EndlessSeventeen


夏色のくじら(主人公視点)

侘助くんと喋っているとまたすぐに電話が掛かってきた。今度はドロシーからの電話で、画面には青いワンピースをきた二つ結わきの女の子が立っていた。可愛らしい風貌と実際の男友達の姿が到底似つかわしくなくて毎度笑いそうになる。
「ごめん、上司だ」
「俺ぁもう寝るわ」
「おやすみ。……もしもし?」

くぅううううん!!!!』

三十すぎたのに多分鼻水たらしそうになってるんだろうなと想像したら可愛いと思った。




11.囚われのドロシー




一応留守にするってメール入れておいたんだけどなあ。
苦笑い気味に電話をでると、泣き声で俺の名前が叫ばれる。

「なに、もう軍が勝手な事やらかした?」
『!……分かってた?』
「さっき許可しないって啖呵切ったんだけどね……」

ため息まじりに答えると、ドロシーもようやくテンションが落ち着いて来たようで、これからのことを少し話し合う。アカウントがこれからたくさん奪われる可能性があること、ドロシーや俺のアカウントが奪われると厄介なこと、AIの制作者に心当たりがありそいつが近くにいることなどを話した。

『なんで制作者近くに居るって分かるんだよ
「まあそこはほら」
『ははっ、に出来ない事はないなあ……』

そらオズの魔法使いですものとくだけて笑った。
こっちから色々出来ると思うからとドロシーを説得して、本部へ強制送還は免れた。電話が終わるともう深夜二時くらいになってて、俺の頭ももうおねむだ。縁側を歩いて客間へ行くと健二くんが一心不乱になって問題を解き続けてる。これを止めてもどうにもならないことがわかってるし、彼には必要な試練かなと思ったので声をかけなかった。
しかしこういうスパムメールに返信しちゃうのはどうかと思う。エロサイトからの請求がきても、僕はそんなサイトに行ってませんって返信しちゃうのだろうかこの子は。

もう始まっちゃったし明日からでいいやと思って俺は眠る。





朝六時くらいに元気に目を覚ました俺は朝顔の手入れをしている栄とハヤテをみながら縁側でのほほんとしていた。
「綺麗ですねえ朝顔」
「だろう、私の自慢なんだ」

そのあと、外で歯磨きや顔を洗っているおじさんたちに挨拶をして同じように顔を洗う。理一さんはタオルを貸してくれた。
「おはようございまーす」
「やあおはようくん」

台所に顔をだすともうすぐ朝ご飯だからねと微笑まれた。
「手伝います?」
「怪我人はすわってなさい」

あんまりぶらぶらしてると心配っていうか叱られるので俺は大人しく納戸に落ち着いた。
「報道はやいなー」
「これ、あのお兄さんだよね」


早くも健二くんのことがニュースになっていた。OZのテレビでニュースを二人でみながら顎に手を当てる。答え間違ってるのに運悪くアカウント使われちゃって顔も目線一本だけとか可哀相すぎるな。社会復帰できるだろうか。誤報だと報道してもらわないとな。

健二くんが慌てて納戸に入って来てパソコンを借りようと色々やってるのを、俺はデータを確認しながら見送っていた。やっぱりオズの管理棟のパスワードが書き換えられてて簡単には入れないようだ。

へろへろしながら仮アバターで自分の元アバターに話しかける健二くんはすぐにボコボコにされていた。すぐにキング・カズマが助けに入ってくれたけど子供達の乱入により隙をつかれて反応が遅れる。

「逃げて、佳主馬くん!」

忠告したけれど、キング・カズマは倒されてしまった。KOの文字の上でキング・カズマは気を失ったように動かない。佳主馬くん一度の敗北にへこたれちゃ駄目だよ。
健二くんが助けるのを見てても良かったんだけど、子供がなかなか放してくれないので仕方なく俺のアカウントを登場させた。あんまり目に付きたくはないんだよな。

赤目黒猫の格好をしたアバターは俺の権限で魔法が使えるので目くらましと箒飛行で二匹を助ける。猿の顔が頑張って俺についてきて、魔法使い姿に興奮してるけど俺は無言を貫いた。
AI、ラブマシーンから逃げ果せたので安全のため雲隠れしようと思って姿を消した。

これ以上はあんまり手を出せないので健二くんから子供を引きはがして、お兄さんと遊ぼうかと外へ連れ出す事にする。

「遊ぶ?なにする?容疑者ごっこ?」
「じゃあお兄さん警察官になるから二人逃げて〜」
「えー!俺たち犯罪者かよお!」

怪我してるので本気でばたばた走れないのでちんたらやってたら子供達が周りをうろちょろし出す。ああそうだ健二くんが報道されている件をどうにかしてあげないと。ドロシーに連絡を取ろうと電話をかけると、つながらない。

「うわ、うそでしょ……」

ドロシーが乗っ取られた可能性がある。仕方なく本社に電話すると早口で莉子が電話にでた。俺だと分かるとすぐにドロシーが奪われたと教えてくれた。昨日のうちに安全作をと思いドロシーのもつ重大事項の権限を隔離して、魔法使いのアカウントと"トト"である莉子のアカウント二つを一緒に解放宣言しないと使えないようにはしてある。それでもドロシーの自由度は大きい。
俺が魔法を使えるのと一緒で、ドロシーは竜巻を起こせるのだ。これでアカウントを攻撃したら結構数を稼げてしまう。

「莉子はとりあえず絶対にアカウントを取られないように。もうログアウトしてた方が良いよ」
『で、でも、それじゃ復旧が』
「俺がやる。トトまで取られちゃ堪んない」

子供達はいつの間にかご飯を食べに行っちゃったので俺は電話を切ってふうと息を吐く。

「よう、どうした。朝からため息なんて」
「……ばぁか」
「あ"ァ!?なんだよ、
「はあ……こっちくると煙草吸いたくなっちゃう。ストレス社会……鬼だ」
「何言ってるかさっぱりわかんねえ。変わってねえな」

諸悪の根源というか、まあ一番悪態付きたいのは軍の方で侘助くんは二番目なんだけど。
身近にいたからしょうがない。

侘助くんが絡んでくるから健二くんはあっという間に翔太にいに連れて行かれてしまった。

2013-08-25