EndlessSeventeen


CapriciousCat 03

校長先生にはアルバスが話を通してくれて、司書さんにも挨拶を済ませた。


俺の図書室勤務(?)が決まってから、俺の部屋は司書さんの隣で、図書館の書架とつながっていた。おお、便利な部屋だななんて思うが驚きはしない。魔法の ある世界のことと、俺の生活から考えてたいていのことでは驚かない。


その日の皆が授業に出てるであろう時間に、人気のほぼない図書室を案内してもらってゆっくり覚える。
おいおい覚えていくだろうからある程度の仕組みだけ教わる。

俺の職種は司書さんのアシスタントだから、あくまで手伝いなだけで、本の整理をするらしいのだ。
魔法だけじゃできないこともあるんだって。
たとえば生徒が禁書の棚に行ったり、生徒が勝手に本をもっていこうとしたり。いたずらしたり。
大変だなあ司書さん、と思ったけどその仕事を今度から俺が手伝うのだ。俺大変。

夕食の時間前に先生方に紹介してもらって、そのあと夕食を先生たちととる。席はすでに準備されていた。
司書さんの隣の隅っこのほうで、あまり目立つ場所じゃなくてほっとする。

たくさんの生徒が各々会話を楽しみ食事が開始するのをまつ。

多分俺の紹介をしてから食べるんだろう。さっき校長が言ってた。

『皆、紹介したいものがいる』

さっそく口火を切った校長に、あたりはしんとする。
だれ?今の時期に?なんて小さなささやきが聞こえてくる。まあそうだよね、俺誕生日からって設定だもん。

『生徒でも、教科を持つ先生でもないが……』
なーんだ、とつまらなそうに視線を下げたものが数人。校長はなおも続ける。

『皆がゆかりある場所にいることになる。図書館の司書アシスタントとして入ってもらうことになった』

俺は校長がこちらを向いた時に立つ。

皆の視線が痛い。

『俺は ……日本から来た……よろしくね』

立ち上がった隙に、教えてもらったスリザリンのテーブルに目を向けた。
トムを探したんだけど、どこにいるか見えないや。

そして俺はまたそっと自分の席に座った。

トム本当にいるんだよな。アルバスも四年生だって言ってたし。
それにしても食事がちょっと油っこい。あんまり食べられないから少し残すとしよう。




***




がいなくなってから、長い長い年月が経った。
一晩だって長いのに、もう何年も がいない。 が足りない。

入学する見送りで、頬にキスしてくれて、それ以降 に触れていない。あの匂いも感触も今どこをさがしたっていない。入学したてのときに1度手紙を送った。僕は元気にやっているけれど に会いたいです、とつづった。 からの返事は、僕が元気でよかったということと、会いたいと言ってくれて嬉しいということ。
二回目の手紙は誕生日おめでとう、というメッセージを入れた。プレゼントは指輪だ。
しかし返事は返ってこなかった。
僕は不安で不安でたまらなかった。やっと夏休みに入った時に、孤児院を訪ねてみると は自立したと聞いた。新しい住所も行き先も知らせぬまま去っていったのだという。
孤児院の中で一番親しかった僕にすらわからないのだから、他の皆がわからないのは当たり前なのに。

ダンブルドアにだって相談をもちかけたけど、見つからなかった。
ダンブルドアにも見つからないなんてさすがは だけど、そんなに雲隠れするのは何故、と思った。

それからは がいない寂しさを埋める為に愛想よく振舞った。勉強ものめりこんだ。
僕が有名になれば が戻ってくるかもしれなかったから。知識を集めて集めて を探し出そうと思ったから。

僕の入ったスリザリンには純血潔主義というのがあったけど、両親は幼いころに亡くなっていてわからない、と言うと先輩たちは不問にしてくれた。

そんな僕は四年生になった。人望もだんだん集まり、僕に逆らう人物はあまりいなくなっていたころ。
この日は、丁度 の誕生日だった。
孤児院の がいた部屋に置き去りにされた、あげられなかったプレゼントは今も僕が持っている。柘榴石がはめ込まれた指輪。 の細い指に通ってこそ輝く。
と初めて会ったのは、 の十七歳の誕生日だったなあ・・。
、ホグワーツに来ないかな。




『俺は ……日本から来た……よろしくね』

がいたら、きっとこんな風に挨拶しただろう。
……あれ?今、やけに の声がすんなり聞こえた。あたりが拍手をしていて、なんだろうと思ったら教員席の端っこに、どこか覚えのある東洋人が座っていた。
柔らかい黒の髪の毛は肩につくくらいに伸びているけど、最後に会った時から何も変わらない、少年のままの がいた。



ああっ今すぐ、抱きつきに行きたい……!

2011-01-11