねーガキが言うじゃねえか」
ガシガシと頭を乱暴に撫でられたが、は嫌がらない。
この手加減した乱暴さが好きなのだ。
「僕せーびしってのになるんだ」
「整備士?」
「ジーナがねえ、がひこーてー乗りになったら心配で泣いちゃうっていうの」
それはその場限りの言葉であり単なる子供の口約束にしかならないのだが、この時は素直に飛行艇乗りを諦めていた。 「でもマルコの近くにいたいから、ジーナにお願いしてせーびしなら良いよって」
にぱっと笑ったに、マルコは今度こそ噴出して豪快に笑った。
「なに?なんで笑うんだよ、マルコ!」
「ベルリーニー」
「よう、」
十四歳になったはすくすく育ったが小さな頃から偏食なうえに小食の為とても細い。身長はジーナに追いついたが手も首もジーナよりも華奢だ。
その長い割りに細い腕がすらりと伸びてきてベルリーニの首に巻きつけられるが、エルメーテは昔からしがみ付いて擦り寄るのが好きだった為ベルリーニは特別驚かずに受け入れた。仕舞には足まで絡み付いて完全に負んぶ状態なのだがは前述したとおり痩せていて驚くほど軽いため、普段から鍛えているベルリーニが重いと思うことはなかった。むしろ、朝食から夕食まで全て管理してやったほうがいいのではないかと心配になるほどだ。
「……お前また痩せたか?」
「え、そう?」
少し上体を屈めての様子を伺うベルリーニに、は特に気にした様子もなくマイペースに首をかしげる。
「…………最後に飯食ったの何時だ?何食った?」
「うんと、……昨日の朝?たしかトマト食べた」
「!……お前、今はもう夕方だぞ!?」
「おなかへったかもしんない」
当たり前だ!とベルリーニは怒って、を担いだまま動き出した。
「ジーナ!何か飯出してくれ!」
数年前からジーナがやっている店のドアをバンと開けると既にそこには幼馴染たちの顔ぶれがあり、ジーナも少し驚いた顔をしてベルリーニとを見ていた。
「よう、久々だな」
「あ!帰ってきてたの?どうだったー!」
「バッチシだぜ」
ベルリーニの背中から降りて先客たちの輪に入っていくを尻目に、ベルリーニは先ほどのやり取りをジーナに教えた。
相変わらずのことなのだが、その小食で偏食なところをどうにかしてもらいたいジーナははあとため息を吐いて仲間とわいわい笑っている少年を見遣ってから、 まずは料理を出すために準備を始めた。お説教は後である。
「どうだったって、何がだ?」
「ん?ああ、こいつが俺の飛行艇の調整してくれてな」
「が?」
ジーナから離れて輪の中に入ったベルリーニは仲間で何を話していたのかと首を傾げた。
「そ、が。すげえよこいつは……将来良い整備士になるだろうなあ。な、お前軍に入るか?」
「ほんと?入る入る!マルコも居るんでしょ?」
今ここにいないが一番懐いている幼馴染の名前に皆は笑った。はマルコが一番大好きだからマルコが居れば空軍だろうが空賊だろうが入ってくるのだろうと一同心の中で頷く。
「駄目よ、にはまだ早いでしょう」
優しいような呆れたような声が降り注ぎ皆いっせいに見上げると、そこには料理皿を持ったジーナが立っていた。
「ジーナのご飯ー」
「、あなたいい加減食事くらいちゃんとできるようになりなさい」
「うん、分かった」
「前もそう言って作業小屋で熱中しすぎて三日食事を抜いたから栄養失調寸前になって、私に見つけられたのはだあれ?」
「わかんない」
しゃくりとレタスを食みながらそっと目を逸らすにジーナ以外は豪快に笑う。
「可愛いく言っても駄目よ!」
「えー」
「ー自己管理もできねえんじゃ軍なんか入れねえぞ」
ジーナに頬を引っ張られは涙目になりながらごめんなさいと笑った。この様子じゃ改善は見込まれないのだろうなとベルリーニは冷静に判断したが、笑い声の中から 軍なんか入れないという言葉が出た瞬間は目を見開いて動きをビクンと止めた。
