サクラ前線 03
カカシ先生は一見やる気無さそうなお兄さんだった。ナルトの罠にわざとひっかかるし、自己紹介のときに殆ど情報をしゃべらないし、この先ちゃんと仲良くなれるか微妙に不安に思った。まあ、でも見てもらうことになれば、きっと仲良くなれるかな。
「よし……じゃ最後、………………女の子」
髪の毛長いままだから、一応女の子って言われた。
「春野サクラです。好きなのは犬、嫌いなのは炭酸飲料とか?将来は未定、しいていうなら強くなりたいです!趣味は読書ですかね」
これといって好き嫌いがあるわけじゃなく、思いついたものを言っただけだったりする。趣味なんかねーよ、読書も好きってわけじゃなくて普通に読むくらいだ。むしろ日課に筋トレが入ってるからそっちが趣味かな。
なんか野望のすげえ二人を前に俺はそつのない自己紹介を終えた。
次の日はサバイバル演習があって、俺は朝ご飯を食べてから行った。
多分ナルトの横でお弁当食べさせてもらえると思うけど、念のため。といっても、朝はそんなにお腹に入らないのでシリアルだ。
「やっとお前らを好きになれそうだ……じゃ、始めるぞ!!」
カカシ先生の説明とナルトの大口の所為で俺が口を挟む余地もなく、サバイバル演習は開始された。
まあいっか。俺がアカデミーにもどるよってあっさり自己犠牲働くのもおかしな気がする。ナルトにお弁当分けて合格するのを目指そうと思う。
仕方なくその場を離れて隠れ、気配を消した。ナルトは広いところで堂々と立ってたんだけど。
それにしてもカカシ先生はやっぱり早かった。サスケなんかメじゃないし、……ガイ先生も全然本気じゃなかったから、ああいうのは始めて見たかも。
ナルトが吊るされて終わったところでサスケが攻撃をしかけてきて、カカシ先生が移動したから頑張って探したんだけど見つからないのでサスケの方を探す。
「サークラ」
「わ!」
見つかんねえじゃんと木に背中を預けてたら、カカシ先生ががさっと木の上から顔を出した。
とりあえず捕まえようと思って手を伸ばしたけど、葉っぱがぶわっと押し寄せて来て意識が少し遠のく。まさかこれ幻術!?
「サクラ……」
サスケの声が俺を呼ぶ。少し先にある木の影から、クナイと手裏剣が沢山つきささって血を流してるサスケが出て来た。幻術だからこそリアルなので、顔が引きつる。グロ耐性はこれからつけていかないとなあ……。
本気のやつだったらやばいけど、カカシ先生が俺にかける程度の幻術なら、自発的に解けるので一瞬で現実に意識を戻す。まあ、かけられた時点で情けないような……んん、なんでもない。
カカシ先生は俺をあっさり放置していったので、もう一回探し直さなきゃならないんだった。探そ探そ。
ちょうど良くサスケが火を噴いたので場所が知れたけど、様子見たら地面に埋まってた。なんかシュール。
まいったな〜、幻術かけられただけで俺終わりなのかな〜。ま、怪我しなくてラッキーかなあ。
……って思ってた俺は甘過ぎでしたごめんなさい。
「うーん、ガイが言ってた通り、体術はよく出来てる。チャクラコントロールも勉強してるんだってね?エライエライ」
イチャパラは相変わらず持ったままだったけど、カカシ先生は俺にもちゃんと対応してくれた。
まあ、女の子じゃないって知ってるしな。
「そら、どーも!」
ぱしぱしっと手や足を弾かれながら、えへっと笑う。面白いくらい避けてくれるから打ち込むのが楽しい。
「あのね、遊んでんじゃないんだよ?」
「わかって、ます、けど、先生は遊んでるようなもんでしょ!」
「分かってるじゃないか」
に〜っこり笑ったカカシ先生。何されるのかな、忍術かな、千年殺しかな、あれは勘弁。
