睫毛の長い子ども
「・です、よろしくお願いします」
ぺこりと下げられた頭は触り心地が良さそうな髪の毛をふわふわと揺らした。
「ああ、よろしく。俺は、」
「こいつはフェラーリンだ。あとは頼むぞ」
「はい、大尉」
自己紹介をしようとしたフェラーリンを遮ったのは戦友であるマルコだ。怪訝な顔つきになったフェラーリンの様子など気にせずの肩を叩いてから出て行くマルコをは敬礼をして見送った。
フェラーリンの機体がおかれている倉庫は、マルコが出て行った今フェラーリンとの二人だけが残された。
今回フェラーリンはマルコに連れられて来たは良いが何の話も聞かされておらず、今目の前に居るとも、向かい合うのは初めてのことだった。
マルコの秘蔵っ子であることは軍の中でも有名で、腕も良いと聞いている。だからと言って何故呼び出されているのかは検討が着かない。内心疑問ばかりのフェラーリンはとりあえずが口を開くのを待った。
「―――以前、フェラーリンさんが飛び立つ瞬間を見てたときに違和感を感じまして」
「あ、ああ」
「まず、エンジンですが……」
順を追って説明していくの様子にフェラーリンは少し驚いていた。次々と注意点や改善点を挙げられ、ほんの少したじろぎつつも頭に叩き込んでいく。
「それから、自分が思うに、この機体……レバーの位置が悪くて引きにくくありませんか」
「そうか?」
「おそらく、指三本分左にずらしたほうが良いと思ったので試しに動かしてみました」
「動かしたのか?」
「はい。でもすぐに直せますから確認していただきたくて」
特に引きにくいと思ったことは無い。それはずっと同じ機体に乗っていた為に慣れていたからだろうが。
しかしに急かされ一旦飛行艇に乗り込みレバーに手を伸ばし掴んでみる。位置が違うという感覚はあったが、掴んだ瞬間に体勢が自然でしっくりく ることに少し驚いた。
「どうでしょう」
「あ、ああ、なんか楽だな……」
「良かったです。……前の位置だと余計な力も使わなくてはなりませんし…………この位置で決定して良いですか?」
「、君は俺が飛んでいるところをそんなに頻繁に見ていたか?」
フェラーリンはふと疑問に思って尋ねてみた。まだ彼は整備士になって一年経たない筈で、飛び立つ時に彼の姿を見かけた記憶はほとんどない。
「え?以前見た一度だけですが……」
控えめに口元を緩めて首を傾げるにフェラーリンは目を見開く。
「!?……たった一回見ただけなのに窮屈だとかわかるのか?」
「まあ……一体に注目していればそれなりに……」
「注目?」
「大尉と話していた時に、長い付き合いの戦友がいて……と指差したのがフェラーリンさんの機体でしたので」
注目していた理由はわかったが、どんなに注目していようとたった一回見ただけでこれほどまでに飛行艇のことを分かってしまうのかと瞠目した。
「ははは……さすがマルコの秘蔵っ子だ。ありがとう」
「いえ、いきなりすみませんでした。本当は怒られるかなとも思っていたので良かったです」
ほっと安心したように笑う。
マルコのお墨付きとは言えまだ入ったばかりの若い整備士が許可なしに予定外のことをすれば、下手をしたらスパイ疑惑で軍法会議にかけられかねない。
「腕がいいから怒らないんだ。まあ、次からは俺にちゃんと確認をとること」
「今回は大尉が許可したからやってしまいましたが、はい、次からそうします」
「マルコが?……アイツ……勝手に」
「すみません」
ぺこりと頭を下げようとするをフェラーリンは、君は悪くないからと静止した。大尉が許可を出しているなら問題はないのだし、 は実際軍にも飛行艇乗りたちにも信用はされているのだから結局フェラーリンの意思は関係ないのである。飛行艇のことは飛行艇乗りよりも 整備士に任たほうが合理的だ。
「マルコ……あ、いや、大尉にだけにしか確認とらなかった自分が悪いので、大尉を責めないでください」
「……」
「あ、自分のことはで構いませんよ」
なんだか苗字で呼ばれると畏まってしまいますとは目を細めて笑った。あどけなさの残る笑顔にフェラーリンも思わず笑みが零れた。マルコが可愛がるのも分かる気がする。ふわふわした髪は撫でたくなるし、細すぎる体は大事にしてやりたくなる。庇護欲そそられるに母性本能ならぬ父性本能のようなものが働く。
気がついたら手が勝手にの頭を撫でていた。会った時から撫で心地の良さそうな頭だと思っていた所為だ。
「す、すまん、 」
「いえ、良いですけど」
フェラーリンはきょとんと目を丸めていたから手を離し、降参するように両手を挙げる。
「スキンシップは嫌いじゃないですよ」
「そうか……」
フェラーリンはマルコたちとスキンシップしている所を見たことがないので想像もできないが、は撫でられるのも撫でるのも、抱きしめられるのも抱きつくのも好きだ。専ら自分から抱きついて、撫でてとお願いして撫でてもらうので、何も言ってないのに撫でてくれたフェラーリンをは好ましく思っていた。
マルコ達はあやすように軽く叩くしジーナはお願いしないと撫でてくれないのだ。
また撫でてくださいねと言い掛けたが、甘えたことを言える相手ではないのでは我慢して、フェラーリンに挨拶をして別れた。
主人公の苗字が出るのは最初で最後になるような気がします。そしてフェラーリンの口調も難しい……