「え!ほ、ほんと!?」
「その通りだ。食事抜いて仕事に差し支える整備士なんて軍では雇えないに決まってるだろう」
「う、それはやだ」
「なら食事はちゃんとすること……わかったか?」
「うん、たべる!」
ベルリーニが諭すように言い聞かせると、まるで幼い子供のようにぶんぶんと首を振る。
ジーナはその様子に、軍に影響力が負けたのは少し悔しいけれどこれでも少しは健康的になってくれるかしらと安堵の息を漏らした。
ロードショーで放映されるたびにマルコやフェラーリンに胸キュンしています。ついつい書き始めてしまいまして、完全に自分しか得しない作品……。
甲高い大きな声で遠慮なしに叫ばれるのも、乱暴に腕を引かれるのもあまり好きではなくて、は年上を好んだ。彼らはキンキン声で叫んだりしないし、手加減をして腕を引いてくれる。
「、わかる?あの飛行艇がマルコ、その後ろを飛んでいるのがベルリーニ」
「マルコ!ベル!」
はジーナの膝の上で青空をすいすい泳ぐ飛行艇を見上げ、大好きなマルコやベルリーニの名前を一生懸命呼んだ。短い腕を目一杯伸ばして、 二人が気付くようにぶんぶんと回すと、ふいに二人の機体が一回転をした。
「、マルコとベルリーニがあんまりはしゃぐと疲れるって言ってるわよ」
「ほんと?そういってた?」
ジーナはくすくす笑いながらを抱え直してあやす様に背中を叩いた。
「ええ」
「すごい、ぼくきこえなかったよ」
ジーナはまた笑った。今度は喉を鳴らしてそれを隠すように顔を背けていた。
暫くして飛行艇は着陸し、ジーナとのところへマルコたちが帰ってきた。はすぐにジーナの膝から降りて二人に駆け寄る。先に居たベルリーニの腰にばふりと抱きつくと、優しく後頭部を撫でられた。
「ベル、おかえりー!マルコも!」
「ただいま」
「あんまりはしゃぐと眠くなっちまうぞ、」
抱き上げてくれるベルリーニの肩に掴まって、後ろに居たマルコに少しからかわれるとはきょとんと目を丸めてからジーナを振り返った。
「ジーナのいったとおりだ!」
「「は?」」
本来なら頬を膨らませて眠くならないもんと拗ねるのだが眸を輝かせて喜んでいる様子に今度は二人が目を丸めた。ジーナだけはくすくす笑って落ち着いた様子で二人におかえりなさいと手を振った。
「マルコ、マルコ、これなに?」
「ああ?そりゃエンジンだ」
「エンジンって動くのにひつよーなやつ?」
「おおお」
七歳になったはマルコにいっとう懐いていて、飛行艇にも夢中だった。さすがに子供だったので乗せることはなかったがマルコは一生懸命自分についてき て楽しそうに飛行艇を撫でるを可愛がっていて整備や調整のときはにたくさんのことを教えた。
飛び方や武器の種類、飛行艇の歴史なんかも七歳の子供に語って聞かせてもわからないだろうとは思っていたは理解はできずともきちんと覚えて忘れなかった。
「マルコはくーぐんにいるんだろ?」
「ああ」
「僕もおっきくなったら、マルコんとこ行く!」
「はははははっまだ飛行艇に乗れねーガキが言うじゃねえか」
ガシガシと頭を乱暴に撫でられたが、は嫌がらない。
この手加減した乱暴さが好きなのだ。
「僕せーびしってのになるんだ」
「整備士?」
「ジーナがねえ、がひこーてー乗りになったら心配で泣いちゃうっていうの」
それはその場限りの言葉であり単なる子供の口約束にしかならないのだが、この時は素直に飛行艇乗りを諦めていた。 「でもマルコの近くにいたいから、ジーナにお願いしてせーびしなら良いよって」
にぱっと笑ったに、マルコは今度こそ噴出して豪快に笑った。
「なに?なんで笑うんだよ、マルコ!」
「ベルリーニー」
「よう、」
十四歳になったはすくすく育ったが小さな頃から偏食なうえに小食の為とても細い。身長はジーナに追いついたが手も首もジーナよりも華奢だ。