喋ってる間も打ち込みはやめないけど、結局鈴にも触れない。やっぱまだサスケには劣るかな。
「時間切れだ、おしまい。良い線行ってたんだけどね」
とんっと首を突かれたと思ったら、カカシ先生の声が近くにして、意識は遠くにあった。
俺はカカシ先生に気絶させられて、あろうことか抱っこされて集合場所に連れて来られた。十二時の鐘がなって目覚ましみたいな音を立てたのでそれに起こされ、カカシ先生の腕の中で目をさました時の俺の心情は一言で言うと「うわぁ……」である。
「運んであげたのに随分だね」
「すみませーん」
思わず声を上げてしまい、カカシ先生が片目でちろっとこっちをみた。
「三人とも、忍者をやめろ」
カカシ先生は俺の知ってる通りのセリフを真顔で吐いた。知ってたけど、実際言われるときついなあ。
固まるナルトと、睨むサスケをみて俺は顔を歪めるしかできない。うひい。飛び込んで行ったサスケはカカシ先生に踏まれている。
「三人で来れば、鈴もとれたかもな」
「仲間割れ仕組んだんですね」
一応俺がいうべきかなって思って反論する。
「そうだ。それなのにお前らと来たら……サクラ、お前はナルトのこともサスケのことも見ているだけで殆ど何もしようとしない」
ナルトは独走、サスケは個人プレイ———と指摘されて苦い顔をしていた。
……俺、サスケの生首見てたのに掘り起こさなかったの、あとで怒られるかなあ。
カカシ先生はもう一度チャンスをやるけど、ナルトには弁当を食わすなといって不機嫌な感じで去って行った。サスケも気配がないからナルトに弁当食えって声かけてるし、じゃあ俺もあげようと思って卵焼きをアーンしてやろうとする。その瞬間カカシ先生がすんごい迫力で走ってきた。超怖い。最終的ににっこりわらって合格貰ったけど、トラウマもんだよこれ。
「仲間を大切にしない奴は、それ以上のクズだ」
「先生かっこいいー」
「…………緊張感ない子だね……。ま、これにて演習終わり、全員合格!よぉーしぃ!第七班は明日より任務開始だぁ!!」
カカシ先生は俺の頭を乱暴に撫でてからぴっと親指を立て、「帰るぞ」と踵を返した。
ナルトは後ろで縛られたまま、つっこみを入れている。
「サ、サクラちゃぁぁあぁん!!!!」
「はいはい……」
これは置いて行くシーンだろって思ったけど、ナルトって縄脱けできなさそうだし、指名受けちゃったので二人から離れてナルトの所に戻るのだった。
サスケもカカシ先生もいつのまにか帰ってたので俺はナルトと二人で帰った。
思いのほか早かったので、お母さんが俺の帰宅に驚いていて、お昼ご飯は家で食べることを告げれば作りはじめてくれた。なので俺は軽くシャワーを浴びてからタオルを腰に巻いて部屋に戻ったんだけど、床にカカシ先生が寝そべっていたから俺はドアの所で固まった。
「おかえり〜」
「……子供の前で官能小説を読むだけでなく、ここまでするとは……」
「いや、違うから!違うからね!?」
「先生、十三歳未満の子供に手を出すのはどうあっても犯罪なんですよ」
「なにそれ!?」
こっちの法律は違うかもしんないけど……と思いながら先生を見下ろす。
まだパンツすら履いてないのでさすがに困るわ〜。
「で、何の用です?」
「あー、とりあえず服着てくれる?」
「目ぇ瞑っててください……パンツが入ってる引き出しは教えられません」
「誤解だから!」
恥じらって見せたら疲れた感じで先生が俺に背を向けて、ベッドに顔を埋めた。
パンツ履いてバスタオル肩にかけた状態で「匂い嗅がないでね」って言ったらカカシ先生は「嗅ぐか!」と言い返して振り向いた。
next.
皆さんご存知でしょうが(?)私はカカシ先生が好きです。
主人公は戦闘狂ではなくてただの脳筋かな??
Nov 2015