Sakura-zensen


春の旋風 04

「カサイ・パニック?」
「そ」
湯浅高校の調査中、タカちゃんからの耳より情報をゲットして渋谷さんと話を聞いた。
学校にはびこる謎の心霊現象のひとつに、笠井さんという女子生徒が居るみたい。なんでも超能力があるとかいって、スプーンを曲げてみせて学校で有名になったらしい。有名になりすぎて揉めて、呪ってやる〜って言い出して噂にもなってたとか。なんちゅー学校だ……。
「……でも、それからなんだよね、変な事が起こるって話が出だしたの。ここだけの話、笠井さんの呪いじゃないかって」

タカちゃんは笠井さんが犯人とは言いたくないようだけど、事実でもあるから言い辛そうに苦笑した。大丈夫大丈夫、渋谷さんは決めつけたりしない人だから。
でも確認はしないといけないから、渋谷さんと一緒に笠井さんがいるという生物準備室に行ってみることになった。

「スプーン曲げくらい僕だってできます」
「できんの?」
なんか言い出した渋谷さんに俺はきょとんと首を傾げる。
スプーンを曲げるどころか首ちょんぱした渋谷さんと、それをくっつけた笠井さんに俺はなんとなくいたたまれなくなった。てれれれってれーって何か俺もやった方が良いんだろうか、一発芸を。
ていうか、ちぎれるのは分かったけど、どうやってくっつけたの?笠井さんのが凄くない?俺も出来るかな?
「やだ、ほんとに呪い殺せるわけないじゃん。ね」
話してる間にぶちってスプーンちぎってみてカチカチつけようとしてたら、三人がいっせいにこっちを見た。
「あんたも超能力持ってるの?」
「へ?超能力じゃないデス、スプーンくっつけられなかったごめん」
「スプーンちぎったじゃない……!」
「いや、これは、気合いで……。ねえ、どうやったらくっつく??そっちのが気になるんだけど……」
やってやって、って渡したけどくっつけてはくれなかった。
とにかく、スプーン曲げは今出来ないみたいだけど、くっつけられるだけでも凄くない?本物じゃない?
廊下に出るなり、渋谷さんにはさっきのは何だと聞かれてしまい俺は大抵のものならちぎれるよ!って怪力説をといた。本気出せばコンクリートぶち抜ける…とまでは教えないけど。
でもよく考えたら、超能力っていうか念力?PKっていうの?チャクラと似た感じだよね。あとで気功術ってのを聞いたけど、それに近いのかな。依頼が終わった後に気功の訓練をしたことはあるかって聞かれて、チャクラコントロールの訓練をした俺は頷いておいた。やっぱりな、みたいな顔をされてる。もしかした渋谷さんって俺の怪力に興味があったのかな?壁歩けるっていうのは言わない方が良いかな?とんだビックリ人間だもんな?


クリスマスになってジョンの知り合いの神父さんからの依頼を受けて教会に行った。わー天使とか彫刻すごいなー。って思ってたら天使の足元にしゃれこうべがあるんですけど?なんですかあれは。普通教会にしゃれこうべはないだろ。
目を凝らしてみてみたら人骨っぽい。大きさからして子供か?白骨化してるってことは結構経ってるし……あんなところに人が登れるんかねえ。
「ジョン、この教会で行方不明になった子いる?」
「───え?」
依頼に来る時に、子供が幽霊に憑かれてかくれんぼしちゃうってのは聞いてるんだけどそれで子供がマジで行方不明になったとは聞いてないしなあ。
いきなりの俺の質問に、ジョンは少し目を見張った。どうやら覚えがあるらしい。
「ケンジくんのことでしょうか」
ジョンが答えるよりも先に、俺たちを出迎えてくれた東條神父が恐る恐る尋ねて来た。
あらら、今日はその子のお話だったのか?
「……それ、いつごろですか?」
「もう三十年も前のことになります」
「───じゃあ、もう白骨化してますよね」
すっと指をさすと皆が視線を上げた。

東條神父はあわてて人を呼びにいき、ジョンがその場を任された。とりあえず中に入ろうかと取り繕う俺たちに、一人の子供が歩みよってくる。
肌色の黒い異国の子供で、どこか様子が変だ。俺の前に来たと思えば、ふわっと笑い「ありがとう」と言って倒れた。咄嗟に抱きとめたけど、すぐに我にかえった男の子はきょとんとしていて、俺に支えられている意味が分からないみたいだった。今のことは記憶にないのか。
「今の……ケンジくんかな?」
「おそらく、そうですやろうね」
俺は首を傾げて、子供の背中を見送った。隣に居たジョンはほっとしたような、困ったような顔で笑う。

遺体を下ろす作業をしている間に東條神父は改めて事情を話してくれた。どうやらケンジくんはかくれんぼが上手で、とあるかくれんぼの後から姿が見えなくなってしまったらしい。誰も彼を見つけられたことがなくて、隠れている途中に亡くなったのか、用水路に落ちたのか、攫われたのか、当時色々言われていたそうだ。
教会は丁度工事をしていて足場が組んであったらしく、ケンジくんはかくれんぼに有利な上へ上へと向かいあの場所を得た。なんとも可哀相な話だ……。
「それにしても、なんもやることなかったな」
「良いことじゃん」
「はいはい、お手柄お手柄〜しかし、よく気づいたな」
「よく見るようにしてんの」
ぼーさんが俺の頭をわしわし撫でた。
「なんでずっと見つかんなかったんだろうな」
「探そうと思う人は見つけ難いでしょ。基本視線より下を探すもんだし、あそこは上過ぎる」
「あ、そうか」
「ケンジくんもそれを知ってたのかなあ、見つかったことないんだったよね」
「そう、聞いてますです」
ジョンが小さく頷く。
「ならこの法則を知ってたに違いない。俺も隠れる時は上に行くもん」
まあ教わったことっていうか、有利だからなんだけど。
逆に探すときもなるべく高い所にいって視野を広げてる。
「おまえ、今でもかくれんぼすんの?」
「昔だよ」
ぼーさんの呆れたような顔に反論した。
かくれんぼっていっても、見つかったら死ぬかもしれない奴な。



next.

視力がとんでもなく良いわけじゃないけど、プロ目線で本物の骨かとかはわかるんじゃないかなってことで。
2016

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