その長い割りに細い腕がすらりと伸びてきてベルリーニの首に巻きつけられるが、エルメーテは昔からしがみ付いて擦り寄るのが好きだった為ベルリーニは特別驚かずに受け入れた。仕舞には足まで絡み付いて完全に負んぶ状態なのだがは前述したとおり痩せていて驚くほど軽いため、普段から鍛えているベルリーニが重いと思うことはなかった。むしろ、朝食から夕食まで全て管理してやったほうがいいのではないかと心配になるほどだ。
「……お前また痩せたか?」
「え、そう?」
少し上体を屈めての様子を伺うベルリーニに、は特に気にした様子もなくマイペースに首をかしげる。
「…………最後に飯食ったの何時だ?何食った?」
「うんと、……昨日の朝?たしかトマト食べた」
「!……お前、今はもう夕方だぞ!?」
「おなかへったかもしんない」
当たり前だ!とベルリーニは怒って、を担いだまま動き出した。
「ジーナ!何か飯出してくれ!」
数年前からジーナがやっている店のドアをバンと開けると既にそこには幼馴染たちの顔ぶれがあり、ジーナも少し驚いた顔をしてベルリーニとを見ていた。
「よう、久々だな」
「あ!帰ってきてたの?どうだったー!」
「バッチシだぜ」
ベルリーニの背中から降りて先客たちの輪に入っていくを尻目に、ベルリーニは先ほどのやり取りをジーナに教えた。
相変わらずのことなのだが、その小食で偏食なところをどうにかしてもらいたいジーナははあとため息を吐いて仲間とわいわい笑っている少年を見遣ってから、 まずは料理を出すために準備を始めた。お説教は後である。
「どうだったって、何がだ?」
「ん?ああ、こいつが俺の飛行艇の調整してくれてな」
「が?」
ジーナから離れて輪の中に入ったベルリーニは仲間で何を話していたのかと首を傾げた。
「そ、が。すげえよこいつは……将来良い整備士になるだろうなあ。な、お前軍に入るか?」
「ほんと?入る入る!マルコも居るんでしょ?」
今ここにいないが一番懐いている幼馴染の名前に皆は笑った。はマルコが一番大好きだからマルコが居れば空軍だろうが空賊だろうが入ってくるのだろうと一同心の中で頷く。
「駄目よ、にはまだ早いでしょう」
優しいような呆れたような声が降り注ぎ皆いっせいに見上げると、そこには料理皿を持ったジーナが立っていた。
「ジーナのご飯ー」
「、あなたいい加減食事くらいちゃんとできるようになりなさい」
「うん、分かった」
「前もそう言って作業小屋で熱中しすぎて三日食事を抜いたから栄養失調寸前になって、私に見つけられたのはだあれ?」
「わかんない」
しゃくりとレタスを食みながらそっと目を逸らすにジーナ以外は豪快に笑う。
「可愛いく言っても駄目よ!」
「えー」
「ー自己管理もできねえんじゃ軍なんか入れねえぞ」
ジーナに頬を引っ張られは涙目になりながらごめんなさいと笑った。この様子じゃ改善は見込まれないのだろうなとベルリーニは冷静に判断したが、笑い声の中から 軍なんか入れないという言葉が出た瞬間は目を見開いて動きをビクンと止めた。
「え!ほ、ほんと!?」
「その通りだ。食事抜いて仕事に差し支える整備士なんて軍では雇えないに決まってるだろう」
「う、それはやだ」
「なら食事はちゃんとすること……わかったか?」
「うん、たべる!」
ベルリーニが諭すように言い聞かせると、まるで幼い子供のようにぶんぶんと首を振る。
ジーナはその様子に、軍に影響力が負けたのは少し悔しいけれどこれでも少しは健康的になってくれるかしらと安堵の息を漏らした。
ロードショーで放映されるたびにマルコやフェラーリンに胸キュンしています。ついつい書き始めてしまいまして、完全に自分しか得しない作品……。
飛行艇や戦争の知識はないのでうやむやにしたり捏造します。
2012/04/10
Title
by
yaku 30
no uso