Sakura-zensen


サクラ前線 01

桜色の髪に翡翠の瞳、白い肌、さくらんぼ色の唇、りんごのほっぺ、まるで美少女ヒロインのようなアイテムを持った俺ですが、俺です。男です。顔立ちは記憶とは変わってないと思う。身体の色はもう生まれ直したときに両親からもらっちゃったと思えば納得できた。まいったなあ〜、俺美少女アイテム満載じゃん……と幼いながらに思った覚えがある。
成人男性、なおかつ純日本人やってた俺としては、ちょっとコンプレックスというか戸惑いを感じたけど。でも両親もそうだし、周りには金髪とかいたから俺はそんなに目立ってないみたい。
それよりも驚いたのは、俺が居るのは火の国木の葉の里、火影様がおわす、忍者の隠れ里的なあれだった。ナルトだよ、大正解!
里の人大半が忍び目指すし、そういう世の中なわけで。アカデミーに入ることは全然良い。
でもさ、女として入学させるなんて酷いんじゃないかな!?

俺は生まれたとき超未熟児で、幼少期はそれはそれは儚く、くしゃみしただけで死ぬんじゃないかって心配されていたらしい。風習で女の子の格好をさせたり、名前を隠して違う名前をつけたり、あとは普通に病院に通ったりと色々な手段ですくすく育った。ぶっちゃけ今では自分が虚弱体質だとは思ってないし、お医者さんからも普通に「あの未熟児だった子が、大きくなったもんだ!」ってにこにこ笑われるくらいだから安心安全健全男児だと思うんだよね。忍者のアカデミーにいれるくらいだから両親も俺が元気になったってわかってるはずなのに、女装があまりにもしっくりきすぎて、俺女の子のまま入学してた。
気づけよ先生、気づけよ両親、……気づけよ俺!自分の名前が、春野サクラだって事を、全くといって良い程意識してなかった。ぶっちゃけね?フルネーム自分で名乗らないし、名前は他にあるんで女の子用の名前でサクラってつけられただけだと思ってたし。

提出した書類に不備が……みたいなノリで両親とアカデミーに行って説明したんだけど、男女の人数比率が崩れるとか言って俺は女の子グループに入れられたままだった。何その理由!?
書類は男に戻してもらったけど、このまま女の子グループに入れられるのに男で居るのは気まずいからアカデミー卒業までは『修行』と称して女装をつづけることにした。素晴らしい心意気だよ!って褒められたけどぜんっぜん嬉しくないし。結局卒業したらバレるんだよな……勉強はしっかりするけど、目立たないようにいきてこ。

どうせ女の子なんだからって髪の毛伸ばして地味ぃに真面目ぇに勉強してたけど、やっぱり一応男なもんだから体術は女子では一番だった。勉強もそこそこやってきたけど、クラスで一番目立つイノちゃんの方がはきはきしてて多分総合成績は良さそう。まあ、テストは真面目にやってる。だってチャクラってなんぞやって思うし、忍術使えたら楽しそうだしなあ。
同学年は噂のナルトが居たし、俺も変化やりたいから練習した。今の自分よりもももう少し年上の女の身体に変化する練習とか、現代にいた頃の俺に変化することもできる。そのまま忍術使うのはまだ難しいけど、買い物とかは全然余裕で行けちゃうな。
「サクラ、組手の練習はこっちに混ざれ」
俺の事情をもちろん知ってるイルカ先生が、組手の授業でとうとうそう言い出した。こっち、と言っている場所は男子の居る方。つまり、男子と組手をするってことだ。
最初からそうしててもよかったけど、それはそれで違和感与えちゃうから今の時期で丁度いいか。
「はーい」
「え〜女子とやんの?」
女子は俺と組手やらなくて済んでほっとしてるけど、男子はブーブー言ってる。俺はもう手加減しなくて良いんだと思うと嬉しくてたまらない。
男子にしてみたら冴えない女子なので、たとえ組手一位だろうとそんなに興味がないらしい。どうでもいいけどって思いながら伸すのが気持ちいいんじゃないか!
「油断大敵!」
開始直後にくるんっと回されてすってーんと転んだ男の子はぽかーんとしながら俺を見上げて来た。
まだまだ手加減が要るレベルだな、この辺は。
「サクラの言う通りだ。女子だからって油断していたからこうなったんだぞ。気を引き締めろ」
手をひっぱって立たせていると、俺の横にイルカ先生が並んで軽くお説教してくれた。
次からはもっとやりがいがありそう。
「ね、ね、サクラちゃん、さっきのすごかったってばよ!」
「ありがと」
他の人がやってる間、ナルトが俺の隣に座ってにこにこしながら話しかけて来た。汗かいて前髪が貼り付いたので前髪をちょっとかきわけつつはにかむと、ナルトもふへへっと嬉しそうに笑う。ナルトは女子の大半に嫌われてる……っていうか邪険にされてて、ヒナタみたいに大人しい子は優しくしてくれるけど、普通に接するのは俺くらいなのでよく懐いてると思う。というか、ナルトってサクラ好きなんだっけ。俺サスケが里抜けするまでしか読んでなくて、大人になってからナルトがヒナタとくっついて終わって、サクラはサスケと結婚したとしかしらない。サスケはいつ里戻ったんだ……そしてサクラとくっつくんか……って思った。まあ、俺はサスケとくっつくつもりもないけど。
「ナルト、あとでやる?」
「えぇ!?サクラちゃんと!?怪我させらんねーってば」
「ドベのお前がサクラに怪我おわせられるわけねーだろ」
俺の反対隣にいた、さっき俺に転がされた子がナルトに言った。……正直同感だった。
「次、サスケとナルト!」
イルカ先生が指示して、サスケはかったるそうに立って、ナルトは意気込んで向かってった。ナルトは速攻ぶっとばされた。お、おおう。
「サクラ、相手しろ」
「え」
ぶっとばされたナルトをあちゃ〜って眺めてた俺の前に、いつのまにかサスケが来てた。
さすがに男子の一位に勝てるかはわかんないなあ。俺も男子だし体格はほぼ同じだから、有利な面はあまりない。
「いいだろう、つぎ、サクラとサスケ」
女子もさすがに驚いたようで、きゃ〜サスケくぅん!じゃなくて、え!?ってなってる。もっと俺に同情していいよ。
「急な話だなあ……」
イルカ先生が指示するんじゃ仕方ない。ぼやきながら立ち上がると、サスケがふんっと息を吐いた。すっ、すかしてる〜!
「イノちゃん、ちょっとの間ゴムかしてくれない?」
「え?ああ、いいけど」
サスケに目がハートになってたイノちゃんに声をかけると、ポニーテールを解いてゴムをかしてくれた。俺はそのゴムを借りて長い桜色の髪の毛を結び、ついでに他の女子が貸してくれたピンで長めの前髪をとめた。
俺が本気出す準備し始めた所為かどよっとされるけど、まあ、サスケ相手はガチで挑まないと損でしょ!

