EndlessSeventeen


StarDustWalking! 02 -星屑ハミング-

今日も今日とてお散歩中。まだ池袋に来て間もないとはいえ家周辺には慣れてきたので、少し遠出をしてみることにした。ポケットに入っているウォークマンを シャッフル設定にして気ままに歩き回る。

自販機で買ったペットボトルの水が空になった。ゴミ箱を探してペットボトルを入れたのを機に家に帰ろうと辺りを見回す。
見たこともない土地で、住宅地の中心って感じ。
(ないない、そんなことない)
何も言ってないのに何かを否定して俺は大股でその辺を歩き回る。

(そんなこと……ない……たぶん)

だんだん否定に自信がなくなってきて、俺は早歩きを止めた。ゆっくり歩き周りを見ながら帰るようにする。
音楽聴きながら歩いてたからあんまり道程を覚えていなくて、ポケットに入っているウォークマンを少しだけ恨んだ。


(迷子んなった……)


ついに俺は自分が迷子になったのを認めることにした。
別に迷子になっても時間に囚われていないし少ないながらもいくらか手持ちはあるので問題はないのだが、今日帰れなくても明日帰れるという気もしないし、池 袋の夜は安全とは言えないし、野宿したくない。




だんだん歩くのも自信なくなってきて、きょろきょろとしながらおずおず歩く。
街灯がちかちかと電気を灯し始め、日は沈んだ。一番星がきらりと見えた。
(・・きれいだなあ)
家、帰れんのかなあと星の綺麗さに背中押されて哀愁が湧いてきた頃、どこかから子供の声が聞こえた。

「じゃあなー」
「おう」


「!」

小さくて聞きとりにくいけど確かに子供の声で、俺は声のする方を探る。
角から顔を出すと向こうから小学生が歩いてきた。


「きみ!!!」
「おわ!」

ばっと勢いよく出てきた俺に小学生は声をあげて後ずさる。

「あ、怪しいもんではござらん!」
「十分怪しいだろ!」
慌てて警戒を解こうとしてみるが、子供は俺に突っ込みをいれた。

「と、とりあえず、君をどうこうしようってんじゃないんで」
「はあなんだよ」

最近の小学生はなんだか生意気な気がする。俺を呆れた目で見上げるところとか静雄に似てる。

「きみこの辺の子?」
「いや、駅の方だけど」
「あ、ほんと?じゃあ一緒に帰ろう」
「なんだ、あんた迷子か」
「断じて違う」
はは、と笑われるのでとりあえず否定。


「なんかねー散歩してたらここら辺来ててねー」
とりあえず一緒に歩いてくれたので小学生に沢山話しかける。
「帰ろうって思ったんだけどーなんか住宅街入っちゃってさー」
笑いながら言うと小学生は呆れたように俺をチラ見した。

「その年で迷子かよ」
「いや、だから、違うよ」
「はいはい」
「君を駅近くまで送ってあげるのさ!」
「そうかよ」
くすくすと笑う小学生は、みてくれよりも年上のようにしっかりしている。

「しっかり者だね、きみ」
「そうか?」
「名前なんてーの?」
「門田京平」
「おお!ドタチンか!」
「なんだよそれ!」
名前を聞いて納得して声をあげると少し怒られる。
そういえばこのあだ名嫌ってるんだっけな。

「やだ?」
「ああ」
「じゃあ京平」
「まあ、それならいいけどよ」

夜道を小学生と歩いている姿は周りから見たら怪しい人にみえないだろうか。
俺たちは駅周辺に来たらしくだんだんと辺りに人が増え始めた。


「おお、この辺ならもう知ってる」
「そーか?じゃあな」
「いや、京平んちまで送るよ」
「迷子になったくせにか?」

少しからかいを混ぜた笑みを向けられ、苦笑いを返す。

「分からない手前で諦めるよ」
「じゃあ、まあいいけどよ」
「夜遅くなって心配しないの?家族は」
「基本放任主義だから大丈夫だ」

駅のロータリーを抜けて、線路をくぐって暫く歩くと京平は「ここらで良いぜ」と俺を見上げた。

「また今度遊んでね京平」
「オレが遊んでやんのかよ!」
「いいじゃんいいじゃん!またね!」


「あ、おい!名前、…………しらねえって、」



ふっふーんと鼻歌まじりで俺は雑踏の中に紛れ京平と別れた。

2010-07-13