ぺこりと下げられた頭は触り心地が良さそうな髪の毛をふわふわと揺らした。
「ああ、よろしく。俺は、」
「こいつはフェラーリンだ。あとは頼むぞ」
「はい、大尉」
自己紹介をしようとしたフェラーリンを遮ったのは戦友であるマルコだ。怪訝な顔つきになったフェラーリンの様子など気にせずの肩を叩いてから出て行くマルコをは敬礼をして見送った。
フェラーリンの機体がおかれている倉庫は、マルコが出て行った今フェラーリンとの二人だけが残された。
今回フェラーリンはマルコに連れられて来たは良いが何の話も聞かされておらず、今目の前に居るとも、向かい合うのは初めてのことだった。
マルコの秘蔵っ子であることは軍の中でも有名で、腕も良いと聞いている。だからと言って何故呼び出されているのかは検討が着かない。内心疑問ばかりのフェラーリンはとりあえずが口を開くのを待った。
「―――以前、フェラーリンさんが飛び立つ瞬間を見てたときに違和感を感じまして」
「あ、ああ」
「まず、エンジンですが……」
順を追って説明していくの様子にフェラーリンは少し驚いていた。次々と注意点や改善点を挙げられ、ほんの少したじろぎつつも頭に叩き込んでいく。
「それから、自分が思うに、この機体……レバーの位置が悪くて引きにくくありませんか」
「そうか?」
「おそらく、指三本分左にずらしたほうが良いと思ったので試しに動かしてみました」
「動かしたのか?」
「はい。でもすぐに直せますから確認していただきたくて」
特に引きにくいと思ったことは無い。それはずっと同じ機体に乗っていた為に慣れていたからだろうが。
しかしに急かされ一旦飛行艇に乗り込みレバーに手を伸ばし掴んでみる。位置が違うという感覚はあったが、掴んだ瞬間に体勢が自然でしっくりく ることに少し驚いた。
「どうでしょう」
「あ、ああ、なんか楽だな……」
「良かったです。……前の位置だと余計な力も使わなくてはなりませんし…………この位置で決定して良いですか?」
「、君は俺が飛んでいるところをそんなに頻繁に見ていたか?」
フェラーリンはふと疑問に思って尋ねてみた。まだ彼は整備士になって一年経たない筈で、飛び立つ時に彼の姿を見かけた記憶はほとんどない。
「え?以前見た一度だけですが……」
控えめに口元を緩めて首を傾げるにフェラーリンは目を見開く。
「!?……たった一回見ただけなのに窮屈だとかわかるのか?」
「まあ……一体に注目していればそれなりに……」
「注目?」
「大尉と話していた時に、長い付き合いの戦友がいて……と指差したのがフェラーリンさんの機体でしたので」
注目していた理由はわかったが、どんなに注目していようとたった一回見ただけでこれほどまでに飛行艇のことを分かってしまうのかと瞠目した。
「ははは……さすがマルコの秘蔵っ子だ。ありがとう」
「いえ、いきなりすみませんでした。本当は怒られるかなとも思っていたので良かったです」
ほっと安心したように笑う。
マルコのお墨付きとは言えまだ入ったばかりの若い整備士が許可なしに予定外のことをすれば、下手をしたらスパイ疑惑で軍法会議にかけられかねない。
「腕がいいから怒らないんだ。まあ、次からは俺にちゃんと確認をとること」
「今回は大尉が許可したからやってしまいましたが、はい、次からそうします」
「マルコが?……アイツ……勝手に」
「すみません」
ぺこりと頭を下げようとするをフェラーリンは、君は悪くないからと静止した。大尉が許可を出しているなら問題はないのだし、 は実際軍にも飛行艇乗りたちにも信用はされているのだから結局フェラーリンの意思は関係ないのである。飛行艇のことは飛行艇乗りよりも 整備士に任たほうが合理的だ。
「マルコ……あ、いや、大尉にだけにしか確認とらなかった自分が悪いので、大尉を責めないでください」
「……」
「あ、自分のことはで構いませんよ」
なんだか苗字で呼ばれると畏まってしまいますとは目を細めて笑った。あどけなさの残る笑顔にフェラーリンも思わず笑みが零れた。マルコが可愛がるのも分かる気がする。ふわふわした髪は撫でたくなるし、細すぎる体は大事にしてやりたくなる。庇護欲そそられるに母性本能ならぬ父性本能のようなものが働く。
気がついたら手が勝手にの頭を撫でていた。会った時から撫で心地の良さそうな頭だと思っていた所為だ。
「す、すまん、 」
「いえ、良いですけど」
フェラーリンはきょとんと目を丸めていたから手を離し、降参するように両手を挙げる。
「スキンシップは嫌いじゃないですよ」
「そうか……」
フェラーリンはマルコたちとスキンシップしている所を見たことがないので想像もできないが、は撫でられるのも撫でるのも、抱きしめられるのも抱きつくのも好きだ。専ら自分から抱きついて、撫でてとお願いして撫でてもらうので、何も言ってないのに撫でてくれたフェラーリンをは好ましく思っていた。
マルコ達はあやすように軽く叩くしジーナはお願いしないと撫でてくれないのだ。
また撫でてくださいねと言い掛けたが、甘えたことを言える相手ではないのでは我慢して、フェラーリンに挨拶をして別れた。
主人公の苗字が出るのは最初で最後になるような気がします。そしてフェラーリンの口調も難しい……
フェラーリンかっこいいですよね。
2012/04/10
Title
by
yaku 30
no uso