対立の印を結んだ後はもうすごかった。
サスケの素早く繰り出される拳や蹴りを必死で避ける。予測できる攻撃なんて少ししかないから、ほぼ勘だ。時々かするとぴりっと痛み、気が引き締まると同時に高揚する。疲れるし緊張するし怖いし、楽しい。
渾身の蹴りは片手のみで防がれたけど、隙をついた突きはちゃんとサスケに当たった。
最終的にサスケの蹴りでぶっとばされて、ナルト程ではないけどべちゃっと転んだあたりでイルカ先生の終了の声が入った。
咄嗟に後ろに飛んで衝撃和らげたけど、着地は失敗だ。
「いてて、しっぱいしたぁ」
「サクラちゃん!」
「サクラ!大丈夫!?」
イノちゃんはさすがにぶっとばされた女子を心配してくれたらしい。これがナルトとの人徳差かな、フフン。まあ、一番俺の事を心配して声を上げてくれたのはナルトなんだけど。
掌じゃなくて肘を地面にずりっとぶつけたので血が出てしまった。尻も痛いし、次からはもう少し受け身の練習しないとな。
痛みをこらえて立ち上がって、サスケと和解の印を結んだ。
初めての時は凄かったんだよなあ、まだ俺もあの時は女の子相手だったから余計にビビってたけど。ナルトとサスケが滅茶苦茶対立しちゃってて、和解の印むすばねーし途中で授業ブッチするし。俺はイルカ先生に心底同情した。数年たってもナルトとサスケの性格は変わってないけど。

男子と組手をしてからか、少し目立つようになった気がする。もともと女子とはそれなりに話す方だったし、地味に生きてたとはいえ友達はいたけど。
「盲点だったわ!!サクラ!」
「へ?」
地味めな女の子グループとお昼を食べてたら、イノちゃんが荒々しく声を上げた。なんか、俺を見てる。
「体術が上手いのは知ってたけど、まさかサスケくんとやりあえるとは思ってなかった」
「そ、そお」
じっとり睨まれて、俺は引き気味に返事をする。イノちゃん女子のリーダー格だから波風立たせたくないなあ。
「いままで地味にしてたけど、そこそこ可愛いし……とんだダークホースよ」
はぁ〜と息を吐き額を抑えるイノちゃんはぎんっと睨んで「まさかサスケくんが好きとか言わないわよね!?」って言うので速攻「それはない」って答えた。
「あ、でも強くてカッコいいよね〜」
「そうよね!サスケくんってばクールだし秀才だし、しかも強いなんて完璧!」
イノちゃんやサスケファンの女の子たちはころっと表情を変えて頷いていた。
好きっていったら疎まれそうだけど、興味ないのも目立ちそうだから、憧れる〜くらいに言っておくことにしよう。
サスケは将来有望とか言われてるけど、将来無謀なことするだろうからな……あれだな、カカシ先生の方が安心する。いやその前に俺男だけど。



next.

桃色ヒロインつながりで桜色ヒロインを思い浮かべました。
女装理由とか特に決めてないです。現代人→サクラで原作知識はほんのり。昔はジャンプ買ってたとかそういう感じ。
戦闘力有りな主人公ってよく考えたらあんまりいないんですよ当サイトでは。だからちょっと楽しみです。
主人公は現代で教師だったって設定は本編でやってるけど、元ヤン→教師って考えてたんですよね。ほんで格闘技とかが好きで……黒バスでもほんのりプロレス技知ってたりとかしてたんですが。使わない設定だったのが今ようやく日の目を浴びた感じです。
Nov 2015

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