Sakura-zensen


春の旋風 03

旧校舎の事件以降もバイトに雇われた割には特に仕事がなかった。いや、日々雑用の仕事はしていたんだけど、調査の依頼が入ったのは夏休みに入ってから。バイトを始めて三ヶ月も経っていた。
依頼人の礼美ちゃんはお人形さん抱っこして、なんか幽霊っぽいのと喋ってるそぶりを見せてたのでちょっと怖かった。

夢の中の渋谷さんも言ってたけど、礼美ちゃんが狙われてるのはすぐに理解できた。俺が護衛についてたときは、幻なのか俺に見えないだけなのか、幽霊に追われて池から落ちそうになった。事態は深刻化する一方だ。
子供の逃げ足なんて俺にしてみりゃスキップでも追いかけられちゃうから池に落ちる前にひょいっと抱っこしたけど、敵に対してなす術がないもんだから護衛は代わってもらうことにした。
なんとなんと、この調査にはお坊さんと巫女さんまで来てるのだ。前回はちょっと険悪だったけど、顔見知りだからそんなでもない……のかな?いや〜大人げない様子も見えますがな。こ、この程度……ナルトとサスケの盛大な喧嘩に比べれば!

……やっぱ幽霊なんか嫌いだ。
足を掴まれて井戸の中に引きずり込まれるのは結構心にきました。暗器は習慣で持ってるけど、実体がないのに攻撃もできなくて、大人しく井戸の中におちることにした。防御した筈なのになぜか気絶してしまったらしい俺はよくわからない異空間に居て、幼女が攫われる映像を見せられた。な、なんだったん。
その子の母親が井戸に落ちるところまで見て、いつのまにか居た優しい渋谷さんと顔を合わせた所で我に帰った。
!!だいじょうぶなの?なんともない!?」
巫女さんが俺を見下ろして叫んでる。そうだそうだ、俺巫女さんの付き添いしてたんだった。
大丈夫だと声を掛けながらよじよじ登っていくと、椅子の準備をしていたリンさんと、覗きこんでた巫女さんがぽかーんとしていた。
「あ、あんた、よく登ってこられたわね」
「怪我は?」
「ないよ───ん?あったわ」
リンさんに聞かれて短く答えたけど、おっこちるときに板の間の割れ目が腰や脇腹を擦ったみたいでぴりっとした。
Tシャツを捲ると巫女さんがはっとする。若干傷が走っちゃってるんだろう。消毒だけしておけばそのうち塞がるな。
「てきとーに消毒液かけてくれる?」
「こっちきて。あんた、意外と締まってるのね……ナットク」
「ほ?」
俺の背中やお腹を見た所為だろう、巫女さんがこほんと咳払いをした。それなりに引き締まってるとは思うけど、サスケやナルト達と比べると俺のお腹なんてまだなだらかな方だろう。それに身体能力はチャクラの応用だし。
「巫女さん、もっと優しく拭いてよ」
「ねえ、あんたいい加減巫女さんって呼ぶのどうにかならないの?」
巫女さんは不機嫌そうにこっちを見ていた。
「じゃあ綾子ちゃん」
「子供みたいな呼び方しないでよ」
「綾子?」
「そこで綾子さんって呼ばないのは何故なのかしらぁ?」
「ん"ん"っ!?」
当てられたティッシュの上から傷口をぺちっと叩かれて俺は呻く。
「まぁ良いわ、あんたに綾子さんって言われても気持ち悪いし」
「なんだそれぇ」
ソファに寝転がって震え声を出す。意味分からないし……別にいいなら叩くなよこのやろう。
恐がり巫女め。除霊怖い、一緒に居て、って言うから居てあげたのに。



秋になるとカップルだけに水をかけて来る公園があってそれを調査して欲しい原さんが渋谷さんに調査を依頼をした。なんだか知らないけど渋谷さんて原さんには甘い。渋々だったけど、ほほーう?
その調査にはぼーさんも呼ぶ事になった。除霊に一番最適なのは確かにぼーさんだけど、囮が必要なんじゃないの?女の人のがよくない?民間人オトリにするのかな……。それはそれで可哀相だから、俺は女に変化して公園に行った。変化といっても髪の長さを胸までのロングヘアにしただけだ。中性的な顔でよかった〜。
ちなみに私服は男女どっちでも着られそうな服をチョイスしてきた。どうせ髪の毛長けりゃ女に見える。
?どうしたんだよそのカッコ」
「オトリが居るだろーと思って」
「ほー。こうして見るとお前さんも中々可愛い顔してんなあ」
「アリガト」
ぱちっとウインクをすると、ぼーさんは笑う。
そのまま俺はぼーさんに腕を絡めて「じゃ、二人っきりになろっか?」とすりよった。
「渋谷さんと原さんは影から見てて、なんかあったらしらせてねぇ」
ひらひら手を振って、ぽかーんとしてる原さんとむっすり黙ってる渋谷さんから遠ざかる。原さんたちもオトリやるのかな、でもなんか、濡らしちゃ駄目そうな二人じゃん?というか、俺が想像できない。
は優しいやっちゃなあ」
「そう?ココア奢ってくれるぼーさんも優しいと思うけど」
「んん〜可愛い……妹にしたい」
「男だがな」
「はあ……」
ぼーさんは隣でがっくり項垂れた。俺が可愛いのは知ってる!下忍から中忍時代は周りの男をぶいぶいいわせ……ていないけどぶーぶー文句を言われていた。その格好、なんとかしろって。いつ男だってバラしたんだったか覚えてないけど、髪の毛が短くなったあたりで女の振りをするのはやめてたかな。
あの頃は人知れず失恋した男達は居たらしいけど正確には知らない。
「昔女の子の格好してたことがあって、けっこーモテたんだぜ」
「……男子は優しくて明るい子が好きだかんな」
暗に俺が優しくて明るい子って言ってくれてるのかな?嬉しいね。
「んで?どんだけの男を泣かしたんだお前」
「ふひひ」
「まあ、今じゃ女泣かせでもあるかもなぁ?」
「ええ?自慢じゃないけど、女の子は泣かせた事ないよ!」
「あっはははは」
ばしばし叩かれて笑っていると、ぴちょんっと水が頭に垂れて来た。あれ?これだけ?それとも雨?って思ってたらざぱーんと水が振って来た。超痛かった。雨どころじゃなくて滝かよ。
原さんが幽霊に憑かれたっぽいので俺はぼーさんと渋谷さんに後を任せて木陰に入り、変化を解く。鞄に入れてたタオルを首に巻いて出て行くと、まだなんか喋っていたのでベンチに座り、説得によってあっさり浄化されて行くまで眺めていた。めでたいな。
「おつかれー」
「あ、!お前さんいつのまに」
「はいタオル」
「おっとサンキュ」
責められる前に恩を売ってみればぼーさんはあっさり落ちました。
後日綾子にだけ「アンタ女装したんだってぇ?」ってからかわれたんだけど、思いっきりぶりっこして撮らせてやった写真を見ると馬鹿に出来なかったらしく黙った。忍者なめんな。
「かいらしどすね」
「ジョンには負けるよ」



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ほほーう?で大変見当違いなことを考えている人。
サクラ→麻衣ちゃんだと率先して身体はります。
2016

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